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番外編2
フィラビ・ロエン1
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フィラビ・ロエン。その名を知る者はほとんどいなかった。だが、今や顔は分からなくとも、名前を知る者は多い。
一体何者だったのか。
サリー・オールソンとはどういう関係だったのか。
それを知るのはサリーとフィラビだけだったと言えるだろう。息子であるミーラですら知らない。
サリーが病に倒れ、医師から余命僅かだと言われた夜のことだった。
「ラビ、いるんでしょう?渡したい物があるの」
「…サリー、様っ」
天井から現れたのはサリーより少し若いように見える女性であった。目に涙を溜めて、サリーに駆け寄って、抱き着いた。
「泣かないで頂戴、可愛い顔が台無しよ」
「そんなものどうでもいいです。外に出ることなんてないのですから」
フィラビは童顔で可愛らしい、サリーはいつもそう言っていた。
「ラビには感謝してもしきれないわ」
「私の方が感謝しております」
「んもう、鞄の中にラビのくれた報告書と、お金が入っているわ。何か美味しい物、面白い本でも買って頂戴」
「お金はいただけません」
「私の代わりに食べて、読んで欲しいの。私にはもう出来ないから…」
「っっっ、そんな…」
フィラビは再びグスグスと泣き出してしまい、サリーが子どもの様に愛おしそうに、抱きしめながら背中を擦る。
「あと、私が初めて書いた最初で最後の紹介状が入っているわ。あなたに何かあった時に、使って頂戴ね」
「ですが…」
「私はね、あなたがいるって分かって、何度救われたか分からないわ。同時に縛り付けてしまったわね」
「そんなことはありません!私も幸せでした」
「ありがとう。血の繋がらない者で、こんなにも心落ち着くのはラビだけよ」
サリーを世話してくれた者はいるが、ペルガメント侯爵家でも王家でも、心を許せるほど信頼していた者はいなかった。
「勿体ない言葉にございます」
「いいえ、ラビに出会えて本当に良かったわ。その鞄は、いつか旅立つ日が来たら持って行こうと、私が初めて翻訳で稼いだお金で買ったものなの。私だと思って、一緒に旅立たせて欲しいの」
「………………はい」
サリーの命はもうどうにもならない。おそらく、本人が一番分かっている。
「何か、心残りはありませんか」
「そうね、言語が二十三ヶ国語という中途半端数字になったことかしら?母国語を合わせても二十四、中途半端よね」
「御立派だと思いますが」
「何だか中途半端でしょう?区切りのいい三十とか、せめて二十五とかね」
「そんなところが気になるのですね、ふふ」
あまり知られていることではないが、サリー様は意外とキリのいい数字が好きである。達成感があるそうだ。
「やっと笑った、ラビの笑顔が大好きよ。これからは自由にって言われても困るだろうけど、思うままに生きて欲しいの。絵を描いてもいい、家でゴロゴロしても、旅行をしても、働きたかったら紹介状がある。ラビの人生が私は楽しみなの」
「サリー様のいない世界なんて…」
「私は運がいいわ、ラビのいない世界をほとんど知らないものね。誰もいなくなっても、ラビがいると思ったら、生きて来れたの…クレア様に感謝しなくちゃ」
フィラビ・ロエンはクレア前王妃陛下がサリーに付けた、守るための監視である。フィラビによって、サリーの報告を受けていた。だが、それはミース前国王陛下、クレア前王妃陛下の死と同時になくなってしまった。
サリーとフィラビが初めて会ったのは、六歳と五歳の時。
クレアは亡くなる前に報告は受けれないが、これからもサリーを守ってあげて欲しい、何かあれば私の生家を頼るようにと、前払いで給金を支払っていたが、その後にフィラビを雇ったのはサリー自身であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
最後はフィラビ・ロエンです!
本編には出て来ていませんが、
ずっとサリーの側にいると思って書いていた人物です。
全5話の予定です。
このフィラビ回が終わり次第、完全に完結します。
どうぞよろしくお願いいたします。
一体何者だったのか。
サリー・オールソンとはどういう関係だったのか。
それを知るのはサリーとフィラビだけだったと言えるだろう。息子であるミーラですら知らない。
サリーが病に倒れ、医師から余命僅かだと言われた夜のことだった。
「ラビ、いるんでしょう?渡したい物があるの」
「…サリー、様っ」
天井から現れたのはサリーより少し若いように見える女性であった。目に涙を溜めて、サリーに駆け寄って、抱き着いた。
「泣かないで頂戴、可愛い顔が台無しよ」
「そんなものどうでもいいです。外に出ることなんてないのですから」
フィラビは童顔で可愛らしい、サリーはいつもそう言っていた。
「ラビには感謝してもしきれないわ」
「私の方が感謝しております」
「んもう、鞄の中にラビのくれた報告書と、お金が入っているわ。何か美味しい物、面白い本でも買って頂戴」
「お金はいただけません」
「私の代わりに食べて、読んで欲しいの。私にはもう出来ないから…」
「っっっ、そんな…」
フィラビは再びグスグスと泣き出してしまい、サリーが子どもの様に愛おしそうに、抱きしめながら背中を擦る。
「あと、私が初めて書いた最初で最後の紹介状が入っているわ。あなたに何かあった時に、使って頂戴ね」
「ですが…」
「私はね、あなたがいるって分かって、何度救われたか分からないわ。同時に縛り付けてしまったわね」
「そんなことはありません!私も幸せでした」
「ありがとう。血の繋がらない者で、こんなにも心落ち着くのはラビだけよ」
サリーを世話してくれた者はいるが、ペルガメント侯爵家でも王家でも、心を許せるほど信頼していた者はいなかった。
「勿体ない言葉にございます」
「いいえ、ラビに出会えて本当に良かったわ。その鞄は、いつか旅立つ日が来たら持って行こうと、私が初めて翻訳で稼いだお金で買ったものなの。私だと思って、一緒に旅立たせて欲しいの」
「………………はい」
サリーの命はもうどうにもならない。おそらく、本人が一番分かっている。
「何か、心残りはありませんか」
「そうね、言語が二十三ヶ国語という中途半端数字になったことかしら?母国語を合わせても二十四、中途半端よね」
「御立派だと思いますが」
「何だか中途半端でしょう?区切りのいい三十とか、せめて二十五とかね」
「そんなところが気になるのですね、ふふ」
あまり知られていることではないが、サリー様は意外とキリのいい数字が好きである。達成感があるそうだ。
「やっと笑った、ラビの笑顔が大好きよ。これからは自由にって言われても困るだろうけど、思うままに生きて欲しいの。絵を描いてもいい、家でゴロゴロしても、旅行をしても、働きたかったら紹介状がある。ラビの人生が私は楽しみなの」
「サリー様のいない世界なんて…」
「私は運がいいわ、ラビのいない世界をほとんど知らないものね。誰もいなくなっても、ラビがいると思ったら、生きて来れたの…クレア様に感謝しなくちゃ」
フィラビ・ロエンはクレア前王妃陛下がサリーに付けた、守るための監視である。フィラビによって、サリーの報告を受けていた。だが、それはミース前国王陛下、クレア前王妃陛下の死と同時になくなってしまった。
サリーとフィラビが初めて会ったのは、六歳と五歳の時。
クレアは亡くなる前に報告は受けれないが、これからもサリーを守ってあげて欲しい、何かあれば私の生家を頼るようにと、前払いで給金を支払っていたが、その後にフィラビを雇ったのはサリー自身であった。
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お読みいただきありがとうございます。
最後はフィラビ・ロエンです!
本編には出て来ていませんが、
ずっとサリーの側にいると思って書いていた人物です。
全5話の予定です。
このフィラビ回が終わり次第、完全に完結します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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