【完結】あなたの愛は今どこにありますか

野村にれ

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「カールス・ハイラードが再婚したように、私も再婚するのです」
「え?」
「お相手が再婚になるのでしょう?」

 言葉を間違えているのではないかと、バイラは優しくメリーナに問い掛けた。

「まだ分かりませんか?」
「どういう意味です?」
「初めて会ったのはお母様に連れられた茶会でしたね。あなたは半分チョコレートの付いたドーナツを気に入って、口の周りにチョコレートを付けて、おば様に拭われていましたね」
「…え」
「覚えていませんか?私はあの日初めて、マカロンを食べて感動しましたわ。だからあなたは、特別な時はケーキではなく、マカロンを買って来てくれました」

 バイラは何の話か分からず、カールスとメリーナを交互に見ていた。

「メメリーに、いや、お義母様、いや、お祖母様に、いや、お父上に聞いたのかい?」

 メリーナが話す思い出は、カールスとメメリーの思い出であった。

「私はラズベリーと、キャラメルのマカロンが好きでした。だからあなたは絶対にその二つを買って来てくださいましたね?」
「どう、いうことですか?」
「リークスの産着は、レモンイエローでしたね。あなたは黄色い天使だと言い、私は何だか嫌だわと言いましたわね」
「…え、あ」
「リークスはパッパッと口を開くことがあって、可愛らしいと二人で笑いましたね」

 まるで死後の世界で、メメリーと思い出を話しているかのような気分になり、もうカールスは言葉が出なくなり、ただメリーナを見つめていた。

「私はメリリー・ハイラードですわ」
「何を、言っている…質の悪い冗談は…やめなさい」

 メメリーの思い出を話すのはいいが、いくら姪でも言っていいことと悪いことがあると、カールスはカッとなった。

「メリーナに生まれ変わったのです。メメリーとして亡くなって、メリーナとして生まれたと言えばいいかしら?」
「な…何を言っているんだ」
「カールスの秘密でも言えばいい?心臓のところにほくろが3つあるとか?」
「…」

 メリーナが絶対に知るはずのない、カールスの身体的特徴であった。

「行為の最中に、肩を噛むとか?奥様も、何度も愛し合ったのだから、知っているでしょう?いかが?」

 メリーナはバイラの視線を逃がさず、じっと見つめながら話したが、バイラはいたたまれず目を伏せるしかなかった。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「キスするまえに、一度軽く唇を噛むとか?後妻さん、いかがかしら?それとも、あなたは愛されているから、もっと情熱的なのかしら?」

 バイラは信じられない気持ちもあったが、どうしても今、メリーナの顔を見ることが出来ず、下を向いたまま固まっていた。

「どうしたの?先程までの勢いはなくなってしまったの?」
「…」

 バイラは何を言えばいいのか分からず、バイラを気遣う余裕もないカールスは、バイラに目をやることもなく、メリーナを見つめたままだった。

「君は、メリリーなのか?」
「前はね、あなたは最後に『君以外を妻にする気はない!』『もし、君がいなくなっても、絶対に再婚なんてしない…』と言っていたのに、こんなに早く新しい妻を娶って、子どもまで作っているなんて思わなかったわ」

 カールスも覚えのある言葉に、本当にメメリーなのかと、信じ始めていた。

「貴族としては分かるわ。でもね、理屈ではないの」
「本当に…メメリーなのか?」
「ええ、私もどうしてこんなことになったのか、何がしたいのかと悩み続けたわ」

 メリーナは17歳とは思えない表情で、左手で額を覆った。
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