【完結】あなたの愛は今どこにありますか

野村にれ

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いとこ

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 なぜ、父ではなく母なのだろうかと思ったが、リークスはメメリーではなく、バイラを思い浮かべてしまっていた。

「ん?いや、産みの母のことかな?君の叔母にもなるものね」

 メリーナとリークスはいとこ同士となるが、リークスはメリーナの兄であるフォリックとシュリーズとは親しくしていた。

 だが、メリーナとは異性ということと、エンバーがメリーナを気に入っていることに気付いてからは、あまり近付くことはしなかった。

「ええ、でも私が生まれた時には亡くなっておりましたから」
「私も幼かったから、産みの母の記憶にはないんだ。勿論、産んで貰ったことには感謝しているけど、母親と言われると継母のことを思い浮かべてしまうんだ」
「写真もありませんものね」
「一枚はあるんだけど、父上が母上を気を使ったのだと思う」

 ハイラード伯爵家には、叔母であるメメリーの写真は一枚しか飾られていない。それも、家族写真などではなく、一人で座っている写真である。

「…産んだ母よりも、育ての母ですか」
「いや、不快に思ったのなら、すまない」

 リークスはいくら会ったことがなくとも、叔母のこと言われて、嫌な気分にさせたのではないかと、慌てて謝った。

「いえ、リークス様はお義母様を大事に思っているのですね」
「ああ、勿論だよ。本当の母親だとずっと思っていたからね、エンバーと分け隔てなく育ててくれて、感謝してもしきれないよ」

 リークスには産みの母は別にいると言われたのは、5歳くらいだったと思う。始めは理解が出来なかったが、両親は根気強く、メメリーが母親だと伝え続けた。

 写真で見るメメリーは優しい顔立ちで、姪と叔母ということもあり、どこかメリーナに似ていた。だが、リークスにはそれだけだった。

 リークスにとって母親はずっとバイラであり、エンバーと差別するようなことも一度もなかった。

 それでも、メメリーの命日には必ず墓参りに行き、両親は墓に向かって、何かを伝えているようであった。

 メメリーには感謝しているが、カールスがメメリーのことを時折話してくれるくらいで、思い入れを持つことは出来なかった。

「…それなら、私が家のためにという気持ちは分かるのではありませんか」
「でも、ご家族もメリーナ嬢の気持ちを尊重してくれるのではないか?」
「そうだとは思います」
「だったら、少しだけでも、エンバーの事を考えては貰えないか?」
「いいえ、私がエンバー様と結婚することはありません。申し訳ございません」

 そこまで言われてしまえば、リークスも何も言えなくなり、二人は別れた。

 リークスは自分がいい方向へ話が出来る自信はなかったが、兄としては駄目でもエンバーの諦められる何かがあればとも考えていた。

 両親にもメリーナと話をして来るとは伝えており、話をすることにした。

「どうだった?」

 リークスはメリーナと、エンバーの話したことも、そのまま伝えた。

「リークスを羨ましいと思うなんて!」

 バイラは継ぐ爵位があることを妬むなんてことは、あってはならないことだと大きな声を出した。

「いえ、実際エンバーに嫁いで貰う爵位があれば違ったかもしれないとは、私も思ったのです」
「でも」
「エンバーもそんなことを思いたくはないと言っているのですから、叱ったりしないでください」
「そうだな、エンバーだって努力していたのだから」
「それはそうだけど」

 バイラにとっては侯爵家の夫人が産んだ子どもと、子爵家である自分が産んだ子どもが同じではないという感覚であった。
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