【完結】あなたの愛は今どこにありますか

野村にれ

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底辺

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「そんなことはない!」
「辛かった私の気持ちなど、あなたたちには分からないでしょうね」
「申し訳ございません…私の、私のせいなんです」

 バイラはもしも、メメリー様が今の姿を見たら、どう思うかと考えたことがあった。合格点を貰えるだろうかと想像していたが、現実は違った。

「私だって、メメリーを想いながら生きたかった。だが、一人ではどうにもならずに、バイラに手伝って貰ったんだ。メメリーのことを忘れたわけではない」
「子どもを作って?」
「それは私が望んだのです、それを叶えて貰っただけで」
「いや、私も望んだ」

 カールスはエンバーの存在を、否定することはしたくなかった。

「そうでしょう?だからメメリーが亡くなって良かったじゃないと言っているじゃない。メメリーがいたら、作れなかったでしょう?それとも、亡くならなくても、作る予定だったのかしら?」
「そうじゃない、メメリーが生きていれば、バイラには悪いが…あり得なかった」
「いえ、その通りです」

 二人は悲しみ、苦しみ、憎しみ、どうにもならずに濁り切った目をしているメリーナに、事実を話したつもりだった。

「誰も悪くない、いえ、亡くなってしまったメメリーが悪いのでしょうね。あなたたちを信じるなら、メメリーが具合を悪くしなけば、良かったのよね」
「そういう意味ではない」
「死人をずっと愛することが、美徳とされるわけではないわ。生き続ける人たちには未来がある。選ぶ権利だってある。そうよね?」
「え、ああ、そうとも言えるかな」

 一体何を言い出すのか分からず、カールスは曖昧に同意した。

「だから、カールスは選んだのよね?」
「あっ、ああ…」
「いつから不貞を犯していたの?」
「そんなことはしてない」
「本当のことを言ってくれない?その方が私も納得が出来るわ」

 傷付く底辺にいるメリーナは、記憶のある理由から、認めてくれる方が前を向けるとまで思っていた。

「本当に違う」
「違います…彼はあなたをずっと思って、消えてしまいそうだったくらいなんです」
「では、あなたはそこに付け込んで結婚したというの?」
「そうです」
「愛し合っているわけではないと?」
「そうです」

 お互いを尊敬はしているが、愛し合っているというのは、カールスとバイラには似合わない言葉だと感じていた。

「でも、子どもを作ったのでしょう?嫡男がいるのに、わざわざ作ったのでしょう?それとも、実はカールスの子ではないの?」
「私の子だ!」
「死んでしまったメメリーよりも、バイラを愛してしまったのよね?そうだと、答えて頂戴」
「それは」
「答える必要はありません!全て私のせいです」

 時折、寂しそうな表情で結婚した時に、植えたという木をカールスが眺めていることを知っている。その時も、メメリー様のことを考えてのではないかという時は、バイラは絶対に邪魔しないようにしている。

 メリーナ嬢がメメリー様なら、私のためを思って、カールス様が愛していると言ってくれたとしても、その言葉を聞かせるわけにはいかない。

「カールスは良いわね、皆に大事に思って貰えて…羨ましいわ。エンバー様も愛されているものね、ご家族が必死で縁談を纏めようとしてくれるのだもの。爵位はそんなに魅力的なのかしら?」
「爵位ではない」
「そうです、爵位のためではありません」

 バイラも始めこそ爵位も魅力的に思っていたが、今となってはエンバーはメリーナと一緒なら平民でもいいだろう。騎士爵を頑張って取ることも出来たと考え、侯爵家でなければと思う方が強くなっていた。
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