【完結】あなたの愛は今どこにありますか

野村にれ

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我慢

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「馬鹿だから、丁度いいと思われたのかしら?」
「違う!エンバーは、あの、君を想って」
「でも、中身はリークスの母親よ?」
「それは…」
「もういい縁談などとは言えなくなったでしょう?それとも、愛する息子のためなら亡き妻を差し出すのかしら?」
「いっ、や」

 メリーナがメメリーであるならば、まるで別人のようであるが、カールスにとっても複雑な思いであった。

「エンバーは私にとって、極めて不愉快な存在だった。でもリークスのために我慢していたの」
「リークスのことは…」
「リークスのことは無条件に愛しているわ、でも一歳になる前に死んだ母親と、育ててくれた母親、敵わないわよね。産んだだけでは母親なんかではないと、身を持って理解したわ。私はあの子にとって、産んだだけの女に過ぎないもの」
「そんなことはない!」
「私は立場上は姪だというのに、メリリーのことを一切、言わないじゃない?写真だって、まるで切り離されたようなひとりでポツンと座っている、1枚しかない」

 ハイラード伯爵邸に来たこともあるメリーナが、知らないはずがない。

 家族写真の中に一人で映っているのは、メメリーだけである。それをメメリーの視点から見れば、どう思うかなど考えたこともなかった。

「私があの写真を気に入っているんだ」
「言い訳はいいわ、あなたの言葉はもう信じることは出来ないの。再婚したいなら、そう言えば良かったじゃない…どうして嘘をついたの…」
「…違う」
「2人で撮った写真も、3人で撮った写真だってあった。もういない人間だからでしょう?」
「それは私に気を使ってだと思います」
「そういった環境を作ったのはあなたたちでしょう?」
「それはそうです…申し訳ございません」

 バイラが飾ったらいいと言えば違ったことに、どこかでバイラも良いとしていたのだと、ようやく気付いた。

「リークスを混乱させると思って」
「今でも同じ写真がずっと、義務的に飾ってあるとしか思えないわ。もう捨てて頂戴、そのくらい叶えてくれるでしょう?」
「そんなことは出来ない」
「じゃあ、私に返して」
「駄目だ…」

 あの写真は、本当にカールスの気に入っている、恥ずかしそうに座っているメメリーの姿だった。

「阿呆らしいわね。リークスも本当の母親は後妻だって言ってたもの」

 バイラは何も知らなければ、申し訳ないとは思いつつ、嬉しく思ったはずだった。

 だが、そんな言葉をエンバーが告げたと考えれば、答えはすぐに出すことが出来る。メリーナはその言葉をどんな思いで聞いたのだろう。

 胸が張り裂けそうだった。

「死んだ女なんて不要なのよ。産まなければ良かったなんて思いたくないから、考えないことにしたわ」
「っ」
「リークスのことはいいの。生きてくれるだけでいい。それ以上は求めないことにしたの。だから不用意に近付いたりしていないでしょう?本当は仲良くお喋りだって、お友達の話や、学園でのお話、婚約者とのお話もしたかったわ。一番はお母様よと、抱きしめたかったのよ?」
「っ」
「でも、そんなことは絶対にしないわ」

 リークスを悲しませることだけは、メリーナの本位ではなかった。

 爵位のことを言い出した時に、リークスがスペンサ侯爵家の爵位を継ぐなどと言い出したらどうしようかとすら考えていたが、それはなかった。

「でも、エンバーは何も悪くない」
「ええ、そうね。私もエンバーがあなたたちの子ではなかったら、違ったわ」

 最初から濁った目で見るしかない存在こそが、エンバーであった。
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