【完結】あなたの愛は今どこにありますか

野村にれ

文字の大きさ
34 / 34

いない世界

しおりを挟む
「私はメリーナには、どこか嫌われていると思っていました」
「そのようなことは、絶対にありません!」
「父上も同じことを言っていました。確信があったからだったのですね…」

 同じような表情で、強く否定する二人は、私にとっては何となくの思いでも、絶対に譲れない気持ちだったのだろう。

「ミューリアと結婚して、お墓参りに行きましたでしょう?」
「はい」
「孫を見せられて良かったと思っていたのです。きっと、カールス様も同じように思っていたと思います」

 口にすることは互いになかったが、同じように思っているのだと感じていた。

「ああ…そうか、母の墓参りでもあったのか…」
「はい…」
「生きている内に生まれていたら、もっと喜んだことでしょうね」
「はい…遠くからお喜びになったと思います」
「そうか…そうだったのか」

 そう言われて、繋がったのだとリークスも実感した。

「ミューリアもメリーナが、紹介してくれたようなものですからね」
「運命だったのだと思うわ」
「そうかもしれないね…」

 ファイナともちゃんと結婚したつもりだったが、終わりが良くなかったために、いい思い出にはならなかった。

「カールス様は、きっとご自身の手で、この手紙を捨てることは、どうしても出来なかったのだと思います」

 ところどころ、文字に滲みがあり、おそらくカールスの涙だと、リークスもバイラも気付いていた。

「今、知って良かったのかもしれませんね…私は複雑だったと思います」
「そうですか…」
「エンバーには言いません。手紙は処分しましょう」

 ミューリアもメリーナを知っていることから、残すようなことになっても、困惑することは間違いない。

「待ってください。私が持っていてはいけませんか?」
「母上が?」
「私が先に逝くでしょうから、その時まで、お願いします」
「分かりました」

 バイラはカールスの命日にだけ手紙を開き、どうか今度はカールスとメメリーが末永く幸せでいれますようにと願いながら、二人をを偲んだ。

 そして、バイラが亡くなると、リークスはもう一度だけ読んで、メメリーとメリーナの手紙は燃やした。バイラを尊重はしたが、これがメメリーの望んだ結末だと思ったからである。

 エンバーには頻繁に会うこともなかったために、怪しまれるようなことはなかった。

 むしろ、ミューリアからメリーナの話を聞くこともあったので、聞き過ぎてしまうことがあったくらいだった。デートライ公爵家には一切知らないことも、分かった。

 だが、母の家具がデートライ公爵邸にあることは、不思議な気持ちであった。

 エンバーは辺境で騎士を終え、ハーライド伯爵邸に戻って来た時、ふいに聞いてしまったことがあった。

「メリーナのことを思い出すか?」
「ああ、思い出さない日はないよ。向こうはずっと若々しいままだ」

 エンバーの中には生きていた頃も、亡くなってからも、メリーナが生き続けていた。

「そうか…」
「それだけは一生変わらないよ。あんなに早く逝くなんてな…側にいたかったよ」
「笑って欲しかっただったか?」
「ああ、笑うと可愛いんだよ」
「そうか…」

 そう言われて、リークスはメリーナの笑顔を思い浮かべられなかった。

「兄上も色々あったけど、いい人生だったか?」
「ああ、そうだな」
「それなら良かった」
「エンバーは?」
「長生きさせて貰って、不幸だとは言ってはいけないよな」
「そうだな」

 それは生きられなかったメリーナに向けた言葉なのだろうと、リークスは重たいものを感じながら、エンバーに微笑むことしか出来なかった。

 誰も悪くなかったが、皆、どこか悲しさを持つ人生であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最期までお読みいただきありがとうございます。

どうしても昇華させておきたかったので、
自己満足で偏った作品になったと思います。

お付き合いいただき、本当にありがとうございました。

また新しい作品も考えておりますので、
よろしくお願いいたします。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

処理中です...