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いない世界
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「私はメリーナには、どこか嫌われていると思っていました」
「そのようなことは、絶対にありません!」
「父上も同じことを言っていました。確信があったからだったのですね…」
同じような表情で、強く否定する二人は、私にとっては何となくの思いでも、絶対に譲れない気持ちだったのだろう。
「ミューリアと結婚して、お墓参りに行きましたでしょう?」
「はい」
「孫を見せられて良かったと思っていたのです。きっと、カールス様も同じように思っていたと思います」
口にすることは互いになかったが、同じように思っているのだと感じていた。
「ああ…そうか、母の墓参りでもあったのか…」
「はい…」
「生きている内に生まれていたら、もっと喜んだことでしょうね」
「はい…遠くからお喜びになったと思います」
「そうか…そうだったのか」
そう言われて、繋がったのだとリークスも実感した。
「ミューリアもメリーナが、紹介してくれたようなものですからね」
「運命だったのだと思うわ」
「そうかもしれないね…」
ファイナともちゃんと結婚したつもりだったが、終わりが良くなかったために、いい思い出にはならなかった。
「カールス様は、きっとご自身の手で、この手紙を捨てることは、どうしても出来なかったのだと思います」
ところどころ、文字に滲みがあり、おそらくカールスの涙だと、リークスもバイラも気付いていた。
「今、知って良かったのかもしれませんね…私は複雑だったと思います」
「そうですか…」
「エンバーには言いません。手紙は処分しましょう」
ミューリアもメリーナを知っていることから、残すようなことになっても、困惑することは間違いない。
「待ってください。私が持っていてはいけませんか?」
「母上が?」
「私が先に逝くでしょうから、その時まで、お願いします」
「分かりました」
バイラはカールスの命日にだけ手紙を開き、どうか今度はカールスとメメリーが末永く幸せでいれますようにと願いながら、二人をを偲んだ。
そして、バイラが亡くなると、リークスはもう一度だけ読んで、メメリーとメリーナの手紙は燃やした。バイラを尊重はしたが、これがメメリーの望んだ結末だと思ったからである。
エンバーには頻繁に会うこともなかったために、怪しまれるようなことはなかった。
むしろ、ミューリアからメリーナの話を聞くこともあったので、聞き過ぎてしまうことがあったくらいだった。デートライ公爵家には一切知らないことも、分かった。
だが、母の家具がデートライ公爵邸にあることは、不思議な気持ちであった。
エンバーは辺境で騎士を終え、ハーライド伯爵邸に戻って来た時、ふいに聞いてしまったことがあった。
「メリーナのことを思い出すか?」
「ああ、思い出さない日はないよ。向こうはずっと若々しいままだ」
エンバーの中には生きていた頃も、亡くなってからも、メリーナが生き続けていた。
「そうか…」
「それだけは一生変わらないよ。あんなに早く逝くなんてな…側にいたかったよ」
「笑って欲しかっただったか?」
「ああ、笑うと可愛いんだよ」
「そうか…」
そう言われて、リークスはメリーナの笑顔を思い浮かべられなかった。
「兄上も色々あったけど、いい人生だったか?」
「ああ、そうだな」
「それなら良かった」
「エンバーは?」
「長生きさせて貰って、不幸だとは言ってはいけないよな」
「そうだな」
それは生きられなかったメリーナに向けた言葉なのだろうと、リークスは重たいものを感じながら、エンバーに微笑むことしか出来なかった。
誰も悪くなかったが、皆、どこか悲しさを持つ人生であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最期までお読みいただきありがとうございます。
どうしても昇華させておきたかったので、
自己満足で偏った作品になったと思います。
お付き合いいただき、本当にありがとうございました。
また新しい作品も考えておりますので、
よろしくお願いいたします。
「そのようなことは、絶対にありません!」
「父上も同じことを言っていました。確信があったからだったのですね…」
同じような表情で、強く否定する二人は、私にとっては何となくの思いでも、絶対に譲れない気持ちだったのだろう。
「ミューリアと結婚して、お墓参りに行きましたでしょう?」
「はい」
「孫を見せられて良かったと思っていたのです。きっと、カールス様も同じように思っていたと思います」
口にすることは互いになかったが、同じように思っているのだと感じていた。
「ああ…そうか、母の墓参りでもあったのか…」
「はい…」
「生きている内に生まれていたら、もっと喜んだことでしょうね」
「はい…遠くからお喜びになったと思います」
「そうか…そうだったのか」
そう言われて、繋がったのだとリークスも実感した。
「ミューリアもメリーナが、紹介してくれたようなものですからね」
「運命だったのだと思うわ」
「そうかもしれないね…」
ファイナともちゃんと結婚したつもりだったが、終わりが良くなかったために、いい思い出にはならなかった。
「カールス様は、きっとご自身の手で、この手紙を捨てることは、どうしても出来なかったのだと思います」
ところどころ、文字に滲みがあり、おそらくカールスの涙だと、リークスもバイラも気付いていた。
「今、知って良かったのかもしれませんね…私は複雑だったと思います」
「そうですか…」
「エンバーには言いません。手紙は処分しましょう」
ミューリアもメリーナを知っていることから、残すようなことになっても、困惑することは間違いない。
「待ってください。私が持っていてはいけませんか?」
「母上が?」
「私が先に逝くでしょうから、その時まで、お願いします」
「分かりました」
バイラはカールスの命日にだけ手紙を開き、どうか今度はカールスとメメリーが末永く幸せでいれますようにと願いながら、二人をを偲んだ。
そして、バイラが亡くなると、リークスはもう一度だけ読んで、メメリーとメリーナの手紙は燃やした。バイラを尊重はしたが、これがメメリーの望んだ結末だと思ったからである。
エンバーには頻繁に会うこともなかったために、怪しまれるようなことはなかった。
むしろ、ミューリアからメリーナの話を聞くこともあったので、聞き過ぎてしまうことがあったくらいだった。デートライ公爵家には一切知らないことも、分かった。
だが、母の家具がデートライ公爵邸にあることは、不思議な気持ちであった。
エンバーは辺境で騎士を終え、ハーライド伯爵邸に戻って来た時、ふいに聞いてしまったことがあった。
「メリーナのことを思い出すか?」
「ああ、思い出さない日はないよ。向こうはずっと若々しいままだ」
エンバーの中には生きていた頃も、亡くなってからも、メリーナが生き続けていた。
「そうか…」
「それだけは一生変わらないよ。あんなに早く逝くなんてな…側にいたかったよ」
「笑って欲しかっただったか?」
「ああ、笑うと可愛いんだよ」
「そうか…」
そう言われて、リークスはメリーナの笑顔を思い浮かべられなかった。
「兄上も色々あったけど、いい人生だったか?」
「ああ、そうだな」
「それなら良かった」
「エンバーは?」
「長生きさせて貰って、不幸だとは言ってはいけないよな」
「そうだな」
それは生きられなかったメリーナに向けた言葉なのだろうと、リークスは重たいものを感じながら、エンバーに微笑むことしか出来なかった。
誰も悪くなかったが、皆、どこか悲しさを持つ人生であった。
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最期までお読みいただきありがとうございます。
どうしても昇華させておきたかったので、
自己満足で偏った作品になったと思います。
お付き合いいただき、本当にありがとうございました。
また新しい作品も考えておりますので、
よろしくお願いいたします。
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