【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
243 / 344

【テイラー】オイワード公爵家6

しおりを挟む
「妃になって欲しいと思ってのことで」
「都合の良いことを言うのはもう止めろ!」

 キューラは涙が止まらず、ヒックヒックと声にならなかった。

「お前のやったことはすべて間違っていたことを受け入れろ。でなければ、本当にこの国では生きていけない。反省している以外の姿を見せるな!」

 イオリクは新聞を見た後でも、竜帝国の現状を知らないために、ここまで言われても受け入れられなかった。

「妃にはなっていないのだから、番だと言わなければ良かったのに」
「お前!」

 ふざけた言葉にハイスは、怒りしか沸いてこなかった。

「そうではありませんか!別に発表することはなかったでしょう!」
「皇帝陛下がお決めになられたのだろう、まだ意に反するのか!」
「ですが、妃にもなっていないのですから、平民を怪我させたとだけでいいではありませんか。発表だってする必要はなかったのではありませんか」
「皇帝陛下の番が、奇跡的に見付かったということは知っている者もいたんだ」

 イオリクはあのテイラーと出会った夜会には、皇帝陛下の同行者ではない竜帝国の者もいたことを思い出した。

 ディオエルが『番だ』と言ったのを聞いており、番が見付かったことを知っている者もいただろう。その者たちが慶事として話したかもしれない。

「間違いだったと言えば」
「なぜテイラー嬢を殺したお前に、そこまで配慮しなくてはいけない?お前はこれだけのことをしても、自分のことしか考えられないのか?」
「ですが、私は側近なのですよ?子どもを産むだけの番とは違います」
「イオリクッ!あなたは本当に性根が腐っているのね……育てた方を間違ったのは分かっていたけど、もう息子だとも思いたくないわ」

 ようやく、言葉が出るようになったキューラは、もう限界だった。

 親としての責任を一生を掛けて償うつもりであった。だが、息子だと思うことも信じられない気持ちであった。

「私もだ、ここまで言って分からないのなら、今日はもう話したくもない!部屋に戻れ!埃っぽいかもしれないが、気になるなら自分で掃除しなさい」

 ハイスも親として話をしなければと思っていたが、何も響いていない様子のイオリクを相手に気力がなかった。

 イオリクは両親を気にしながらも、渋々出て行った。そこでようやく、邸に人の気配がほとんどなくなっていることに気付いた。

 部屋もいつもよりもきれいではなく、言われた様に埃っぽかった。

 使用人が辞めたのも事実なのだろうと思ったが、今日まで貴族牢で過ごしていたために、イオリクはそこまで気にならない身体になっていた。

 翌朝、朝食もパンと卵を焼いた物だけで、今まであったようなサラダやスープ、肉類もない。

 だが、ハイスとキューラが黙って食べているために、昨日の今日でイオリクも何も言えなかった。ただ、貴族牢で暮らしていたイオリクは、貴族牢の方が良かったと感じたからであった。

 イオリクはディオエルへ面会の申請と、慈善活動をするために説明を受けに行き、明後日から募集のあった清掃することになった。

 嫌ではあったが、慈善活動を行わなければ、終わらないということは分かっていた。ディオエルへ誠意を見せるにはいい機会だろうと思い、割り切ってやればいいと思うことにした。

 手続きは事務的に行われたために気にならなかったが、皆、イオリクを見てから目を逸らすという視線を感じていた。

 確かに発表されたことから、注目を集めても仕方ないと思い、気にした方が負けだと強く思った。

 翌日にイオリクはエッセを、オイワード公爵邸に呼んだ。

 子どもたちにも会いたかったが、少なからず注目を集めたことから、まずはエッセに状況を聞きたかった。

「イオ!」
「エッセ、会いたかった」

 久し振りに会った二人は抱き合い、再会を喜んだ。

「こんなことになって、すまない」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?

ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。 ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...