【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】国葬2

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「まだ実感がないなんてな、その扉から入って来そうだ」
「はい、私も訊ねたらいるのではないかと、まだ思っております」
「不器用だったが、いい人生とは呼べないだろうが、皇帝としては立派な人生だった。短すぎるがな」
「はい……」

 ディオエルは42歳の時に皇帝になり、在位は41年であった。

 歴代にもっと短かった方もいるが、番に支えられ、子どもに支えられ、100年を超える方も多かった。

「そういえば、手紙は見付からなかったのだな」
「はい……」

 ライシードはディオエルへ宛てたテイラーの手紙を棺に入れようと考えていたが、どこを探してもなかった。

「ディオエルには聞かなかったのか?」
「はい、ディオエル様だけの物ですから」

 何と書いてあったかも聞くことはしなかった。

「読まれたくないから、処分して亡くなったのかもしれぬな」
「はい、私もそう思いましたが、テイラー様を感じられるものが手紙しかなかったものですから」
「ディオエルが望まなかったのだから、これで良かったんだよ」
「そうですね」

 デリア侯爵に写真でも、何か持ち物でも希望しようかと思ったが、ディオエルが望んだわけではないために頼むことはしなかった。だからこそ唯一の手紙だけはと思ったが、それもなかった。

 だが、ディオエルが望まなかったのだから、アンデュースの言うようにこれで良かったと思うことにした。

「私も折角、ディオエルが行ったことを無駄にせず、しっかりしないといけないな」
「微力ながら、お支えします」
「ああ、頼りにしている」

 そう言いながら、二人は執務室のいつもディオエルが、姿勢正しく座っていた椅子を見つめ、涙が零れそうだった。

 それでも、次の日はやって来る。ディオエルのいない日々はやって来る。

 アンデュースはディオエルの喪失感を、まだ強く感じていた。

 だが、ディオエルは番を亡くして、生きて来たのだと想像すると、これ以上の思いだったのだろうと感じてもいた。

 自分も番と別れる日が、いつか来るかもしれないと思うだけで、胸が引き裂かれるほど苦しくなるが、ディオエルは儀式は受けていたが、二度も経験することになり、どれだけ苦しかっただろう。

 それでも、泣き言など誰にも言えなかっただろう。

 アンデュースの妻・モニールは42歳年下で、現在46歳。

 生家である侯爵家も少なからず皇帝の竜族系の血筋があるために、長生きではあるが、それでも自分よりも先に亡くなる可能性が高い。

 だが、アンデュースは感傷に浸ってばかりはいられない。目の前にやることや覚えることは多い。愛する妻のためにも、しっかりやらなくてはならない。

 一方、ライシードは即位式までに妃たちは、皇帝宮を出されることになり、手配や手続きを行っていた。

 ハウニー妃、エオナ妃、モルカ妃は生家に帰ることを決め、その後にゆっくり身の振り方を考えることになった。

 ライシードはもう二度と増えることはない、ディオエルに関する仕事であるために、責任を持って行いたかったが、クーナ妃だけはまだ残ることを諦めていないようで、まだ行き先を決めていなかった。

「クーナ妃、決まりましたか?」
「本当に残る方法はないのですか?」
「ありません。そもそも、妃が何か分かっておいでですよね?」

 竜帝国における妃は、他国のように呼び名だけではない。そして、正妃や側妃とは異なるのである。

「それなら、務めは果たします」
「務めを必要としていないのです」

 妃は子どもを産むために存在する。ゆえに妃は拒否もできる。

 竜帝国で婚約者がいる、結婚しているという場合ではなく、何の問題もない番同士の場合は入る隙などないと考えることが当然であり、ライシードはどうしてこんな話をしなくてはならないのかと思うほどである。
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