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【テイラー】困窮
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オイワード公爵邸は使用人のおかげもあって、邸は使うところだけを掃除し、生活に必要のないものは後回しにし、外観も放置してはいたが、維持されていた。
想像通り、領地の収入は微々たるもので、まさに今年は払えても、イオリクの持っているお金を足しても、このままでは無理であった。
誰も相談する相手もいないために、執事に話をするしかなかった。
「どうすればいいんだ?話も聞いてもらえない」
「ですから、減額を願い出るしかありません」
「しばらく待ってもらうということは……」
「それも含めて願い出るしかないでしょう」
「それしかないのか」
願い出られる立場側にいたイオリクは、どんな理由であっても、その姿を情けないと馬鹿にしていた。自分が一番知っていたはずなのに、他に方法はないのかと訊ねずにはいられなかった。
「はい、借金をさせてくれるところなどありませんでしょう?」
「借金など」
「借金をするくらいなら申し出る方がいいでしょう」
お金を貸して欲しいと言うくらいなら、減額・猶予を申し出る方がマシである。
イオリクも願い出られる立場だったために、明らかに払えないと分かっているのならば、早くに申し出る方が申請が通る可能性も上がることは分かっている。
躊躇はしたが、潔く申請を出すことにした。
早くしなければ、折角公爵になったのに、エッセとも再婚ができていない、セラーに継がせるつもりなのに、取り上げられてしまう方が問題だと思ったからであった。
「イオリク・オイワード公爵から、減額・猶予願いが届きました」
「そうか」
手にしたライシードも、受け取ったアンデュースも、早々に出して来たなという印象であった。
「今までは受け取る側でしたからね、早い方がいいと思ったのでしょう」
「だが、無理だろう」
「はい。前公爵が当分困らないほどのお金を残していれば違ったでしょうけど、お使いになられているそうですから、払えるほど残っていないのでしょう」
領地の収入がほとんどなくなり、出ていくばかりであることから、維持するのは難しいだろう。
「領地はどうだ?」
「前当主夫妻が自害されたことで動揺は広がっていたようですが、怒りを持つよりも、そのおつもりで話をして回っていただろうと理解されたようです。残っているのは公爵領地から離れられない者、領主が変わるのを待っている者という感じですね」
アンデュースも事実を発表をした以上、責任を持たなければならないと考えており、きちんと様子を伺わせていた。
「公爵、いや、前公爵が根回しをしてから亡くなったんだな……」
「そうなのでしょうね」
話を付けたり、不具合が出ないように先にお金を渡していれば、すぐに何かということはないだろう。出て行った者は、わざわざ戻ることもない。
イオリクへもそうだが、オイワード公爵家や領地に嫌がらせをするよりも、関わりたくないということの方が強いということを物語っている。
「オイワード公爵家は、これまで領地経営はちゃんと行っていた証でもあるな」
「はい。考え方は過激なところはありましたが、これまで純血種、番に対する考え以外には、問題を起こすようなことはなかったと思います」
「ああ、浮いてはいたが、お取り潰しにしようという話になっていないことが答えだよな」
オイワード公爵家は他の家と、親戚でもあまり親しくしていることはなかった。
だが家族はとても大事にしており、やるべきことはきちんとしていた。だからこそ、ここまで純血種の維持を外れても、存続を続けていた。
「だが、もう維持ができないことは明らかだからな。もういいか」
「はい、よろしいかと思います」
イオリクに申請の今後について、話を聞きたいということで呼び出すことにした。
想像通り、領地の収入は微々たるもので、まさに今年は払えても、イオリクの持っているお金を足しても、このままでは無理であった。
誰も相談する相手もいないために、執事に話をするしかなかった。
「どうすればいいんだ?話も聞いてもらえない」
「ですから、減額を願い出るしかありません」
「しばらく待ってもらうということは……」
「それも含めて願い出るしかないでしょう」
「それしかないのか」
願い出られる立場側にいたイオリクは、どんな理由であっても、その姿を情けないと馬鹿にしていた。自分が一番知っていたはずなのに、他に方法はないのかと訊ねずにはいられなかった。
「はい、借金をさせてくれるところなどありませんでしょう?」
「借金など」
「借金をするくらいなら申し出る方がいいでしょう」
お金を貸して欲しいと言うくらいなら、減額・猶予を申し出る方がマシである。
イオリクも願い出られる立場だったために、明らかに払えないと分かっているのならば、早くに申し出る方が申請が通る可能性も上がることは分かっている。
躊躇はしたが、潔く申請を出すことにした。
早くしなければ、折角公爵になったのに、エッセとも再婚ができていない、セラーに継がせるつもりなのに、取り上げられてしまう方が問題だと思ったからであった。
「イオリク・オイワード公爵から、減額・猶予願いが届きました」
「そうか」
手にしたライシードも、受け取ったアンデュースも、早々に出して来たなという印象であった。
「今までは受け取る側でしたからね、早い方がいいと思ったのでしょう」
「だが、無理だろう」
「はい。前公爵が当分困らないほどのお金を残していれば違ったでしょうけど、お使いになられているそうですから、払えるほど残っていないのでしょう」
領地の収入がほとんどなくなり、出ていくばかりであることから、維持するのは難しいだろう。
「領地はどうだ?」
「前当主夫妻が自害されたことで動揺は広がっていたようですが、怒りを持つよりも、そのおつもりで話をして回っていただろうと理解されたようです。残っているのは公爵領地から離れられない者、領主が変わるのを待っている者という感じですね」
アンデュースも事実を発表をした以上、責任を持たなければならないと考えており、きちんと様子を伺わせていた。
「公爵、いや、前公爵が根回しをしてから亡くなったんだな……」
「そうなのでしょうね」
話を付けたり、不具合が出ないように先にお金を渡していれば、すぐに何かということはないだろう。出て行った者は、わざわざ戻ることもない。
イオリクへもそうだが、オイワード公爵家や領地に嫌がらせをするよりも、関わりたくないということの方が強いということを物語っている。
「オイワード公爵家は、これまで領地経営はちゃんと行っていた証でもあるな」
「はい。考え方は過激なところはありましたが、これまで純血種、番に対する考え以外には、問題を起こすようなことはなかったと思います」
「ああ、浮いてはいたが、お取り潰しにしようという話になっていないことが答えだよな」
オイワード公爵家は他の家と、親戚でもあまり親しくしていることはなかった。
だが家族はとても大事にしており、やるべきことはきちんとしていた。だからこそ、ここまで純血種の維持を外れても、存続を続けていた。
「だが、もう維持ができないことは明らかだからな。もういいか」
「はい、よろしいかと思います」
イオリクに申請の今後について、話を聞きたいということで呼び出すことにした。
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