【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】因縁

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 イオリクは部屋で一人になると、床を蹴り付けた。

「ふざけるな!調子に乗りやがって!」

 あれだけディオエルに叱られて、殺気を放たれても、イオリクの怒りはテイラーだけに向けられていた。

 ディオエルが望んでいないと言ったはずが、望まなくてもなることが当然で、アイルーンの時と同じように大人しく応じればいいのに、イオリクは不在の場面もあったために、テイラーが頑なに受け入れないのだと判断していた。

 話し合いの場でも、賛同したのはギリシスとマフスの方であった。

 最初は黙っていたが、ありがとうございますと言うべきだろう!この身を捧げますと言うべきだろう!子どもを産みたいですと言うべきだろう!ふざけるなよ!と、ずっと思っていた。

 アイルーンも不愉快な存在だったが、テイラーはもっと不愉快であった。

 だが、子どもを産ませなくてはならない。尊き存在があんな女から生まれて来ることは、心の底から不本意ではあるが、仕方ない。

 生まれてしまえば、引き離して、母親に合わせないようにして、関わらない方がいいと吹き込めばいい。

 アイルーンの時も、そうするつもりだった。

 否定したが、ローズミーの子どもとして扱えばいいと思っていた。だからこそ、アイルーンに立場を分からせて、コントロールしていたはずだった。

 何人か産ませて、ディオエルに影響がないか確認するために、引き離して様子を見て、邪魔になるようならば処分すればいいと思っていた。

 だが、子どもを産む前に殺されてしまったら、意味がない。

 だからこそ、ペジリーとローズミーはなんて愚かなことをしたのだと思った。

 せめて、あの子どもだけでも生まれていれば、ローズミーを正妃にすることが出来たかもしれないのに。

 疑似番など、相談してくれていたら、そのことを話して、絶対に止めていた。

 本当は処刑される前にペジリーとローズミーに会いたかったが、父に既に疑われているのに、関与を疑われたいのかと言われて、さすがに会うことは出来なかった。

 二人のしたことをはディオエルを思ってのことではないかとは、今でも思っているが、さすがに助命は出来なかった。

 ペジリーとローズミーを処刑までして事件は解決したのだから、テイラーもアイルーンの記憶があろうが、なかろうが、もうどうでも良かった。

 とにかく、テイラーを妃にさせなければならない。

 いくらディオエルが間違っていると言っても、自身は番には否定的な考えであるのに関わらず、番ならば当然だと思っており、どうしてやろうかと考えていた。

 ライシードも期待が出来ない。いや、むしろチャンスかもしれないと思った。

 現在、イオリクがいた場所にあれからずっとライシードがおり、テイラーに妃にしてくださいと言わせれば、また一番近い側近に戻れるとまで考えていた。

 それがどれだけ、意に反するかなど、イオリクには分からないままであった。

 イオリクはテイラーの居場所も分からないために、誰か使える者はと考えた時、思い付いたのはギリシスであった。

 ギリシスに会いに行き、部屋の前の護衛には改めて謝罪をしたいと言い、声では謝罪をしながら手紙をこっそりと渡し、秘密裏に会う手はずを整えた。

 皆が寝静まってから、奥まった談話室で会うことになった。

「お待たせしました」
「いえ、会ってくださりありがとうございます」
「いいえ、私も同じ考えでございますから、竜帝国の方に同じ思いの方がいて良かったです」

 物音を立てずに、そっとやって来たギリシスはイオリクの前に座った。

 この談話室は鍵が掛けられておらず、休憩室としても使われており、周りに人もいないために大声でなければ気付かれることはない。

「ええ、必ず妃にさせます。ディオエル様の子ども、次代を産んで貰わなければなりませんから」
「私もそれが正しい道だと思っております」
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