【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】密談1

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 ミリオン王国の血筋が、竜帝国の次代になる。その言葉はギリシスにとって、何よりも甘美な言葉であった。

「ですが、私は恥ずかしながら、動くことは出来ません」

 ギリシスもテイラーと二人で話をしたいとは思ったが、そんな動きをすれば、絶対にシュアリアとエレサーレに止められるだろうことは分かっていた。

「王妃も息子も、宰相にも反対されてしまいましたから」
「宰相もですか?」

 先程はこちら側の人間だと思っており、竜帝国に宰相はいないが、同じような立場であるため、マフスに持ち掛けようかとも考えたが、既に王宮にはいかないかもしれないと思い、ギリシスにしたのである。

「はい…皇帝陛下の意に反すると言われてしまい、竜帝国を敵に回すことは出来ませんから」
「そのようなことは絶対に起こりません」
「そうですか、それを聞いて安心しました」

 ギリシスは今のイオリクの置かれている立場を知らないとはいえ、あれだけ目の前でディオエルに叱られていたのに、疑いもしなかった。

「私が番に話をしに行きます」
「それは助かります」

 監視の目もあるが、国王が王宮内ならともかく、こっそりと出ることは出来ない。

 竜帝国側のイオリクが話をすれば、ミリオン王国も文句は言えない。ようやく自分の思っていた通りに進みそうで、頬のゆるみが堪えきれなかった。

「働いている場所はご存知ですか?」
「はい、コンスホールホテルで働いています」

 ギリシスは王宮からホテルへの行き方を、説明した。

「ですが、もしかしたらデリア侯爵が警護を付けているかもしれません」

 警戒している可能性を考え、行っているとすればデリア侯爵である。すぐさま、デリア侯爵を呼ばれれば、皇帝陛下に繋がってしまう。

「呼ばれる前に話を付けます」
「そうしていただきたいところですが、あの娘は頑なと言いますか、そう簡単にいきますか」

 ギリシスにも敬意を払う様子もない様に、簡単に話が付くとは思えなかった。

「脅すようなことはしたくないのですが、何か弱味はないのでしょうか」

 イオリクは脅す気しかなかったが、弱みを握って置けば、言うことを聞くだろうと考えていた。

「そうですね、家族でしょうか…」
「デリア侯爵家の方ですか?」
「いえ、あちらを懐柔するのは無理でしょう」

 デリア侯爵家も弱味にはなるが、手を出す方が難しい。妃などと言っている場合ではなくなってしまう。

「では、現在の?」
「はい…縁は切ったようなことは言っておりましたが、つい最近まで一緒に暮らしていたのですから、情はあるでしょう」
「なるほど、ではエイク子爵でしたか。そちらに圧力を掛けましょう」
「ですが、デリア侯爵の縁者なのです」

 結局はデリア侯爵が出て来てしまえば、デリア侯爵との話になってしまう。呼び出すのを躊躇していたのは、その理由の方が大きかった。

「そうでしたか…」
「それでも、エイク子爵としては娘が皇帝妃になるとすれば、話は変わって来るでしょう」
「どのような方なのですか」
「特にこれといった特徴のない者ですが…妃となれば、エイク子爵家も扱いが変わりますからね」

 ギリシスの記憶にも残っていないほど、印象にないということは、特別悪くもないということだろう。

 だが、娘が出て行くのを許可したり、妹に継がせることにしたということは、妹の方に重きを置いているのかもしれない。

 それでも竜帝国の妃となるとなれば、その気持ちも変わるだろう。

「国王陛下から、打診していただくことは出来ますか?」
「ええ、勿論です。秘密裏に手紙を出して置きましょう」

 竜帝国側がそう言ってくれるのならば、大義名分となるために、エイク子爵に打診する理由がある。これで文句は言わせない。

 明日、朝一番に出して置こうと決めた。
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