【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】因縁の対決1

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 圧力を掛けようと思っていたが、すんなり話が出来ることになり、イオリクはほくそ笑みながら、テイラーの後ろをついて行った。

 案内されたのは、通常は商談や打ち合わせをするような小さめの一室であった。

「お茶は出しませんよ」
「構わない」

 円形の机を挟んで、テイラーとイオリクは向き合って座った。

「それでどのようなご用件ですか?謝りに来たわけではないのでしょう?」
「私に謝る必要はない」
「悪い意味で変わりませんね」

 テイラーも訪ねて来るとまでは思わなかったが、イオリクだけが納得していないことはさすがに分かっていた。

 仕事が終わってからにして貰いたいところだったが、イオリクは騒ぎを起こす恐れがあると考え、ならばここで因縁の相手と話を付けようと思った。

 支配人には休んだ期間で番ではないと証明されたと話してあり、だがイオリクは竜帝国のまだ私が番だと疑っている、公爵家の方だと話しており、面倒事を起こし兼ねないために話をしたいと伝えた。

 大丈夫かと心配してくれたが、番であるために危害を加えることはない。それでも、ホテルで話す方がいいだろうと思い、仕事も早退にして貰うことにした。

「あなたは他の妃にも、そのような失礼な態度なのですか?」

 アイルーンは、イオリクが他の妃と話していたのを見たことがなかった。

「は?そんなわけがないだろう」
「番だから気に食わないのですか?それとも、ミリオン王国の人間だからですか?」
「番だからだ」
「なぜですか?」

 テイラーはアイルーンの時に、ローズミーのことがあるからだと思っていたが、そうではないのなら、どうしてこの男は最初から高圧的だったのか、聞いてみるのもいいかと思った。

「なぜ?あやふやなものが嫌いなだけだ!本来なら、ディオエル様に相応しい相手が番であった方がいいに決まっている!」

 テイラーも、初めてイオリクの意見に賛同した。

 アイルーンも、テイラーも番というものに、ずっと振り回され続けている。

 関係ないと言えば、何の思い入れもない婚約者だった、メルト・ピアットとの婚約を解消したことくらいだろう。

「それがローズミー妃だったはずが、違ったようですね」
「違いはしない!ローズミーはディオエル様を愛していた!だからこそ、あんな愚かな真似をしたんだ!お前には分からないだろう!何もせず、番などと言われて!」

 殺されたことは、この男にとって、些細なことなのだろう。同じ人間だとも思っていないのかもしれない。

「妃の皆様は、同じように愛してらしたのではありませんか?」

 公にはアイルーンも妃だったが、テイラーの中では妾のままであるために、敢えて妃と使った。

「ローズミーが一番愛していたんだ!」
「ローズミー妃がお好きだったのですか?」

 ペジリーは娘なので、特別なのは分かるが、イオリクはどうしてここまで肩入れするのか、導き出した答えは安易ではあったが、それ以外考えられなかった。

「違う!」
「ならばなぜ、他の妃と扱いが違ったのですか?」
「一番、ディオエル様を思っていたからだ!」
「ロウス妃もメロディ妃も、同じことをしていたではありませんか」
「間違ってはいるが、疑似番が成功したのはローズミーだけだっただろう!ディオエル様への思いがあってこそだ!」

 イオリクは番についてはあやふやなものという割に、ローズミーの思いは特別だと思っている。

 テイラーは、ふと、どちらが価値があると言えるのだろうかと、頭を過った。

 本能などではなく、思う相手。アイルーンにとってのマーク。でも、マークは本能を選び、あのパーティーで妻の隣で、笑っていた。

 大丈夫だと思っていたが、目に入った瞬間に時が止まったようだった。一瞬しか視界に入れないようにしたが、今でも鮮明に焼き付いている。
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