【完結】あの子の代わり

野村にれ

文字の大きさ
50 / 73

お花畑だった家族の真実8

しおりを挟む
「それは、誰かが書き換えたのよ!」
「はあ…公爵家と侯爵家の二人と、君ではどちらが信用されると思っている?」
「どういう意味?」
「確認のためにサインをしたのは、公爵家の令息と、二つの侯爵家の夫人方だ」
「えっ…あのおばさんたち、侯爵夫人…なの?」

 お二人をおばさんなどと言っていることが、不味いとは思えないのか。

「そうだ」
「嘘よ、ただのメイドか何かでしょう、あり得ないわ、騙そうとしているのよ!」
「お二人は王妃陛下の侍女でもある。信用は君とは雲泥の差だよ。君を騙して何になる?」
「私が若くて、美しいから…嫉妬して」

 キャリーヌはまだ自分は魅力があると思っており、二人だけでも男性に相手にして貰ったことで、疑うこともなかった。

「そんなはずがないだろう。本来なら、今の君が一生口も利けない相手だよ。王妃陛下にも偽証罪を適用するか?」
「そ、それは、そんな…」

 現状は国王陛下に対する偽証罪であり、王妃陛下へも適用されれば、間違いなく罪は重くなる。

「国王陛下への偽証罪は確定している、動機はお金ということでいいか?」
「でも、勘違いしただけでしょう?罪とは呼べないはずよ」
「どこが勘違いなんだ?」
「だからお姉様が書いたと思って、持って来ただけじゃない…」
「自分で書いてか?」

 まだ誰の筆跡だったかについては、触れていなかった。

「っな、そんなわけないじゃない」
「君の筆跡だと鑑定が出ている、王家の鑑定士だ。間違いだと言えば、不敬罪だ、分かっているな?」

 また同じことを言われては堪らないので、先に封じることにした。

「それは…」

 キャリーヌは上手くいくはずのない策に、こんな状況になるとは思っておらず、いつものように庇ってくれる両親も兄もいない。

「処罰が決まるまでは、貴族牢に入って貰うことになるだろう」
「嫌よ!そんな…牢屋なんて」

 キャリーヌは邸には戻れると思っていた。その間にマックスに頼んで、一旦国に戻って貰うようにお願いして、逃げてしまえばいいと考えた。

 後はきっと両親がどうにかしてくれる、キャリーヌは自分のことしか考えていないので、そんなことをすれば両親がどうなるかも考えることもない。

 そして、マックスが罪人と逃げてくれるかどうかも分からないが、キャリーヌは危機的状況だから、きっと叶えてくれると思っている。

「罪を認めず、逃げる可能性があると思われるからだ」
「認めたら返して貰えるの?」
「それを決めるのは私ではない」
「誰が決めるの?」
「国王陛下だろうな」
「そんな…」

 ひとまず貴族牢に入れられることになり、キャリーヌは暴れたが、騎士団員が痩せている非力な令嬢を押さえつけれらないはずがない。

 国王陛下に聴取の内容を報告すると、貴族牢に収監したままということになった。

 ソアリ伯爵家にも、キャリーヌは処罰が決まるまで、貴族牢で収監されることになったことだけが告げられた。

 そして、処罰が相談され、今回も被害者と言えるベルアンジュは亡くなっていることから、容赦なく叩き潰すこととなった。

 キャリーヌは連絡を取りたい人がいると騒ぎ、ホテルに滞在しているマックス宛ての手紙を預かり、念のために話を聞こうと思ったが、滞在者にマックスという名前の男はいなかった。

 スタッフから、おそらくこの方ではないかという男は見付かったが、どちらにせよ既にいなかった。

 拘束をしたので、監視は既に止めており、マリクワン侯爵家に話を聞きに行ったが、おそらく拘束されたことを知って、国を出たのだと思うと聞かされた。

 そして、調べる理由がないと言っていたが、念のため誰なのかを調べてあると、マックスの正体を聞くことになったが、聴取は必要はなさそうだと判断した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵家に不要な者を追い出した後のこと

mios
恋愛
「さあ、侯爵家に関係のない方は出て行ってくださる?」 父の死後、すぐに私は後妻とその娘を追い出した。

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。

藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」 憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。 彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。 すごく幸せでした……あの日までは。 結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。 それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。 そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった…… もう耐える事は出来ません。 旦那様、私はあなたのせいで死にます。 だから、後悔しながら生きてください。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全15話で完結になります。 この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。 感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。 たくさんの感想ありがとうございます。 次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。 このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。 良かったら読んでください。

『紅茶の香りが消えた午後に』

柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。 けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。 誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。

花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果

藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」 結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。 アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

処理中です...