【完結】あなたにすべて差し上げます

野村にれ

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婚約解消

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 目の前で寄り添っている男女と対峙しているのは、コンクラート王国の王太子である、アウラージュ第一王女である。

「すまないが、婚約を解消して欲しいんだ」
「お姉様、ごめんなさい。私もルカス様を好きになってしまったの」
「いえ、私が悪いのです」

 瞳を潤ませているシュアリーは、コンクラート王国第二王女。ルカスはバートラ公爵家の次男で、私の婚約者であった。

「…そう、陛下はご存知なのね?」
「ええ、お父様にはお姉様が良いならと言って貰ったわ」
「承知しました。お幸せに」
「ありがとう、お姉様!なかなか承諾して貰えないんじゃないかと思っていたの」
「殿下、ありがとうございます」

 ルカスとはまともに話したのは半年以上前で、その前からシュアリーと親しくしていたのは明らかであった。なかなか承諾しないなどと言う必要があっただろうか。

 陛下に会いに行くと、すぐに通して貰うことが出来た。シュアリーのためならば、時間を取れるということがあからさまである。

 王妃はシュアリーの出産後に亡くなっており、長い間王妃は不在となっているが、それでも陛下の和睦交渉で、平和な国となってからは賢王や英雄扱いされているため、不満は少ない。

「婚約を解消したいとのことでしたので、承知しました」
「そうか、それでいいんだな?」
「陛下、それはこちらの台詞です」
「どういう意味だ?」
「私は王位継承権を放棄しますので、後はよろしくお願いいたします」
「っな、王太子は」

 現在、王太子はアウラージュである。だが、アウラージュが王位継承権を放棄すれば、シュアリーとなる。

「シュアリーはわざわざ、他でもない王配を選んだのですよ?願いを叶えてやってはいかがですか」
「だが…」
「でなければ、バートラ公爵令息は教育ではなく、乳繰り合いに王宮に来ていたことになりますでしょう?それとも、乳繰り合いに来ていたのでしょうか?」
「そんなわけないだろう!」

 シュアリーには縁談が来ていたが、ルカスを好いていると告白されて、ルカスも同じ気持ちで、ルカスならシュアリーを傷付けることはない。アウラージュとルカスは政略的な関係で、慕っている素振りもなく、アウラージュが了承すれば、新しく爵位を与えるなり、すればいいだろうと思っていた。

 だがそうではなく、シュアリーが王太子になりたかったとしたら…いや、アウラージュが勝手に言っているだけかもしれないが、確かに一理ある。このまま爵位を与えれば、第一王女の婚約者を奪ったと同時に、次期王から王配を奪ったことになる。

「王配はこのまま、王太子を変えればいい。いつもシュアリーは優秀だと仰っていたではありませんか」
「だが、あの子は心も身体が強くない」
「身体は子どもの頃の話でしょう?陛下はシュアリーだけだと思っているようですけど、私も同じでしたわよ?」
「…駄目だ、優しすぎるシュアリーには無理だ」

 何だ、その軟弱な理由は。あれは優しいという部類なのか?

「いいえ、私が王太子に相応しくない、もしくは私が王位継承権を放棄したから、シュアリーを王太子にして、バートラ公爵令息は王配のまま。これが王のすべき最善ではありませんこと?あれだけ皆にシュアリーを褒めて、見せ付けていたのですから、覆りませんですわよ?では」

 アウラージュと比べたわけではないが、シュアリーは優しくて、賢いと何度も褒めていた。陛下が言うのだからと皆、信じている。

「ならば、お前はどうするというのだ!縁談などない!」
「当たり前でしょう。婚約者がいる者に縁談があってはおかしいではありませんか」
「っ、それはそうだが」
「これから税で暮らすわけには参りませんから、何か考えます。今から陛下がすべきことはシュアリーを王にすることではありませんか。愛する娘が王になるのですから、喜ぶべきでしょう?国王としては」
「…ああ、そうだな」
「では、失礼します」

 アウラージュ第一王女は、その日の内に王宮からいなくなっていた。


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お読みいただきありがとうございます。

逃げずに捨てない話を書いていましたら、
今度はすべて捨てた話を書きたくなりました。

お気に召しましたら、よろしくお願いいたします。
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