1 / 38
婚約解消
しおりを挟む
目の前で寄り添っている男女と対峙しているのは、コンクラート王国の王太子である、アウラージュ第一王女である。
「すまないが、婚約を解消して欲しいんだ」
「お姉様、ごめんなさい。私もルカス様を好きになってしまったの」
「いえ、私が悪いのです」
瞳を潤ませているシュアリーは、コンクラート王国第二王女。ルカスはバートラ公爵家の次男で、私の婚約者であった。
「…そう、陛下はご存知なのね?」
「ええ、お父様にはお姉様が良いならと言って貰ったわ」
「承知しました。お幸せに」
「ありがとう、お姉様!なかなか承諾して貰えないんじゃないかと思っていたの」
「殿下、ありがとうございます」
ルカスとはまともに話したのは半年以上前で、その前からシュアリーと親しくしていたのは明らかであった。なかなか承諾しないなどと言う必要があっただろうか。
陛下に会いに行くと、すぐに通して貰うことが出来た。シュアリーのためならば、時間を取れるということがあからさまである。
王妃はシュアリーの出産後に亡くなっており、長い間王妃は不在となっているが、それでも陛下の和睦交渉で、平和な国となってからは賢王や英雄扱いされているため、不満は少ない。
「婚約を解消したいとのことでしたので、承知しました」
「そうか、それでいいんだな?」
「陛下、それはこちらの台詞です」
「どういう意味だ?」
「私は王位継承権を放棄しますので、後はよろしくお願いいたします」
「っな、王太子は」
現在、王太子はアウラージュである。だが、アウラージュが王位継承権を放棄すれば、シュアリーとなる。
「シュアリーはわざわざ、他でもない王配を選んだのですよ?願いを叶えてやってはいかがですか」
「だが…」
「でなければ、バートラ公爵令息は教育ではなく、乳繰り合いに王宮に来ていたことになりますでしょう?それとも、乳繰り合いに来ていたのでしょうか?」
「そんなわけないだろう!」
シュアリーには縁談が来ていたが、ルカスを好いていると告白されて、ルカスも同じ気持ちで、ルカスならシュアリーを傷付けることはない。アウラージュとルカスは政略的な関係で、慕っている素振りもなく、アウラージュが了承すれば、新しく爵位を与えるなり、すればいいだろうと思っていた。
だがそうではなく、シュアリーが王太子になりたかったとしたら…いや、アウラージュが勝手に言っているだけかもしれないが、確かに一理ある。このまま爵位を与えれば、第一王女の婚約者を奪ったと同時に、次期王から王配を奪ったことになる。
「王配はこのまま、王太子を変えればいい。いつもシュアリーは優秀だと仰っていたではありませんか」
「だが、あの子は心も身体が強くない」
「身体は子どもの頃の話でしょう?陛下はシュアリーだけだと思っているようですけど、私も同じでしたわよ?」
「…駄目だ、優しすぎるシュアリーには無理だ」
何だ、その軟弱な理由は。あれは優しいという部類なのか?
「いいえ、私が王太子に相応しくない、もしくは私が王位継承権を放棄したから、シュアリーを王太子にして、バートラ公爵令息は王配のまま。これが王のすべき最善ではありませんこと?あれだけ皆にシュアリーを褒めて、見せ付けていたのですから、覆りませんですわよ?では」
アウラージュと比べたわけではないが、シュアリーは優しくて、賢いと何度も褒めていた。陛下が言うのだからと皆、信じている。
「ならば、お前はどうするというのだ!縁談などない!」
「当たり前でしょう。婚約者がいる者に縁談があってはおかしいではありませんか」
「っ、それはそうだが」
「これから税で暮らすわけには参りませんから、何か考えます。今から陛下がすべきことはシュアリーを王にすることではありませんか。愛する娘が王になるのですから、喜ぶべきでしょう?国王としては」
「…ああ、そうだな」
「では、失礼します」
アウラージュ第一王女は、その日の内に王宮からいなくなっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
逃げずに捨てない話を書いていましたら、
今度はすべて捨てた話を書きたくなりました。
お気に召しましたら、よろしくお願いいたします。
「すまないが、婚約を解消して欲しいんだ」
「お姉様、ごめんなさい。私もルカス様を好きになってしまったの」
「いえ、私が悪いのです」
瞳を潤ませているシュアリーは、コンクラート王国第二王女。ルカスはバートラ公爵家の次男で、私の婚約者であった。
「…そう、陛下はご存知なのね?」
「ええ、お父様にはお姉様が良いならと言って貰ったわ」
「承知しました。お幸せに」
「ありがとう、お姉様!なかなか承諾して貰えないんじゃないかと思っていたの」
「殿下、ありがとうございます」
ルカスとはまともに話したのは半年以上前で、その前からシュアリーと親しくしていたのは明らかであった。なかなか承諾しないなどと言う必要があっただろうか。
陛下に会いに行くと、すぐに通して貰うことが出来た。シュアリーのためならば、時間を取れるということがあからさまである。
王妃はシュアリーの出産後に亡くなっており、長い間王妃は不在となっているが、それでも陛下の和睦交渉で、平和な国となってからは賢王や英雄扱いされているため、不満は少ない。
「婚約を解消したいとのことでしたので、承知しました」
「そうか、それでいいんだな?」
「陛下、それはこちらの台詞です」
「どういう意味だ?」
「私は王位継承権を放棄しますので、後はよろしくお願いいたします」
「っな、王太子は」
現在、王太子はアウラージュである。だが、アウラージュが王位継承権を放棄すれば、シュアリーとなる。
「シュアリーはわざわざ、他でもない王配を選んだのですよ?願いを叶えてやってはいかがですか」
「だが…」
「でなければ、バートラ公爵令息は教育ではなく、乳繰り合いに王宮に来ていたことになりますでしょう?それとも、乳繰り合いに来ていたのでしょうか?」
「そんなわけないだろう!」
シュアリーには縁談が来ていたが、ルカスを好いていると告白されて、ルカスも同じ気持ちで、ルカスならシュアリーを傷付けることはない。アウラージュとルカスは政略的な関係で、慕っている素振りもなく、アウラージュが了承すれば、新しく爵位を与えるなり、すればいいだろうと思っていた。
だがそうではなく、シュアリーが王太子になりたかったとしたら…いや、アウラージュが勝手に言っているだけかもしれないが、確かに一理ある。このまま爵位を与えれば、第一王女の婚約者を奪ったと同時に、次期王から王配を奪ったことになる。
「王配はこのまま、王太子を変えればいい。いつもシュアリーは優秀だと仰っていたではありませんか」
「だが、あの子は心も身体が強くない」
「身体は子どもの頃の話でしょう?陛下はシュアリーだけだと思っているようですけど、私も同じでしたわよ?」
「…駄目だ、優しすぎるシュアリーには無理だ」
何だ、その軟弱な理由は。あれは優しいという部類なのか?
「いいえ、私が王太子に相応しくない、もしくは私が王位継承権を放棄したから、シュアリーを王太子にして、バートラ公爵令息は王配のまま。これが王のすべき最善ではありませんこと?あれだけ皆にシュアリーを褒めて、見せ付けていたのですから、覆りませんですわよ?では」
アウラージュと比べたわけではないが、シュアリーは優しくて、賢いと何度も褒めていた。陛下が言うのだからと皆、信じている。
「ならば、お前はどうするというのだ!縁談などない!」
「当たり前でしょう。婚約者がいる者に縁談があってはおかしいではありませんか」
「っ、それはそうだが」
「これから税で暮らすわけには参りませんから、何か考えます。今から陛下がすべきことはシュアリーを王にすることではありませんか。愛する娘が王になるのですから、喜ぶべきでしょう?国王としては」
「…ああ、そうだな」
「では、失礼します」
アウラージュ第一王女は、その日の内に王宮からいなくなっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
逃げずに捨てない話を書いていましたら、
今度はすべて捨てた話を書きたくなりました。
お気に召しましたら、よろしくお願いいたします。
1,672
あなたにおすすめの小説
覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
愛する女性を側室に望むのなら、いっそ私との婚約は解消してほしいのですが?
四折 柊
恋愛
公爵令嬢ジョゼフィーヌには好きな人がいた。その人は隣国の王子様リック。ジョゼフィーヌはリックと結婚したくて努力をしてきた。そして十六歳になり立派な淑女になれたと自信を得たジョゼフィーヌは、リックにプロポーズをしようとした。ところが彼に婚約者がいたことが発覚し悲しみに暮れる。今まで確認しなかった自分も悪いが、なぜかリックも家族もそのことを教えてくれなかった。そんなときジョゼフィーヌに婚約の打診が来た。その相手は自国のアルバン王太子殿下。断りたいが王命が下り仕方なく受け入れた。それなのに、ある日夜会でアルバンが可憐な令嬢に一目惚れをした。その後、アルバンはその令嬢を側室にしたいと望んだので、お互いのために婚約を解消したいと申し出たが拒絶されて……。ジョゼフィーヌの未来はどうなるのか?!
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜
nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。
「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。
だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。
冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。
そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。
「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる