【完結】あなたにすべて差し上げます

野村にれ

文字の大きさ
9 / 38

新王太子

しおりを挟む
 シュアリーに王太子教育を始めて半年が経っていたが、教師陣の評価はずっと低い。字も汚いままで、読めないという苦情も上がっている。そして、本人にやる気を感じられない、逃げれるなら逃げたいというのが、あからさまだという。ルカスの方は元々行っていたために、順調だと聞いている。

「スイク王国から第二王子がいらっしゃることになった、粗相のないように。王太子教育も対応したものに変えるから、そのつもりでいなさい」
「はい…頑張ります」

 シュアリーは未だに王太子の実感も、自信もないが、やっぱり王女として、崇められることはとても好きなのである。

 王太子となったシュアリーは、初めて国外の方に会うことになるため、念入りに指導を受け、字を書く機会はないため、そこは安心だ。そしてお迎えの日を迎えた。新しいドレスに、愛らしい化粧と髪型にして貰い、上機嫌だった。

 王太子の発表はしたものの、教育が追い付いていないため、立太子のお披露目は体制が整ってからということになっている。無駄になるかもしれないから、したくないというのが大臣たちの本音である。

「初めまして。スイク王国、第二王子のブルーナでございます」
「初めまして、王女のシュアリーでございます」

 シュアリーはブロンドに、青い瞳のブルーナの絵画のような美しさに眩暈がした。世界にはこんなにも美しい人がいるのか。シュアリーは大事な場面で出席することはなかったので、初対面である。

「素晴らしい王宮ですね」
「ありがとうございます」
「立太子、ご婚約、おめでとうございます。今とてもお幸せなんでしょうね」
「はい、ありがとうございます」
「羨ましい限りです。好きな相手と想い合うと、毎日が輝いて見えるというのは本当でしょうか」
「はい、輝いているかは分かりませんが、幸せです」

 シュアリーは甘い口振りのブルーナの言葉に素直に答えていた。

「それはとても素晴らしいことですね、私も本当は縁談でこちらに来る予定だったのですが、なくなってしまいましてね」
「えっ、そうなのですか」
「仕方のないことです。想い合う2人のお邪魔は出来ませんから。ご縁がなかったのでしょうね。殿下も婚約者様と末永くお幸せに」

 シュアリーは縁談の話を陛下から聞いていたが、ルカスのことばかり考えてしまい、相手が誰かまでは聞いていなかった。王族の相手は限られるため、まさかブルーナ第二王子だったのだろうか。

「ブルーナ殿下は素晴らしいお人柄ですね。婚約者もいらっしゃらないそうで、アウラージュ殿下とお似合いなのではないかと思いましたが」
「えっ、でも」
「何かありましたか?」
「いえ、お姉様を好まれるかは分からないと思っただけです」
「そうですか?いいお話ではありませんか」
「えっ、ええ、そうだけど」

 ご縁がなかったということは、ブルーナは受けるつもりでいたのだろう。でも、こちらの状況が変わって、お断りをすることになった。ルカスのことは好きだが、何だかとても酷いことをした気持ちになる。

 アウラージュに紹介して、もし上手くいってしまったら、いえ、喜ばしいことじゃない。でもどうしようもなく、惜しいという気持ちが勝ってしまう。何なのだろうか、この気持ちは、分からない。

 それからルカスは大臣の紹介や、フォローしてくれていたが、ほとんどの話は頭に入らなかった、代わりにブルーナの隣に立つ自分を想像ばかりしていた。

 シュアリーは気付いていない。対外的にはアウラージュが王位継承権を放棄したから、王太子になり、王配をそのままとなったはずなのに、ブルーナはまるで想い合っている2人として扱い、祝辞を述べ、周りにも聞こえている。

 本来なら急なことで大変ですが、ルカスも頑張ってくれているので、支え合って行こうと思うと話すべきだっただろう。

 ブルーナは幼い頃から容姿を褒められ続け、みごとなナルシストとなった。わざと自身が縁談の相手だと匂わせ、私の美貌で靡くかどうか試してみたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

愛する女性を側室に望むのなら、いっそ私との婚約は解消してほしいのですが?

四折 柊
恋愛
公爵令嬢ジョゼフィーヌには好きな人がいた。その人は隣国の王子様リック。ジョゼフィーヌはリックと結婚したくて努力をしてきた。そして十六歳になり立派な淑女になれたと自信を得たジョゼフィーヌは、リックにプロポーズをしようとした。ところが彼に婚約者がいたことが発覚し悲しみに暮れる。今まで確認しなかった自分も悪いが、なぜかリックも家族もそのことを教えてくれなかった。そんなときジョゼフィーヌに婚約の打診が来た。その相手は自国のアルバン王太子殿下。断りたいが王命が下り仕方なく受け入れた。それなのに、ある日夜会でアルバンが可憐な令嬢に一目惚れをした。その後、アルバンはその令嬢を側室にしたいと望んだので、お互いのために婚約を解消したいと申し出たが拒絶されて……。ジョゼフィーヌの未来はどうなるのか?!

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜

nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。 「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。 だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。 冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。 そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。 「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...