愛されて、愛されて、愛されて

野村にれ

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経緯

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「末永くではなく、なるべく短くよろしくお願いいたします」
「ああ、よろしく頼む」

 このような会話をしているのは、空が一面に晴れ渡る本日、めでたく結婚式を挙げた麗しく美しい夫と、目を奪われる美しい妻である。

 結婚式は新郎新婦は何もしなくとも美しいのに、タキシードとドレスに着飾った二人は、サジューモア王国で一番美しい夫婦と言わしめたほどであった。

 お分かりのように、二人の共通点は美しいこと。

 そして、この結婚は愛し、愛される結婚ではないこと。

 この二人の結婚は、侯爵令嬢であるカサリア・リングスの元に、従兄妹であるエバンファスト・マドール辺境伯令息が、どうしても頼みたいことがあると、疲れた表情でやって来たことから始まる。

「誰かなるべく高位貴族で、契約結婚に応えてくれる者はいないか」
「ルジエール様のこと?」
「ああ、そうなんだ」

 ルジエール・ビードルトラン公爵令息。あまりお目に掛かれないほどの天才魔術師。そして、艶々のブラックの長髪で、レッドブラックの瞳、視線が合うだけで妊娠すると言われる麗しい美男である。

 エバンファストは年は一つしか変わらないが、ルジエールの弟子のような立ち位置である。

「いなくはないけど、彼女が不幸になるのは嫌よ?どういう扱いになるの?」
「本当か!」

 エバンファストは、カサリアに向けて目を爛々とさせた。

「……ええ」
「勿論、子作りをする必要はなく、相手が見付かったら契約は終了となり、もちろん以後、独り身であろうが再婚しようが、贅沢に暮らすお金は出す。こちらの有責になるため、彼女に庇護がないことをきちんと発表する。ご両親も納得済みだから、きちんと契約も書面にする」

 天才魔術師であるゆえ、魔力量が多く、相性のいい相手がいるらしい。

 効率を重視するルジエールは、相性のいい相手に出会うまではと、拒み続けていることは、以前からエバンに聞いて知っていた。

「普通だったら、酷い条件ね」
「あっ、ああ……そうだよな」

 確かにお金に困っているような令嬢ならまだいいかもしれないが、高位貴族と言っているのだから、なかなか困っているような家はない。

「ご両親からお願いされたの?」
「ああ、その通りだよ。察しが良くて助かる。邸でも絶対に失礼なことがないようにするし、ルジエール様があまりに態度が酷いなどという場合も、我慢することはない。すぐに報告してくれ!ご両親がどうにかするそうだから」

 エバンファストは頭が痛いよと言わんばかりであったが、おそらく両親とルジエールの板挟みになっているのだろうと、カサリアは思った。

「でも、そのお相手が見付からなかったら?」
「それでも若い女性を一生縛るつもりはない。できれば最初は二年契約で、駄目なら二年で出て行ってもらっても構わない。続けてくれるのなら、そこからは一年契約で、さらにお金を増額する予定だそうだ」
「邸の管理とか、社交とか領地経営とかはどうなるの?」

 まだルジエールは爵位を継いでおらず、公爵夫人になることはないかもしれないが、きちんと聞いておかなければならないと考えた。

「優秀な執事がいるから、邸のことは任せればいい。もちろん、気になることがあれば、口を出すことも可能だ。社交はご存知の通り、変わり者だから、ほとんどすることはないと思う。もちろん対応が必要なときは頼むこともあるだろうから、なるべく高位貴族でなければならないんだ。それなりの対応が必要だからね。領地は元よりご両親が行っているから、心配しなくていい。もしも、相手が見付かったら、馬鹿な娘でないことを願うばかりだよ」
「……よく喋るわね、あなたも大変なのね」

 ルジエールの相性のいい相手が、馬鹿だったら、面倒なことになり、エバンファストが大変になることは間違いなしである。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お読みいただきありがとうございます。

連載中の作品の一部に終わりの目途が立ったので、
今度はしっかりと契約結婚を書きたいと思います。

そして、私の作品は親との関係性が悪いことが多かったのですが、
今回はとっても良好な家族です。

本日は初回なので、17時にももう1話更新いたします。

どうぞよろしくお願いいたします。
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