愛されて、愛されて、愛されて

野村にれ

文字の大きさ
5 / 42

親の顔合わせ2

しおりを挟む
「それはもちろん、こちらも安心できます。苦労は良いですが、可哀想な目には合わせたくありませんので」
「当然です、あのように可愛らしいお嬢様なのですから」
「はい、あの子は本当に可愛くて、可愛いものですから、それでも一度は結婚をしてもらいたいと思ってはいるのです」

 エバンファストはカサリアに二回言ったという顔を向けたが、カサリアもいつものことだという顔をしていた。

「存じております、私共も幼い頃から、時折お見掛けしておりましたが、本当に可愛らしいと思っておりました」
「そうでしょう、そうでしょう」

 リートルは頷きながら、フアンアールの生まれた時、喋り出した頃、歩き出した頃、成長していく姿が頭を彩り、思わず笑顔になった。

 ルキュアも、ケーシュアもラバエミールも、似たような表情をして、同じように思い出していた。

 ヴァッサム公爵家では、いつもの光景なのではあるが、ハッとした。

「ルジエール様も、お可愛らしかったでしょう?」
「幼い頃は、そうですが……可愛い?いえ、やはりもう可愛いとは思えず……声かしら?声なのかしら?」

 マーガレットもルジエールが赤子や幼い頃は、きらきらとしたブロンドの髪色に、青い海のようなブルーの大きな瞳、鼻が高く、ほどよい口の大きさに、天使を産んでしまったと頻繁に思っていた。

 しかも、ルジエールはビードルトラン公爵家の待望の子どもであった。

 だが、成長したルジエールは魔力量が多いことは分かっていたが、魔術にのめり込み、ふと天使と本当に同一人物なのだろうかと思うこともある。

 もはや、笑った顔すら、記憶にないほどである。

 ジスラットも横で、マーガレットの嘆きに合わせるように頷いていた。

「お母様、フランは特別なのですから」
「でも、ルジエール様も同じような境遇だったのではないかと思ったのよ。誘拐などの心配をされて、気を揉まれたのではないかと」
「誘拐はありませんが、幼い頃は嫌な思いをしたこともあります」

 親戚に自分の母乳をあげようとする者がおり、ゾッとしたことはある。

「やはりそうでしたか」
「フアンアール嬢もですか?それはご心配だったでしょう」
「ええ、全て未遂で済んでいるのですけど、気が気ではなかったですわ」

 ルキュアの言葉にリートルも、ケーシュアとラバエミールも、思い出して辛そうな顔をして頷いている。

 ケーシュアとラバエミールにも付けていたが、フランアールには規格外の護衛を付けていた。

「では、今もご心配でしょう?」
「っえ、ええ、でも今は成長いたしましたので」
「でも女の子ですから」
「ええ、でも今は、あまり心配しておりませんの」

 ほほほと、ルキュアはにっこりと笑い、リートルも、ケーシュアとラバエミールも同じように微笑んだ。

「そうですか」

 マーガレットはそれでも、今でも可愛いと言っているのに、腑には落ちなかったが、今でも心配するよりかは良いことよねと思うことにした。

「でも、心配はない方がいいに決まっておりますわよね」
「ええ、そうですわね」
「それで、本当に前向きに検討していただけるのでしょうか?」
「カサリア嬢に、言葉は悪いですが、この結婚がおままごとでもフランには、むしろいいのではないかと言われて、あの子にはそのくらいがいいと思ったのです」

 ジスラットとマーガレットは、確かに契約結婚など、表向きの役割を果たすおままごとは、言い得て妙だと頷いた。

「ですが、そちらも申し込みは多いのではありませんか?」
「正直に話しますと、何人か試しに会わせたことはあるのですが、あの子はその……頭の悪い女は嫌いだと」

 マーガレットは言葉を選んではいたが、ヴァッサム公爵家側も、その言葉に驚くことはなかった。

 ルジエールは気難しく、容赦ないことも知っていたからである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】あなたの愛は今どこにありますか

野村にれ
恋愛
頭では理由を付けて分かった振りをしても、理屈ではない。 分かりたくないことは、受け入れられない。 どうしても、叶わないことはある。 それならば、私はどうするべきか。どう生きて行くべきか。 (ひどく捻くれた話になっております)

私を追い出したければどうぞご自由に

睡蓮
恋愛
伯爵としての立場を有しているグルームは、自身の婚約者として同じく貴族令嬢であるメレーナの事を迎え入れた。しかし、グルームはその関係を築いていながらソフィアという女性に夢中になってしまい、メレーナに適当な理由を突き付けてその婚約を破棄してしまう。自分は貴族の中でも高い地位を持っているため、誰も自分に逆らうことはできない。これで自分の計画通りになったと言うグルームであったが、メレーナの後ろには貴族会の統括であるカサルがおり、二人は実の親子のような深い絆で結ばれているという事に気づかなかった。本気を出したカサルの前にグルームは一方的に立場を失っていくこととなり、婚約破棄を後悔した時にはすべてが手遅れなのだった…。

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

[完結]裏切りの果てに……

青空一夏
恋愛
王都に本邸を構える大商会、アルマード男爵家の一人娘リリアは、父の勧めで王立近衛騎士団から引き抜かれた青年カイルと婚約する。 彼は公爵家の分家筋の出身で、政争で没落したものの、誇り高く優秀な騎士だった。 穏やかで誠実な彼に惹かれていくリリア。 だが、学園の同級生レオンのささやいた一言が、彼女の心を揺らす。 「カイルは優しい人なんだろ? 君が望めば、何でもしてくれるはずさ。 でも、それは――仕事だからだよ。結婚も仕事のうちさ。 だって、雇い主の命令に逆らえないでしょ? 君に好意がなくても、義務でそうするんだ」 その言葉が頭から離れないリリアは、カイルの同僚たちに聞き込み、彼に病気の家族がいると知った。「治療費のために自分と結婚するの?」 そう思い込んだリリアに、父母がそろって事故死するという不幸が襲う。 レオンはリリアを惑わし、孤立させ、莫大な持参金を持って自分の元へ嫁ぐように仕向けるのだった。 だが、待っていたのは愛ではなく、孤独と裏切り。 日差しの差さない部屋に閉じ込められ、心身を衰弱させていくリリア。 「……カイル、助けて……」 そう呟いたとき。動き出したのは、かつて彼女を守ると誓った男――カイル・グランベルだった。そしてリリアも自らここを抜けだし、レオンを懲らしめてやろうと決意するようになり…… 今、失われた愛と誇りを取り戻す物語が始まる。

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

処理中です...