こんな異世界望んでません!

アオネコさん

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第3章 魔導帝国ハビリオン編

精霊の先制攻撃!

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 扉の先にあった光景は、例えるならば森の中の図書館だろう
いや、森に飲み込まれた図書館だろうか?

 複雑に見えるようで整然と並んだ本棚に木の根や草木が絡み合う不思議な空間がそこに広がっている

 空間全体にホタルのような淡い光がいくつも漂って周りを照らしていた

「ここは…」

 俺が床にゴソゴソやってる時にアスキルが上を見ながらそうポツリとこぼす
上を見ても暗い空間が広がっているだけで天井が見えない
広さもどのくらいあるのか…万能感知の感知範囲を上回る広さがあるのは確かだ

 ここがきっと禁書が置かれている【叡智の部屋サンクチュアリ】なんだろう


「今は父親を探すんでしょ?どこにいるかわからない?」

 アスキルに声をかけて探すよう伝えるが、父親を見つけるための魔道具が働かないらしい
ここの空間のせいなのか、それともアスキルの父親を連れていったヤツが何かしたのか…
どちらにしろ自分達で探さないといけないようだ
…この広い空間を?無理でしょ

 アスキルは何かを考えたあと、思い出したように俺に振り向いた

「そういえば、【叡智の部屋】の奥にはさらに部屋があると父さんから聞いた事があるな」

 じゃあもしかしたらそこにいるのかも
でもその扉がどこにあるのやら
これだけ広い場所を探すのは骨が折れるぞ…

「あっ!」

 俺の声でアスキルが驚いたが気にしない
それよりもこの前の魔法が使えるかもしれない
ここで使えるかはわからないけど、試してみる価値はあるな

「【地平線を見通す目ホライズンアイ】」


 魔法は成功した
望遠鏡を覗いたみたいにグンッと視界が拡大し、そのまま【叡智の部屋】を細かく見ていく
すると床に何かが落ちているのに気付いた
それを確かめると魔法を解除し、アスキルに顔を向ける

「どうした?なにか見つけたのか?」

 アスキルはそう言って周りをキョロキョロ見る
多分だけど【遠視】を使ってるんだと思う
でも【遠視】で見える範囲には何も無いと思う
地平線を見通す目ホライズンアイ】は【遠視】よりも広い範囲を見れるからね

「こっち!なにか見つけた!」

「本当か!?」

 俺は先程見つけた場所に全速力で向かう
その際、一応周りに警戒はしておく
敵が近くにいるかもしれないからね
というか、いつ敵とバッタリ出くわすかわからないし…

 と思いつつ走っていると、本棚から何かが飛び出してきて慌てて止まるハメになってしまった
その何かは淡い光の粒を放つ鳥の姿をしていた

「精霊か…?」

 アスキルの声でこの鳥が精霊だとわかる
でもなんでこんなところに?
ていうか、さっき俺攻撃されたような気がしたんだけど…

 その予想は当たっていたようで鳥は光を放ち突進してきたのだ
慌てて回避するが鳥はそのまま上昇するとこちらに向かって光のレーザーを放ち始めた

「ひぃぃぃっ!あぶっ…!!」

 咄嗟に近くの本棚の影に隠れて防御すると同時に、本棚に光が着弾する
本棚に当たりドドドッと音を立てているのを見て、直撃したら無事じゃ済まないな…と思っていると別の事に気付く

(そうだ!アスキルは!?)

 先程までアスキルがいたであろうところに目を向けるとなぜか攻撃されていないアスキルが見えた
うぉい!!なんで攻撃されてないんだ!!ずるいぞ!!

「おい!大丈夫か!?」

「大丈夫じゃないにっ…」

 決まってるだろ!
そう言おうとしてソレと目が合った
ソレは、鳥と同じような光を放つ熊のような姿をして俺の目の前にいた

「………」

「………」


 ジーッと見つめ合うこと数秒
熊が動く…と同時に俺は横へ飛んだ

「ぎゃぁぁ!」

 俺が今までいたところに光の束が放たれるのが視界の端に見える
なんでやねん!!死ぬ!死ぬってば!!
攻撃したいならアスキルを攻撃しろよ!!なんで俺なんじゃい!!

「防衛用の精霊だ!気を付けろ!」

 アスキルがそんな事を言うけど、気を付けても向こうから勝手に攻撃してくるんだから関係無いわ!!
仕方ない…、このまま逃げてたら敵を追えなくなってしまう
精霊には悪いけど反撃させてもらう!

「【ダーク】!」

 俺の手から放たれた闇は熊の精霊を包み込み消し去った
同じように鳥の精霊も消し去る

「大丈夫だったか?」

「大丈夫じゃないに決まってるでしょ…」

 バクバクと激しい音を鳴らす心臓を落ち着かせながらアスキルに返事をする
精霊が現れる兆候が全くわかんなかったんだし、慌てるのも当然でしょうよ

 万能感知は使えてるのに精霊の気配がわからなかったのは問題だ
原因はわからないけど、このままでは進むのが大変になってしまう

「ていうかなんでアスキルは襲われなかったの?」

 周囲を警戒しながらそう問うと皇族だからだろう、と言われた
じゃあ俺はずっと狙われ続けるんかい!!ちくしょう!!

「…ん?」

 ふと近くの本棚に目をやるとそこには小さな何かが見えた…気がした
アスキルが周りを見ている間にそこに近付きジーッと見るとその何かは幻覚では無かった

(何かある…なんだろう?)

 グググッ…と近付いて本の表面のザラザラがわかるくらいまで来るとそれが術式だとわかった
本当に小さな…正直見逃してしまうくらいの大きさの術式で【魔眼】があったからこそ見えたのかもしれない

 その術式は、まるで蜘蛛の巣のように本に、本棚に、床に、周囲にと、張り巡らされていた
術式の規模は武器庫なんかと比較にならない
これだけの術式を構築するのも大変だが、維持するのも大変だろう
一体どうやってるのか…

 ていうか…多分だけど、ここにある術式が守護用精霊を召喚してるのかもしれない
となると、どこからでも精霊が攻撃してくるかもしれん…
ヤバいやつやん…

 それに精霊以外にも攻撃方法があるかもしれないし、どうしよう
アスキルは攻撃されないから安全で、俺も一応防御結界があるので無理矢理突破できるだろうけど結界が壊れないとは限らないしな…
それに精霊の弾幕の中を走るのはちょっと…


「どうする?ユウトは戻ってもいいぞ?」

 そんな事を考えている時、アスキルがそう困ったように言ってくる
いつもはツンツンしてるくせに今はちょっと心配しているような顔だ

「…大丈夫、行ける…行けるよ」

 俺は自分の心を落ち着かせるようにボソッと喋る
…アスキルは俺よりも不安だろうね
自分の国の問題だし、皇帝…父親が連れ去られてるんだから
しかも命の保証なんて無い状態で

 面倒臭くてイライラさせられるけど、アスキルの事は嫌いじゃないし助けてあげたい…かな、なんて…
それにウィアベルさんに任せてくださいって宣言しちゃったしなぁ
正直俺の方がアスキルよりも強いと思うし、これ…逃げる理由無くない?

「父親助けに行くんでしょ!?ならさっさと行こう!」

「あ、ああ…」

 どうせアスキルは攻撃されないんだから、俺は目的の場所に向かって走り出す
アスキルは最初ポカンとしていたがすぐに走って着いてきた

「あ…ありがとな…」

 ボソッと小さく…それでも聞こえた言葉に俺は何も言わず前だけを向いた


・・・


「これは…父さんの…」


 途中何回か精霊の襲撃はあったものの目的の場所まで辿り着いた俺達
床に落ちていたバッジのような物を拾い、アスキルがそう呟いた

「もしかしたらこの近くに」

 アスキルはそう言って周りを見回す
うむ…ここにアスキルの父親の所有物があるなら近くにいるかもね

俺はアスキルの腕を掴みこっちを向かせた

「そっちじゃない…こっち」

「え?」

 俺は、ある一点の方向を見つめたままそう伝える
地平線を見通す目ホライズンアイ】を定期的に使ってたけどここに来てついに見つけた

「そっちに父さんがいるのか!?」

「多分…ね」

 でもあそこに見えるのはアスキルの父親でも敵のような人物でも無い
でも確実にあそこにいる事はわかる

 俺が見ているその場所
この空間の中で不自然な程に広く何も無い場所
それは当然だろう
そこに大きな扉があるのだから

「行こうアスキル」

 まだ距離はあるけどゴールは見えた
もしかしたら戦いになるかもしれない
いや、戦いになるだろう

 俺は気を引き締めアスキルと共に走り出した






――――――――――――――――――――――――――――――

アオネコさんです!
お久しぶりです!
長い間、更新出来無かったので今回はその謝罪として2話ほど更新させていただきました


近況報告にも書きましたが家族の事で色々あり、更新が遅れてしまい申し訳ございませんでした!
そして待っていてくださいました読者の皆様に感謝いたします!
感謝感激雨あられです!もう豪雨でございます!


そしてお気に入りが1300件を突破いたしました!
ありがとうございます!
これからもチマチマでありますがやっていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします!


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