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天使救出編
招かれざる魔物
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オークキングとジャイアントオーガのダブルアタックによって危機的状況に陥った我々冒険者。
そして遂にカジェフさんに危機が……!!
しかし!そこに颯爽と現れた救世主!
その名は!
『……アルバ、正確に言うならちょっと遅いと思う』
『なにッ!?』
アルバが登場する事は分かってたからある程度の余裕はあったけど……助けるタイミング、カジェフさんとジャイアントオーガの最初のぶつかり合いの時でも良かったと思うわけ。
あの時、俺とルーヴァさんが魔法で介入しなかったらカジェフさん大怪我負ってたかもしれないんだから。
今は回復魔法使えないし、万が一があるかもしれないんだからやめて欲しいよね全く。
と、俺とアルバが会話してる間に周りは大騒ぎである。
「あれはなんだ!?」
「新しい魔物なのか!?」
「だがオーガを襲ったぞ?どうなってる!」
「あれは……白狼……?」
色々パニックになってるので説明をするべきだろうな。
オークキングも白狼の威圧感に手を止めて警戒してるので、俺も余裕を持ってアルバに視線を向ける。
周りの視線を集める中、アルバが口を開いた。
「我はアルバ!!つが……我が恩人の危機に助けに来た!」
そう叫ぶと尻尾を一振。
たったそれだけで周囲にいた魔物達が薙ぎ払われる。
下にいるジャイアントオーガが抜け出そうと藻掻いているが、アルバの力にビクともしない。
「恩人……だと?」
ルーヴァさんがポツリと呟くのが聞こえる。
ちなみにカジェフさんは既に治療の為に運ばれて行ったので問題無いだろう。
目をアルバに向けるとバチッと視線が合った。
するとアルバはオーガを後ろ足で吹き飛ばし、跳躍する。
瞬き一つの間に壁の上まで来たアルバは冒険者達の悲鳴やら警戒した声を無視して俺の横まで歩いてきた。
そして周りの人達を見渡し、声を張り上げる。
「我の自我を取り戻してくれたのがここにいるユウト殿である!我はこのつが……ユウト殿の助けとなるべく駆けつけたのだ!」
その声に、一斉に俺に視線が集まる。
一瞬ビクッとなったけど、気丈に振る舞い、アルバを見上げた。
変な言い間違いはあったけど、計画通りに事を進めているので良かった。
俺も練習した通りにやれば大丈夫だ。
俺は息を吸って驚いた演技をする。
「あ、あのときのーおおかみなんですねー、たすけてくれるなんておもいませんでしたー」
……俺、完璧じゃないか?
ちょっと噛んじゃった気がするけど、これ将来俳優いけるか?いけるんじゃないか?
むふふふ……。
《………》
賢者先生から何か言いたげな気配を感じたけど、作戦は無事に進んでるし大丈夫だと思うけどな。
「なに……?お前が恩人なのか……?」
ルーヴァさんが俺を見ながら驚いたように呟く。
周りの人も同じように驚きながら頷いている。
その言葉にアルバが肯定を返すと、ざわめきが大きくなっていく。
そんな中、再び口を開いたのはアルバだった。
「これから我も協力してやろう。その代わりお前達も全力を尽くし奴らと戦うがいい!!」
そして最後に吼えると魔物達に向かって飛びかかり、蹴散らし始めた。
それを見た冒険者達は、絶望から一転、希望を見出したとばかりに鬨の声をあげながら攻撃を再開する。
俺はそんな様子を見ながらウィリーに話しかけていた。
『それじゃあ何匹か送るけど、大丈夫だよね?』
『ガァ!』
『わかった、じゃあ何かあればスグに伝えてくれ』
ウィリーの了承を聞いてから通話を終える。
皆が戦っている隙を見て、賢者先生と相談しながら適切な魔物を決めて魔法を構築する。
「【氷の礫】【転移】」
魔物達に氷が雨のように降り注ぐ。
賢者先生が計算した通りに撃ち出された魔法は前線にいる冒険者達に一つも当たること無く、そしてアルバにも当たること無く的確に魔物に傷を与える。
そしてその氷の雨の中、複数の魔物が消えた事に誰も気付かない。
俺はその結果を見て頷く。
よし、作戦は成功だ。
後はこのままアルバがなんとかしてくれればオッケーだね。
あ、一応魔法で攻撃はするけどほら、あれだよ、魔力少ないしね?少しは休んでもバチは当たらないと言いますか……。
《再び投擲が来ます》
え?
賢者先生の警告にオークキングの方を見ると、既に両手で魔物を掴み振りかぶっている姿だった。
アルバの登場で攻撃の手を止めていたオークキングだったけど、我に返ったのか攻撃を再び開始しようとしていた。
え?これあかんやつやん。
「ブゥォォォォオ!!!」
オークキングの雄叫びと共に飛んでくる魔物。
俺はすぐさま魔法を構築し迎撃しようとする……が、それよりももっと早く反応した人がいた。
いや、人ではないか。
「甘いッ!!」
その場で跳躍したアルバが瞬時に尻尾を使い、一体の魔物を撃ち落としそのままもう一体に喰らいつき着地する。
その早業にオークキングは警戒感を滲ませ、手を止める事になった。
しかしその着地を狙っていたのか、アルバに迫る巨体。
ジャイアントオーガがアルバに向かって突進していく。
振るわれた腕は一撃で命を刈り取る程の破壊力を秘め、だがそれは地面を抉るだけに留まった。
「そんな愚鈍で当たるものか!」
「ガアァァッ!!」
回避した動きそのままに捻りを加えた尻尾の一撃をジャイアントオーガに振る舞うが、向こうも仰け反るように回避してから蹴りを入れてきた。
そして、同じタイミングで振り抜かれたアルバの脚と激しくぶつかり合い、衝撃波を生む。
そこから一進一退の攻防が始まってしまった。
俺はオークキングに注意を払いつつも魔法でアルバの戦いを支援する。
アルバの参戦で戦いは有利になったと思いきや、長時間の戦いや、オークキングの投擲やジャイアントオーガの咆哮などで随分戦力が減っていた。
なので、膠着状態に近い事になってしまっているのが現状である。
これはちょっと予想外。
アルバの参戦でもっと楽になると思ってたのに。
そんな事を考えていた俺は、アルバの言葉に意識を向ける事になった。
「ちぃ!生まれたばかりのクセに力だけは一人前だな!」
複数回打ち合った後、アルバが愚痴るようにそう呟く。
そこに気になる点を見つけた。
生まれたばかり……とはどういう事か。
そこで思い出す。
オークキング達を鑑定した時に感じた違和感。
それは、支配者階級であれだけの強さなのにレベルが低過ぎる事。
魔物も人もそうだけど、進化したってレベルが下がる事はない。
なのにキングオークもジャイアントオーガもレベルが1桁なのはおかしい。
まぁ、最初っから“キングオーク”や“ジャイアントオーガ”として生まれたなら別だけど。
……そうなのか?
オークから進化してってキングになったのではなく、そもそもキングとして生まれた……のか?
それって有り得るの?
ウィリーのように、ゴブリンを経てマスターゴブリンに進化するみたいなのが普通なのに。
《条件を満たした場合に限り支配者階級の魔物が生み出される事があります》
賢者先生からの回答があった。
その条件って何かという疑問にも賢者先生は律儀に答えてくれた。
一つは群れが大きくなった時。
これは群れが大きくなり、尚且つ統率する者がいない場合に群れを統率する為に自然に群れの中から進化を経ずに生まれる個体がいるらしい。
一つは支配者階級の魔物が産んだ時。
これは全てそうなるのでは無く、次世代の支配者として一体だけが支配者階級として産まれてくるらしい。
一つは環境が影響した時。
これは環境の変化によって生存活動が困難になった場合に、それを解決しようと支配者階級が生み出される事があるらしい。
これが賢者先生が提示してくれた条件。
そしてオークキングやジャイアントオーガがどれに当てはまるかというと、
《予測をするには情報不足です》
だそうだ。
ただ、可能性として高いのは三番目の理由らしい。
支配者階級が群れを離れ単独行動をするのは稀で、次世代の支配者を群れが単独行動させる理由もないからだ。
なので、環境の変化が一番の可能性なのだが……。
もしそうであるなら、オークキング達は住処で何かの変化があった事になる。
それにしては他の同族がいないのは変だけど……。
「ブオオオォォ!!」
「【水の槍】!」
って、考えてる暇は無いな。
とりあえずアルバを援護するのは止めて、オークキングに集中する。
オークキングは魔物を投擲するだけで、それを対処出来れば簡単に足止め出来る。
でももしオークキングまで前進してきてしまったら結構マズイ。
ジャイアントオーガよりは近接戦闘は強くないだろうが、耐久力が高いのでそこらの冒険者じゃ相手出来ないだろう。
早くアルバがジャイアントオーガを倒してくれれば問題無いんだけど……。
見たところ、ジャイアントオーガが無闇矢鱈に暴れ散らしているらしく中々手が出せないようだ。
というかジャイアントオーガ暴れすぎじゃない?
周りの魔物まで被害に遭ってるし……。
これって【鬼の身体】の効果で理性が削られてるせいか?
強そうなスキルなのにデメリットが酷いよな。
今もまたジャイアントオーガのパンチで魔物が吹っ飛んでいく。
その攻撃の隙を見ながらアルバが攻撃するが、まるで見えているかのように即座にジャイアントオーガが迎撃する。
理性が削られてるにも関わらず動きに無駄が無いように感じる。
《ジャイアントオーガのスキル【鬼の武技】の効果です》
え?そうなの?
賢者先生に聞くと、アクティブスキルである【鬼の武技】は自動攻撃技であるらしい。
発動すると接近してきた相手に対して自動的に攻撃をする事が出来るのだとか。
しかも攻撃補正が付いており、相手の防御をある程度貫通してダメージを与える事が出来るらしい。
え?めっちゃ強くね?
ただデメリットとしては、攻撃対象が敵味方関係無い事と、自動“攻撃”というだけで防御する事が出来ない事らしい。
え?めっちゃ駄目じゃね?
でもだからこそ、周りに味方がおらず相手に攻撃される隙を晒さないという今のジャイアントオーガの状況は結構厄介なのかも。
賢者先生が言うには範囲外から魔法などで攻撃すれば大丈夫らしいのだが、今の俺はオークキングの対処で手一杯でしてね?
……ん?
投擲された魔物を撃ち落としていると、感知範囲に何かが入ってきた。
しかも魔物達の群れの中を真っ直ぐ凄い速さで突っ切ってくる。
「……なに?」
ずっと向こうを見ても魔物達が流れてくるだけで、その中には感知してる存在はいない。
あれ?おかしい、視界にいないな。
もしかして透明人間的なやつ?
……!もしかして賢者先生が警戒してた敵対存在!?
感知ではわかってるから進行方向に魔法でも撃てばいいのか?
でも勝てるか?
今の俺は万全じゃないし。
だけどこのままだと謎の存在に攻撃されるかもしれない。
一応その時の為に防御でもしておかないと……。
《透明化の能力なら【魔眼】の効果で十分看破可能です》
あ、そういえば魔眼あったわ。
え?でもそれなら視界に見えるはずなんだけど?
感知範囲からして確実に視界に入ってくるはずなのに、魔物の群れの中にはそんなヤツは存在しない。
というか、距離が縮まって初めて気付いたけど、何かデカ……長くない?
正体不明の縦長の何かが接近中なんですが。
「ムッ!なにか来るぞ!」
アルバも気配に気付いたのか警告を飛ばしてくる。
それと同時に地面が震えてくるのが感じられた。
周りの冒険者が地面に視線を移してるのを横目に確認しながら、俺はオークキングの更に後方を凝視した。
やはり、見えない。
でも感知はしてる。
なら何処にいるのか、この振動で完全に理解した。
「下から来る!!」
俺の叫びと共に地面が一際揺れたかと思うと、オークキングがいた地面辺りが噴火したように土煙に包まれる。
オークキングや周りの魔物達が煙で見えなくなり、声も聞こえなくなる。
アルバはいつの間にか門の下の方にまで下がって来ており前方を警戒している。
理性を失いつつあるジャイアントオーガでさえ、攻撃の手を止めてジッと土煙の方を見ていた。
そしてゆっくりと土煙が晴れてくるとソレの全貌が見えてくる。
まるで大地からせり出した柱のようなその生物。
体長は俺が立っている壁を軽く超え、胴回りはオークキングが複数集まらなければ相手にならない程太く。
その大きさと迫力は、ジャイアントオーガの咆哮よりも効果的に魔物と冒険者達を動けなくさせた。
《キングワーム
レベル4
状態 健康
固有スキル
土蛇
大食い
産卵
パッシブスキル
振動感知
熱源感知
自己再生
痛覚軽減
恐怖無効
物理攻撃激減
魔法攻撃耐性
状態異常耐性
アクティブスキル
隠密
岩石魔法レベル1
称号
ワームの王
土の王者
称号からの追加補正
エネルギーがあれば単独で産卵が出来るので基本的に性行為の必要は無いが、稀に生き物を産卵用の苗床にすることがある》
即座に鑑定した結果がこれ。
四体目の支配者がここに現れた。
そして遂にカジェフさんに危機が……!!
しかし!そこに颯爽と現れた救世主!
その名は!
『……アルバ、正確に言うならちょっと遅いと思う』
『なにッ!?』
アルバが登場する事は分かってたからある程度の余裕はあったけど……助けるタイミング、カジェフさんとジャイアントオーガの最初のぶつかり合いの時でも良かったと思うわけ。
あの時、俺とルーヴァさんが魔法で介入しなかったらカジェフさん大怪我負ってたかもしれないんだから。
今は回復魔法使えないし、万が一があるかもしれないんだからやめて欲しいよね全く。
と、俺とアルバが会話してる間に周りは大騒ぎである。
「あれはなんだ!?」
「新しい魔物なのか!?」
「だがオーガを襲ったぞ?どうなってる!」
「あれは……白狼……?」
色々パニックになってるので説明をするべきだろうな。
オークキングも白狼の威圧感に手を止めて警戒してるので、俺も余裕を持ってアルバに視線を向ける。
周りの視線を集める中、アルバが口を開いた。
「我はアルバ!!つが……我が恩人の危機に助けに来た!」
そう叫ぶと尻尾を一振。
たったそれだけで周囲にいた魔物達が薙ぎ払われる。
下にいるジャイアントオーガが抜け出そうと藻掻いているが、アルバの力にビクともしない。
「恩人……だと?」
ルーヴァさんがポツリと呟くのが聞こえる。
ちなみにカジェフさんは既に治療の為に運ばれて行ったので問題無いだろう。
目をアルバに向けるとバチッと視線が合った。
するとアルバはオーガを後ろ足で吹き飛ばし、跳躍する。
瞬き一つの間に壁の上まで来たアルバは冒険者達の悲鳴やら警戒した声を無視して俺の横まで歩いてきた。
そして周りの人達を見渡し、声を張り上げる。
「我の自我を取り戻してくれたのがここにいるユウト殿である!我はこのつが……ユウト殿の助けとなるべく駆けつけたのだ!」
その声に、一斉に俺に視線が集まる。
一瞬ビクッとなったけど、気丈に振る舞い、アルバを見上げた。
変な言い間違いはあったけど、計画通りに事を進めているので良かった。
俺も練習した通りにやれば大丈夫だ。
俺は息を吸って驚いた演技をする。
「あ、あのときのーおおかみなんですねー、たすけてくれるなんておもいませんでしたー」
……俺、完璧じゃないか?
ちょっと噛んじゃった気がするけど、これ将来俳優いけるか?いけるんじゃないか?
むふふふ……。
《………》
賢者先生から何か言いたげな気配を感じたけど、作戦は無事に進んでるし大丈夫だと思うけどな。
「なに……?お前が恩人なのか……?」
ルーヴァさんが俺を見ながら驚いたように呟く。
周りの人も同じように驚きながら頷いている。
その言葉にアルバが肯定を返すと、ざわめきが大きくなっていく。
そんな中、再び口を開いたのはアルバだった。
「これから我も協力してやろう。その代わりお前達も全力を尽くし奴らと戦うがいい!!」
そして最後に吼えると魔物達に向かって飛びかかり、蹴散らし始めた。
それを見た冒険者達は、絶望から一転、希望を見出したとばかりに鬨の声をあげながら攻撃を再開する。
俺はそんな様子を見ながらウィリーに話しかけていた。
『それじゃあ何匹か送るけど、大丈夫だよね?』
『ガァ!』
『わかった、じゃあ何かあればスグに伝えてくれ』
ウィリーの了承を聞いてから通話を終える。
皆が戦っている隙を見て、賢者先生と相談しながら適切な魔物を決めて魔法を構築する。
「【氷の礫】【転移】」
魔物達に氷が雨のように降り注ぐ。
賢者先生が計算した通りに撃ち出された魔法は前線にいる冒険者達に一つも当たること無く、そしてアルバにも当たること無く的確に魔物に傷を与える。
そしてその氷の雨の中、複数の魔物が消えた事に誰も気付かない。
俺はその結果を見て頷く。
よし、作戦は成功だ。
後はこのままアルバがなんとかしてくれればオッケーだね。
あ、一応魔法で攻撃はするけどほら、あれだよ、魔力少ないしね?少しは休んでもバチは当たらないと言いますか……。
《再び投擲が来ます》
え?
賢者先生の警告にオークキングの方を見ると、既に両手で魔物を掴み振りかぶっている姿だった。
アルバの登場で攻撃の手を止めていたオークキングだったけど、我に返ったのか攻撃を再び開始しようとしていた。
え?これあかんやつやん。
「ブゥォォォォオ!!!」
オークキングの雄叫びと共に飛んでくる魔物。
俺はすぐさま魔法を構築し迎撃しようとする……が、それよりももっと早く反応した人がいた。
いや、人ではないか。
「甘いッ!!」
その場で跳躍したアルバが瞬時に尻尾を使い、一体の魔物を撃ち落としそのままもう一体に喰らいつき着地する。
その早業にオークキングは警戒感を滲ませ、手を止める事になった。
しかしその着地を狙っていたのか、アルバに迫る巨体。
ジャイアントオーガがアルバに向かって突進していく。
振るわれた腕は一撃で命を刈り取る程の破壊力を秘め、だがそれは地面を抉るだけに留まった。
「そんな愚鈍で当たるものか!」
「ガアァァッ!!」
回避した動きそのままに捻りを加えた尻尾の一撃をジャイアントオーガに振る舞うが、向こうも仰け反るように回避してから蹴りを入れてきた。
そして、同じタイミングで振り抜かれたアルバの脚と激しくぶつかり合い、衝撃波を生む。
そこから一進一退の攻防が始まってしまった。
俺はオークキングに注意を払いつつも魔法でアルバの戦いを支援する。
アルバの参戦で戦いは有利になったと思いきや、長時間の戦いや、オークキングの投擲やジャイアントオーガの咆哮などで随分戦力が減っていた。
なので、膠着状態に近い事になってしまっているのが現状である。
これはちょっと予想外。
アルバの参戦でもっと楽になると思ってたのに。
そんな事を考えていた俺は、アルバの言葉に意識を向ける事になった。
「ちぃ!生まれたばかりのクセに力だけは一人前だな!」
複数回打ち合った後、アルバが愚痴るようにそう呟く。
そこに気になる点を見つけた。
生まれたばかり……とはどういう事か。
そこで思い出す。
オークキング達を鑑定した時に感じた違和感。
それは、支配者階級であれだけの強さなのにレベルが低過ぎる事。
魔物も人もそうだけど、進化したってレベルが下がる事はない。
なのにキングオークもジャイアントオーガもレベルが1桁なのはおかしい。
まぁ、最初っから“キングオーク”や“ジャイアントオーガ”として生まれたなら別だけど。
……そうなのか?
オークから進化してってキングになったのではなく、そもそもキングとして生まれた……のか?
それって有り得るの?
ウィリーのように、ゴブリンを経てマスターゴブリンに進化するみたいなのが普通なのに。
《条件を満たした場合に限り支配者階級の魔物が生み出される事があります》
賢者先生からの回答があった。
その条件って何かという疑問にも賢者先生は律儀に答えてくれた。
一つは群れが大きくなった時。
これは群れが大きくなり、尚且つ統率する者がいない場合に群れを統率する為に自然に群れの中から進化を経ずに生まれる個体がいるらしい。
一つは支配者階級の魔物が産んだ時。
これは全てそうなるのでは無く、次世代の支配者として一体だけが支配者階級として産まれてくるらしい。
一つは環境が影響した時。
これは環境の変化によって生存活動が困難になった場合に、それを解決しようと支配者階級が生み出される事があるらしい。
これが賢者先生が提示してくれた条件。
そしてオークキングやジャイアントオーガがどれに当てはまるかというと、
《予測をするには情報不足です》
だそうだ。
ただ、可能性として高いのは三番目の理由らしい。
支配者階級が群れを離れ単独行動をするのは稀で、次世代の支配者を群れが単独行動させる理由もないからだ。
なので、環境の変化が一番の可能性なのだが……。
もしそうであるなら、オークキング達は住処で何かの変化があった事になる。
それにしては他の同族がいないのは変だけど……。
「ブオオオォォ!!」
「【水の槍】!」
って、考えてる暇は無いな。
とりあえずアルバを援護するのは止めて、オークキングに集中する。
オークキングは魔物を投擲するだけで、それを対処出来れば簡単に足止め出来る。
でももしオークキングまで前進してきてしまったら結構マズイ。
ジャイアントオーガよりは近接戦闘は強くないだろうが、耐久力が高いのでそこらの冒険者じゃ相手出来ないだろう。
早くアルバがジャイアントオーガを倒してくれれば問題無いんだけど……。
見たところ、ジャイアントオーガが無闇矢鱈に暴れ散らしているらしく中々手が出せないようだ。
というかジャイアントオーガ暴れすぎじゃない?
周りの魔物まで被害に遭ってるし……。
これって【鬼の身体】の効果で理性が削られてるせいか?
強そうなスキルなのにデメリットが酷いよな。
今もまたジャイアントオーガのパンチで魔物が吹っ飛んでいく。
その攻撃の隙を見ながらアルバが攻撃するが、まるで見えているかのように即座にジャイアントオーガが迎撃する。
理性が削られてるにも関わらず動きに無駄が無いように感じる。
《ジャイアントオーガのスキル【鬼の武技】の効果です》
え?そうなの?
賢者先生に聞くと、アクティブスキルである【鬼の武技】は自動攻撃技であるらしい。
発動すると接近してきた相手に対して自動的に攻撃をする事が出来るのだとか。
しかも攻撃補正が付いており、相手の防御をある程度貫通してダメージを与える事が出来るらしい。
え?めっちゃ強くね?
ただデメリットとしては、攻撃対象が敵味方関係無い事と、自動“攻撃”というだけで防御する事が出来ない事らしい。
え?めっちゃ駄目じゃね?
でもだからこそ、周りに味方がおらず相手に攻撃される隙を晒さないという今のジャイアントオーガの状況は結構厄介なのかも。
賢者先生が言うには範囲外から魔法などで攻撃すれば大丈夫らしいのだが、今の俺はオークキングの対処で手一杯でしてね?
……ん?
投擲された魔物を撃ち落としていると、感知範囲に何かが入ってきた。
しかも魔物達の群れの中を真っ直ぐ凄い速さで突っ切ってくる。
「……なに?」
ずっと向こうを見ても魔物達が流れてくるだけで、その中には感知してる存在はいない。
あれ?おかしい、視界にいないな。
もしかして透明人間的なやつ?
……!もしかして賢者先生が警戒してた敵対存在!?
感知ではわかってるから進行方向に魔法でも撃てばいいのか?
でも勝てるか?
今の俺は万全じゃないし。
だけどこのままだと謎の存在に攻撃されるかもしれない。
一応その時の為に防御でもしておかないと……。
《透明化の能力なら【魔眼】の効果で十分看破可能です》
あ、そういえば魔眼あったわ。
え?でもそれなら視界に見えるはずなんだけど?
感知範囲からして確実に視界に入ってくるはずなのに、魔物の群れの中にはそんなヤツは存在しない。
というか、距離が縮まって初めて気付いたけど、何かデカ……長くない?
正体不明の縦長の何かが接近中なんですが。
「ムッ!なにか来るぞ!」
アルバも気配に気付いたのか警告を飛ばしてくる。
それと同時に地面が震えてくるのが感じられた。
周りの冒険者が地面に視線を移してるのを横目に確認しながら、俺はオークキングの更に後方を凝視した。
やはり、見えない。
でも感知はしてる。
なら何処にいるのか、この振動で完全に理解した。
「下から来る!!」
俺の叫びと共に地面が一際揺れたかと思うと、オークキングがいた地面辺りが噴火したように土煙に包まれる。
オークキングや周りの魔物達が煙で見えなくなり、声も聞こえなくなる。
アルバはいつの間にか門の下の方にまで下がって来ており前方を警戒している。
理性を失いつつあるジャイアントオーガでさえ、攻撃の手を止めてジッと土煙の方を見ていた。
そしてゆっくりと土煙が晴れてくるとソレの全貌が見えてくる。
まるで大地からせり出した柱のようなその生物。
体長は俺が立っている壁を軽く超え、胴回りはオークキングが複数集まらなければ相手にならない程太く。
その大きさと迫力は、ジャイアントオーガの咆哮よりも効果的に魔物と冒険者達を動けなくさせた。
《キングワーム
レベル4
状態 健康
固有スキル
土蛇
大食い
産卵
パッシブスキル
振動感知
熱源感知
自己再生
痛覚軽減
恐怖無効
物理攻撃激減
魔法攻撃耐性
状態異常耐性
アクティブスキル
隠密
岩石魔法レベル1
称号
ワームの王
土の王者
称号からの追加補正
エネルギーがあれば単独で産卵が出来るので基本的に性行為の必要は無いが、稀に生き物を産卵用の苗床にすることがある》
即座に鑑定した結果がこれ。
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