28 / 62
ディランとユアンの深夜会議~大聖女の大誤算~
しおりを挟む
深夜の工場でその会議は静かに行われていた。
「で、デキが全然違うってのは、本当なのか?」
深刻そうな表情を浮かべるディランの言葉に、ユアンもやはり深刻そうにうなずく。
「見た目は全く一緒ですし、形状も味も寸分も違わないんですが……、全く別物としか言いようがありません」
ユアンはそう言って、ティースプーンに少しの梅肉エキスをすくい取り、ディランの手の甲に数滴垂らす。
「それがリタ達が作った梅肉エキスです」
「うん。不味いが、食べ過ぎてムカついていたが、爽やかな気分になるな」
その反応にユアンは満足げに頷く。工場で作られた物も決して手を抜いているわけではなく、質のいい商品であることには変わりないのだ。
「で、こちらがグレイス様の作った梅肉エキスです」
やはり同じように数滴甲に垂らした梅肉エキスを舐めた瞬間、ディランの表情が大きく変わる。
「なんだこれ……。爽やかになるってレベルじゃねぇぞ。胃がスッキリして食欲までわいてきやがった」
「使っている梅が違うのかと思いましたが、同じ梅でもリタ達が作った梅肉エキスにはこれ程の効能はないんです」
「何が違うんだ」
「私も不思議でしたので、グレイス様に目の前で作っていただいたのですが、特別変わった工程もありませんでした。どちらかというと工場長の方が慣れた手つきで作業していたぐらいです」
ユアンはその違いを見極めようと、グレイスだけでなく工場で行われている製造過程にも目を光らせたが大きな違いは発見できなかったようだ。
「このことは?」
「まだ誰にも……」
「とりあえずグレイスが作った商品は回収するしかねぇな」
「えぇ……この二つを同じ商品として販売しては、問題です」
ディランはグレイスの商品を高級商品として売り出すことも考えたが、グレイスが工場に毎日訪れて作らないかぎり、商品として数を用意することはできない。
「んだよ。使えんだか、使えねぇんだか」
「何にしろ、商品として販売経路にのせる前に発見できてよかったです。今後はグレイス様が製造にかかわらないように注意しておかなければいけませんね」
「知らせてくれて助かった。よし、目途がついたってことで、飲み直すか」
「え?! さっき、胃の調子を悪くするために、吐きそうになるぐらい飲んだり、食べたりしたじゃないですか」
そんな悲鳴に近い抗議の声を上げるユアンを無視して、ディランは逃がすまいと肩をガッと乱暴に抱く。
「胃がスッキリしたのはいいんだが、飲み足りなくなっちまった」
「ディラン――明日も私は仕事があるんですよ!!」
酔っ払い二人による深夜の極秘会議だったこともあり、その重大な事実は明るみにでることはなく、秘密裏に処理された。だが後に二人はこの時、この事実をグレイスに打ち明けていれば……と後悔することになる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【御礼】
お気に入り登録、本当にありがとうございます。
「面白かった!」「お勧めのおばあちゃんの知恵があるよ!」という方は感想をいただけると嬉しいです。
「で、デキが全然違うってのは、本当なのか?」
深刻そうな表情を浮かべるディランの言葉に、ユアンもやはり深刻そうにうなずく。
「見た目は全く一緒ですし、形状も味も寸分も違わないんですが……、全く別物としか言いようがありません」
ユアンはそう言って、ティースプーンに少しの梅肉エキスをすくい取り、ディランの手の甲に数滴垂らす。
「それがリタ達が作った梅肉エキスです」
「うん。不味いが、食べ過ぎてムカついていたが、爽やかな気分になるな」
その反応にユアンは満足げに頷く。工場で作られた物も決して手を抜いているわけではなく、質のいい商品であることには変わりないのだ。
「で、こちらがグレイス様の作った梅肉エキスです」
やはり同じように数滴甲に垂らした梅肉エキスを舐めた瞬間、ディランの表情が大きく変わる。
「なんだこれ……。爽やかになるってレベルじゃねぇぞ。胃がスッキリして食欲までわいてきやがった」
「使っている梅が違うのかと思いましたが、同じ梅でもリタ達が作った梅肉エキスにはこれ程の効能はないんです」
「何が違うんだ」
「私も不思議でしたので、グレイス様に目の前で作っていただいたのですが、特別変わった工程もありませんでした。どちらかというと工場長の方が慣れた手つきで作業していたぐらいです」
ユアンはその違いを見極めようと、グレイスだけでなく工場で行われている製造過程にも目を光らせたが大きな違いは発見できなかったようだ。
「このことは?」
「まだ誰にも……」
「とりあえずグレイスが作った商品は回収するしかねぇな」
「えぇ……この二つを同じ商品として販売しては、問題です」
ディランはグレイスの商品を高級商品として売り出すことも考えたが、グレイスが工場に毎日訪れて作らないかぎり、商品として数を用意することはできない。
「んだよ。使えんだか、使えねぇんだか」
「何にしろ、商品として販売経路にのせる前に発見できてよかったです。今後はグレイス様が製造にかかわらないように注意しておかなければいけませんね」
「知らせてくれて助かった。よし、目途がついたってことで、飲み直すか」
「え?! さっき、胃の調子を悪くするために、吐きそうになるぐらい飲んだり、食べたりしたじゃないですか」
そんな悲鳴に近い抗議の声を上げるユアンを無視して、ディランは逃がすまいと肩をガッと乱暴に抱く。
「胃がスッキリしたのはいいんだが、飲み足りなくなっちまった」
「ディラン――明日も私は仕事があるんですよ!!」
酔っ払い二人による深夜の極秘会議だったこともあり、その重大な事実は明るみにでることはなく、秘密裏に処理された。だが後に二人はこの時、この事実をグレイスに打ち明けていれば……と後悔することになる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【御礼】
お気に入り登録、本当にありがとうございます。
「面白かった!」「お勧めのおばあちゃんの知恵があるよ!」という方は感想をいただけると嬉しいです。
48
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
処刑された王女は隣国に転生して聖女となる
空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる
生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。
しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。
同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。
「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」
しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。
「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」
これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。
【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。
雨宮羽那
恋愛
聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。
というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。
そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。
残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?
レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。
相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。
しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?
これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。
◇◇◇◇
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます!
モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪
※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。
※完結まで執筆済み
※表紙はAIイラストです
※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる