ロマン砲主義者のオーバーキル

TEN KEY

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問1 パターンを解明せよ

問1-2

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 「ほざけ」

 みずちの笑えない冗談に冷たく返す。
 俺はゆっくり歩みを進めて電波塔の足元に立った。
 古ぼけて電線もつながっていない忘れられた電波塔から、その朽ちた雰囲気とは真逆の明るい声が響く。

 「あ、やっぱさっきのここからってバレた? あ、いいよ答えなくて。顔でわかるから」

 中段、地上から4メートルほどの高さでみずちは足をぷらぷらさせながら座っていた。
 彼女のゲームアバターはスマートなスタイルで切れ長の目に腰まで垂れたロングヘアーの戦乙女ヴァルキリー。トレードマークの燃えるような赤い髪は、彼女の性格と嗜好を見事に表している。

 「わかっていただけたようで。じゃ、いくぞー」

 俺は「じゃ」のあたりで指をピストルの形にして引き金を引くようなそぶりをする。
 そのアクションをトリガーに、「いくぞー」と言うころには指先から高速で尾を引く水流が撃ち出されていた。
 会話をしながらウィンドウ上でこっそり操作してアクティブ化させていた【涙の散弾】だ。
 姑息? 戦略と言ってくれ。
 【涙の散弾】は一本の太い水流からすぐに無数の水滴に分散し、一滴一滴にダメージ判定のある極小の弾丸となり目標に襲いかかる……はずだったのだが、突如現れた鉄壁にことごとく弾かれてしまった。

 「あんっ?」

 間抜けな声が漏れてしまった。
 頭上に現れた巨大な鉄壁は、鉄塔の半ば――彼女の足元から地表と水平に

 「いつも食らってりゃ私も学習します……よっ! っと」

 頭上に現れた壁は、シャキン! という甲高い音とともに、段々と大きく……いや、これ落ちてきてるぞ!
 
 「ゲェーッ!!」

 ヒキガエルのものまねではない。俺の叫び声だ。
 いや、あと数瞬飛び退くのが遅ければかわいい我が身は潰れたヒキガエルのものまねと化すところだった。
 四つん這いで無様に転がる俺に、次々と無慈悲な攻撃が飛んでくる。
 ごろごろと転がりながら避ける、避ける、食らう。食らう。食らう。

 「ちょいやっ! えいやっ! そぉいっ!」

 無駄にかわいいボイスを発しながらみずちが撃ち続けているのはバスケットボールサイズの火球。一発一発がそこそこ高いダメージで、しかも延焼でフィールドにもダメージ判定を作り出す【燃え上がる愛】だ。ふざけた名前とは裏腹にハート型で直線的に飛ぶ火球は近・中距離でオールマイティに使えるので愛用するプレイヤーも多いスタンダードなバレットカードだ。
 欠点は、フィールドに燃えうつった炎には使用者自身にもダメージ判定があるところか。自分も相手も燃やし尽くす攻撃が「愛」とは皮肉なものだ。
 俺は頭頂部を燃やしながらしばし愛について考えたが、このままでは状況は好転しないのですばやく体勢を立て直し、即座にかまいたちのような小さな烈風を飛ばす【すきま風】で反撃する。
 だがその攻撃は軽く横にステップされ避けられてしまった。

 「もうちょっと寝てていいよ。その間に火の海作っとくから」

 へらへら笑う彼女を正面に見据える。
 萌える乙女、否、燃える鬼神おとめのあだ名は伊達じゃない。なぜ鬼神と書いておとめと読むのかと問いただした事があるのだが、彼女は「訂正させた」とポツリと言ったきり口をつぐんでしまった。怖くてそれ以降その件に触れたことはない。
 アバター名の「火香カーカ」っていうのもどっかの火の女神の名前だそうだ。頭はからっぽなように見えて意外と徹底しているところが彼女らしい。
 
 「燃え死ぬ前に、俺にはやりたいことがあるんでね」

 俺はそう答えるとその場で跳躍し、【空中跳躍】でさらに高く。手札でもう1枚控えていた【涙の散弾】を頭上に打つ。
 【涙の散弾】は副次効果で火のフィールド効果を打ち消すこともできる。自らの身体と周囲に広がっていた火はみるみるうちに消えていく。だが、無防備に空中に跳んだ俺を黙って見ている彼女ではない。

 「ばーんっ!」

 5つの星を相手に堕とす【フォーリンスター】だ。星はデフォルメされた形ではなく、表面に凸凹と小さなクレーターがあるリアルな隕石なのが小憎たらしい。
 レイルドスターに連なる「スターシリーズ」のバレットカード版で、特徴は5つの星がすべて対象者に向かって墜落していく……つまり追尾機能付きの鬼畜性能なこと。しかも着弾と同時に爆発するおまけ付きである。
 これは障害物がなく身動きも取れない空中では完全な詰みになりうるチョイスをされてしまったが、このカードが撃たれることは予測済みだ。
 【フォーリンスター】の弱点は弾速が遅く、迎撃も可能であること。
 つまり――。
 
 「はたき落としてしまえばどうということはない」

 【我力の叩き伏せ】

 俺の振り下ろす手と連動して空中に浮かび上がる大きな仮想の手のひらに叩き落とされた星々は、彼女の頭上に逆襲のごとく墜落……はせずにすべて爆散する。

 噴き上がる爆炎に煽られながらもなんとか無事に着地すると、鬼神が炎の中からぬっと現れた。

 「やるじゃん」

 彼女は黒煙と炎にまとわれながら、全くその背景に似合わぬ明るい笑顔でニカッと歯を見せて笑った。
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