ロマン砲主義者のオーバーキル

TEN KEY

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問1 パターンを解明せよ

問1-4

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 そこからの試合ゲームは苛烈だった。
 押しているのは圧倒的に彼女の方で、俺は防戦一方になる。
 もうお互いの位置を見失いようが無いような近距離戦だと、手数と対応力の上で強力なバレットカードを多数有するあちらのデッキのほうが根本的に優位だ。
 頭より先に身体が動く彼女のようなタイプが最大限の力を発揮できるスタイルでもある。

 だが、この状況になるもう1つの大きな原因は両手で抱えるこの【卑弥呼の銅鏡】のせいだ。
 「物理以外のどんな攻撃だろうと何回でも反射できる万能の盾」を作るカードが弱いと言われる理由がここにある。
 盾として作られているわけではないので持ち手がなく、それなりに大きいこの鏡を常に手元におこうとするとせいぜい片手しか使えなくなるのだ。
 そうなると、アクティブ化の操作を片手で行い、その後の起動アクションをまたその片手で行う羽目になる。目まぐるしく状況が変わる近距離戦ではそのタイムラグは致命的な差を生んでしまう。

 ならばアクションを諦め鏡で攻撃を反射し続ければいいのでは? と思うかもしれないが、そうもいかない。先程のような不意打ちならばたまには反撃となりうるが、相手も馬鹿ではない。見えている反射攻撃に対し、直線的な攻撃ばかりをするはずがないのだ。
 上下左右、反射をしにくい範囲攻撃など多彩な攻め方で攻略しようと襲いかかり、こちらといえば動き続ける相手に対して入射角と反射角を計算して四方から来る攻撃に対して鏡を構え続けなければならない。
 当然相手に向かって最適な反撃になる可能性は低く、この「延々と攻めをいなし続けるだけ」の状況に陥るのだ。

「おらおらどしたー! もう終わりかー!」

 謎の体育教師キャラなのか、ふざけた低音ボイスでオラつきながらみずちが炎弾を撃ち込んで来る。
 たまらず後ろに下がると、背中に何かがぶつかった衝撃。

「かかったね?」

 正面にどや顔のみずち。背後にはさっきまではなかったはずの「鉄壁」。
 彼女の【拒絶の証】だ。指定した場所から高さ数メートルの鋼鉄で出来た壁を生み出すガジェットカードで、屋内フィールドなどでは非常に便利に働く。
 だが、あれが指定できる距離はせいぜい使用者の足元から1メートル以内だったはず。俺の背後なんて彼女から20メートルほどは距離があるのになぜ?
 しかし状況が思考を許してはくれない。
 今度は俺の右手、左手、そして正面と四方を囲うように壁が作られる。しかも壁は40度ほどに傾き、上への回避も同時に狭めていく。

「はいドーン!」

 足元からマグマが現れた。【地獄釜】だ。このカードは出現したマグマに身体の一部が触れていると、その対象者をマグマから現れるの無数の腕で取り込み、ダメージを与えたあとに上空に勢いよく吐き出すという一連の攻撃をする。
 マグマに触れないことだけが唯一の回避条件だが、今回は対応が遅れたため既に間に合わない。
 俺は引きずり込まれ、超高熱によるダメージを受け、鉄壁が消えたあとの空に向かって高く打ち上げられた。その衝撃で鏡は手から取りこぼしてしまい、視界の隅で彼女がキャッチしたのが見えた。

 ライフゲージは残り2割を切っている。もう猶予は残されていない。
 彼女の次の攻撃は? 空中で身体を捻り地上に目を向けると、そこにみずちの姿はなかった。

 「え?」

 消えた。まずいまずいまずい!

 まだ手札にはもう1枚用意してあった【卑弥呼の銅鏡】があるので反射しようと思っていたのに、どこから攻撃が来るのかわからないのでは1手遅れる。
 彼女はおそらくこの展開を見越した、先程のコンボから確実にゲームを決める攻撃ができるようなデッキを組んできたのだ。

 考えろ、このあとみずちは何をする? 最後は何で決めるつもりだ?
 あと俺の2割のライフを吹き飛ばしうる攻撃。それはバレットカードでは不可能だ。バレットカードは使いやすい反面そこまでの威力は出ない。そうなると、威力も大きいが制限のあるショットカード。もしくは出が非常に遅いが効果が派手なスペルカードだ。
 出が遅いだけではなく、詠唱によってエフェクトが見えたり声が聞こえてしまうスペルカードの可能性は低い。
 消去法でショットカードだ。彼女がゲーム中に使ったショットカードは1枚だけ。それ以外だとしたらもうお手上げだ。
 俺は覚悟を決め、【卑弥呼の銅鏡】をアクティブ化させ手に持つ。

 きらり、と地上に一筋の線が走るのが見えた。
 やはりあれは【レイルドスター】だ。もう初撃の光のラインは引かれた。あとはその筋に沿って流星スターが流れ、俺の着地と同時にその場所に到達するだろう。そして星は大きく爆発する。
 運命は決まった。
 俺が着地する寸前、星が地面に着弾し――

 キィン! と光が飛び散るエフェクト。着弾地点に落としておいた銅鏡に当たった星は反射され、またどこかの空へと向かって飛んでいく。

 「うげっ」

 無様な姿で着地。危ないところだった。

 「ええええぇぇぇぇーーーー?」

 素っ頓狂なみずちの声が飛び込んでくる。

 「なんでなんでなんでーーー? 絶対当たったじゃん今の! 鏡はこことそこにあるのに! なんでぇー!?」

 姿を現した彼女は俺の手の中の銅鏡を見て驚いている。
 そう、俺は持っている銅鏡とは別の銅鏡を地上に設置したのだ。
 答え合わせをしてやりたいが、まだゲームは終わっていない。
 
 逆転の手は揃った。
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