ロマン砲主義者のオーバーキル

TEN KEY

文字の大きさ
35 / 92
問3 条件による分岐を辿れ

答3-6

しおりを挟む
「よう、来たぞカグツチ」

 俺は屋根の上に這い上がると、かかってこいよ、とボディランゲージを決めてカグツチを挑発する。
 ネクロのAIは独自のアルゴリズムに従って人間じみた思考を獲得しているため、こういうのが非常に効く――などということは全くないので、ただの自己満足だ。
 男の子が屋根の上に登ったら、やっぱテンションも上がってついノッちゃうよね。

「おいりょーちん、カッコつけてる時間はねーぞ!」
「やべ、見てた?」
「見てるわっ! お前のアクションからだろ!? もう俺らの準備は出来てるぞ!」

 本堂を見下ろすと、3人は残りの雑魚を掃討しながら俺の方を向いていた。

「んじゃ、よろしくお願いしまーす!」

 俺は手札から【ピコピコハンマー】をアクティブ化する。
 まずはこれを……っ!

「そぉらッ!」

 ぐるん、と砲丸投げの要領で放り投げた。

 【ピコピコハンマー】
 アバターの2倍ほどの大きなおもちゃのハンマーを模したガジェットカードだ。
 使用方法はただぶん殴るだけ、というシンプルな武器だ。特徴は大きさの割に重量が非常に軽い事で、誰でも簡単に振り回せる。
 その割にエネミーにはしっかり見た目の質量通りのダメージ判定があるので、まあ普段はあまり使わないタダ強ただただ強いカードに類する。

 ぐおんぐおんと回りながら、ハンマーはカグツチにはかすりもせず遥か彼方へ飛んでいく。
 これは予定通りだ。なんのステータス修正も無く、そんな遅い攻撃が上空の動き回るエネミーに当たるわけがない。

 俺は飛んでいったハンマーとカグツチを結ぶ延長線上にすばやく移動すると、既に起動していた【強引な誘引】のアクションを行う。
 右手の指先をくいっと曲げる。効果によって引っ張られたハンマーが、高速で俺に向かって
 それはつまり、その間にいるカグツチの背後から大質量の物体が襲いかかるのと同義だ。

「よっしゃクリーンヒットオォォ!!」

 ハンマーはカグツチの背中から豪快に当たり、ピコッとまた間抜けな音を響かせた。

 AIは特定のアクションパターンを持ち、それとは別に奴の視界に映る攻撃は避けるように動いているのは確かだった。
 まさか、後ろからの攻撃までがプログラミングされているとは考えにくい。というかこんなん避けられたら詰む。

 大打撃が入ったおかげか一瞬止まっていたカグツチに向かって、下からは彼女が射出されていた。

「そーらもう一回だぞー!」

 下から飛んできたみずちがもう一発ハンマーを叩き込むべくカグツチに襲いかかる。
 しかしそれはわずかなタイミングのズレで回避されてしまった。

「ありゃ?」
「いや、ナーイスみずっち!!」

 避ける方向に先回りするように、チョッキの剣が走っていた。
 サクサクッ、と4本の剣がカグツチの左半身に刺さる。
 グワオオ、とカグツチがうめき声を上げた。
 前口上の時はよく喋るくせに、いざ戦闘が始まると全くの無口になっていたカグツチなだけに、ちょっとびっくりする。

「ほーい今度こそぉー、もう、いっ、かい!」

 外れて通り越してしまったものの、引力によって落ちてきたみずちが、その体をぐるんと前転させながらカグツチの脳天に向かってハンマーを振り下ろした。

 ビィゴッ! と、あまり聞き慣れない音が出た。ハンマーの音バグか?
 あまりのパワーにカグツチの首が胴体に少しめり込んでいる。
 みずちは落下せずにカグツチの体に生えたチョッキの剣にぶら下がって掴まると、至近距離から攻撃カードを連打した。

「ごめん! これでロストアクション! 降りるよー!」
「いや、よくやったみずっち!」

 これでようやくカグツチのライフは半分を切った。
 まだ半分か。なんとかここから落とせるか?

 と、俺の心配をよそに、カグツチが纏っていた炎が消えた。

「おっ?」
「ステージ変化、入りました!」

 下からミューミューの声が届く。見下ろすと、本堂で燃え盛っていた炎が嘘のように消えていた。
 同時に、カグツチも目を閉じてゆっくり落下していく。

 なるほど、条件はライフの半分か。
 降りたら奴も本気を出すってところだろ? 空飛ぶ敵にありがちなやつだな。
 だが、そうはさせない。

「ちょーっと待ってくれよ、カグツチさん?」

 俺は四肢を地につけ、吠える。

 【獣王の咆哮】

 あー、ミューミューにも見られた。やだなー、これ。

 俺が吠えている間はボーナスステージだ。
 宙で止まったカグツチに、攻撃は当て放題になる。
 チョッキとミューミューが手札の攻撃カードを惜しげもなく切っていく。
 光線が、水流が、爆発がカグツチを襲う。
 いいねぇ、ゴリゴリ削れてるぞ?

 俺が息を切らし、咆哮が止まった。
 まだだ。あと2割。

「りょーちん、やっちゃえ!」

 あと僅かで本堂に降り立つカグツチに、俺は上から飛び降りながら【強引な誘引】で手元に戻してあったピコピコハンマーを放り投げる。
 そしてタイミングよくハンマーの上に自分が来るようにジャンプすると、【踏み込む独歩】をアクティブ化させた。

 これ、自分で殴るよりダメージ出るんだよね、実は。

 武器型のガジェットカードは、攻撃カードの効果が上乗せ出来る。
 【斜斬】などの斬撃系カードは剣のガジェットカードを持った状態で振るうと、威力がその分加算された上に属性一致のボーナスがさらに乗ったダメージが出る。
 【踏み込む独歩】のダメージの属性は「打撃」だ。手に持っているわけではないが、ピコピコハンマーに足が触れている状態でこれを撃つと――

 ビゴンッ! とまたバグったような大きな音を出しながらハンマーがカグツチに打ち据えられた。
 俺もこれで手札を使い切った。

 全員ロストアクション状態で、カグツチが焦げが残る木の床にみしりと降り立つ。
 これで終わってくれれば楽だったんだけどなぁ。

 1割を切った僅かなライフを残し、カグツチの瞼がゆっくり上げられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

処理中です...