ロマン砲主義者のオーバーキル

TEN KEY

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問6 等速で進む線と線の交点をさぐれ

問6-5

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 とはいえ。

 ペアデッキの作成はとにかく難航した。
 結局無難なもの以外のデッキもいくつか見たが、ピンとくるものは無かった。
 それでも基本を少し崩してシナジーに振ったデッキは面白そうだったので、まずはそれをコピーさせてもらい、何はともあれ一度模擬戦をしようということになった。
 幸い、俺の使う側のデッキは手持ちのカードに少し買い足すだけで事足りるレベルだった。ミューミューはデッキの半分ほど必要なカードがあったが、居るメンツでカードを交換したら何だかんだ揃ってしまった。
 いや、玻璃猫組からの貢ぎたい欲求を満たしてしまったと言うべきか。

 なにはともあれ、急造デッキが完成した。
 練習相手は孤狼丸と前田さんの臨時ペアだ。彼らには仮想敵たる無難なデッキで挑んでもらった。
 急造デッキVS臨時ペアで、索敵無しの正面戦闘を3回。

 結果はまぁ、互角だった。

 ……結果だけを見ればだが。

 1勝1敗1分。
 成績とは裏腹に、内容は全くよろしく無かった。

 初戦は引き分け。
 お互い探り探りで撃ち合い、押し始めた俺たちから主導権を取り戻すべく前田さんが味方も巻き込む大技を放った。
 結局それは前衛の孤狼丸を潰そうと二人掛かりで行ってしまった俺たちの作戦ミスで、前田さんまでまとめて自滅したのは使い慣れてないカードによるただの前田さんのミスだった。

 2戦目は負け。
 今度はそれぞれ1対1の状況を作ろうとしたが、相手にそれを気取られ、逆に俺が2人に囲まれてしまった。
 そういう「引き」のテクは孤狼丸の得意な戦法だし、前田さんの戦況コントロールは俺たちのペアの結びつきより上手く働いていた。
 人間相手に1対2の戦闘は、ゲームの性質上非常に厳しい。
 マシンガン相手にボルトアクション……いや、火縄銃で挑むくらいには厳しい。
 結局俺は長く持たず潰され、戦闘では容赦の無い2人がミューミューもあっさり潰して終わった。

 流石に、この負け方は俺たちペアにはダメージが大きかった。
 お互いそれなりに動けている自負があったし、1対1じゃ相手に負けない自信もあった。
 それは油断ではなく、分析。単なる戦力比較だ。
 ならば負ける理由はない。

 ――だが負けた。

 急造とはいえ、ペア戦経験のある前田さんとはこうも差があるのかと驚いた。
 さっきの負けは、ようは二人を分断すべく動いたことこそが大きな「隙」だったのだ。
 隙を見せた方が負ける、とはこのことか。
 理解はしていても、身に染みていなかった。当たり前だ。ペア戦経験は0なのだから。

 昨日、ミューミューがパーティ経験が無い故に大きなミスを連発していたのを思い出す。
 愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶという。
 俺たちは経験も無く、歴史も知らぬただの「初心者」だった。

 脱却したい。ならば学べ。

 俺たちは彼らの戦いから一つでも多くを吸収すべく3戦目に挑んだ。

 対戦はスムーズに進んだ。
 デッキにも慣れ、お互いにフォローし合いながらも、それぞれの個の力で押していく展開。
 二人で一人を狙うのも、リターンは大きいがリスクも大きい。
 ようやくそこに気づき、とにかく手堅く、そして隙なく俺たちは戦った。
 結果は、無事勝利。

 得たものは無かった。

 無難に隙なく戦えばそりゃ無難に強い。
 ただただその事実の再認識になってしまった。

 俺は戦闘が終わり、テーブルにつくなりはっきり言った。

「ペア戦、めちゃむず

 ミューミューは何かを考えているような複雑な顔をしている。
 悪くはないけど、良くもない。でもこれで行ったら行ったでいい感じになるんじゃないか。
 と、そんなところで悩んでいるのではなかろうか。
 不安と希望が等しく天秤にかけられたその表情に向かって、俺は良い提案が出来なかった。

「ホントに難しいですねぇ」
「いやいや、いい戦いでしたぞ!」

 孤狼丸と前田さんが口々にフォローしてくれる。
 だが今欲しいのは具体的な次の案だ。一時凌ぎの慰めでは無い。

「俺はこのままじゃダメだと思う。今勝てたのは、前田さんと孤狼丸のペアもまだ強固じゃないからだ。結局戦い自体は個の力でなんとかしちゃっただけで、強い『ペアの戦い方』じゃないと思う」
「……私も同意見です。悪いのは私たちか、はたまたこのデッキか……」
「残念だけど、多分両方」

 デッキは正直イマイチだった。シナジーはあったが、やはり噛み合わなくても戦えるようになっているため、結局順番にカードを使うだけの面白みの無い戦い方になってしまった。
 ハマれば多少上振れするが、そうでなければ少し弱い無難なデッキ。そんな印象だ。
 どっちにしろコピーデッキを使う予定も無いし、もちろん手を加える予定だったが、それにしても地が弱いデッキじゃダメだ。考え直す必要がある。

「まだチョッキも戻って来ないし、一旦保留で。今居ないメンツにも相談したいし」
「そう、ですね。分かりました」
「とりあえず俺はまだランクも上げなきゃいけないから、今から自分のランク戦行ってくるよ」
「了解です。私はもう少し皆さんと練習しています。お付き合いして頂いても?」

 まぁ、二人にとっては願ったりかなったりだろう。返事は大きなイエスだった。

 俺は彼らに別れを告げると、フィールド内でも少し離れた、さらさらと流れる小さな川のほとりに腰かけた。
「フライングエクスプレス」と名付けられたデッキリストを開く。
 リストの横に【光弾:小】を表示させた。

 今日はどっちにしろ長くランク戦に潜る予定はない。
 どうせ連戦は無理なのだ。多少の負けは許容出来る。
 ならば、その対戦も有効に使うべきだ。実験、実証、実践。それはそれで楽しい。
 すでに完成と言ってもいいこのデッキに、【光弾:小】を入れる余裕なぞ本来なら無い。
 だが、俺はそこから八面六臂の活躍をしてきた【刀身の苦無】を抜き、同じ枚数の【光弾:小】を入れた。
 誰がどう見ても弱体化デチューンだ。射出時間は変わらず、威力は落ち、コンボ性能は消える。唯一違うのはカードのコストくらいか。
 それも微々たる差だ。デッキは100ジャストのコストだった為に、逆に少し余裕が出てしまった。

 まぁいいや、何が起こるかわからんし。

 俺は軽い気持ちで「フライングエクスプレスfeat.ライトバレット」とデッキ名を付け、ランク戦に向かうべく立ち上がった。

 そう、このゲームは何が起こるか分からない。
 その何気ない選択が、意外な結果を生み、新たな潮流を作り出す事も、まだこの時の俺は知らない。

 俺のデッキの中で、誰にも頼られなかったそのカードは、自らの力を眠らせていた。
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