ロマン砲主義者のオーバーキル

TEN KEY

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問7 溢れ出す限界までの容量を計算せよ

答7-3

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「ジェットハンマー、やっぱり抜きませんか?」
「えぇっ!? 今気持ちよく決まったのに!?」
「試合では躊躇したら負けですから思いっきり振りましたけど、心臓バクバクでした。あのタイミングで『自壊』引いてたら下手すれば逆転負けの可能性ありますからね」
「それを決めるのもまたロマンなんだけど……うーん、じゃあ抜く?」
「代わりにピコハンの方が私は嬉しいです」

 それもやむなしか。
 結局使いづらく感じるカードを入れるくらいなら、使いやすいカードの方が良いに決まっている。
 こうして試合では糞ハンが減っていくのだろう。ああ無情。

「かと言って、ピコハンじゃデッキには合わないかな。結局はあの破壊力を求めて入れてたわけだし、ショットカードやスペルカード以外で低コストであの規模の破壊は難しいなぁ」
「と言っても必ず成功する訳じゃないですから、この破壊狙いのパーツだけ見直しませんか?」
「そうだね。じゃ、組み替えで」

 あっさりと折れる。いや、別に折れてはいないのだ。
 そもそも、このデッキは流動性が高く、色々と試せるので作った変幻自在性が売りなのだから。

「でも、このアプローチは意外とありそうで無かったですよね。面白いし、可能性を感じます」
「多分、前提としてプレイヤースキルが『攻撃重視』と『支援重視』に分かれてる人が多いからじゃないかな。使ってみてひしひしと感じたのは、両方やるのってやっぱ難しいっていう当たり前の部分だったし」
「とても難しく感じているようには見えませんでしたけど?」
「そりゃ、らくらく使えてる風に見せてたからね」
「演技ですか?」
「めっちゃ頑張って頭働かせてました。甘いもの食いたい」
「あとでご褒美にあげますよ、ケーキ」
「転送デリバ? トレードチケット?」
「ゲーム内で」
「無味無臭のデータ!!」

 まさかのイミテーションだった。

 こうやって雑談しながらも、手はせこせこと動かしてデッキに入れたいカードをどんどんと並べていく。今回のキーワードは「隙があるようで隙が無い。ちょっと隙を見せるデッキ」だ。
 新しい発想の素とは、経験と記憶に由来するものだ。俺は模擬戦を振り返った。







「あ! ミューちゃん発見!」
「1人ですよ!? 囲みましょう!」
「待った! 多分どっかにりょーちんがいるハズ」

 おぉ。正解。
 いつの間にかみずちが俺の思考をある程度トレース出来るようになっている。
 まず状況に流されず「疑う」こと。俺が口を酸っぱくして言った甲斐があった。

「でも今しかチャンス無いですよ? さっさと行きましょう!」

 孤狼丸はアホだ。まだまだだな。

「確かに。何かされた時に考えれば良いか!」

 一瞬で意見が変わっている。みずちはやっぱりアホのままだった。喜んだ俺が馬鹿だったのだ。
 こうして、あっさりと食いついてきたみずちと孤狼丸ペアは、パッと見1人のところを見つかって焦っているのミューミューに襲いかかる。

「かくごー!!」
「痛くしないですから!」

 定石どおり、左右から挟み込む。
 孤狼丸に狙いを絞ったミューミューは、そちらに迎撃の姿勢を向ける。
 後ろを取ったみずちは嬉しそうにバレットカードを撃とうとしたように見えたが、突然くるりと俺の方に振り返った。

「そこだー!!!」

 ひぇっ。
 かなりの的確さで俺の隠れていた茂みに、みずちが放った火球が刺さり燃え広がる。
 ミューミューに使う予定だった【現象への抵抗】で事なきを得たが、危ないところだった。
 【現象への抵抗】は延焼や毒によるスリップダメージをすべて軽減出来るステータスカードだが、採用率は低い。治すわけではなく、一時的に効かなくなるだけで先延ばしに過ぎないからだ。
 一応味方に当てた方が効果時間が長いのでお試し採用期間という事だったが、一応は使えるところを見せてくれた。要検討。

「あれぇ? おっかしいな。あそこな気がしたんだけど」

 燃えているのにダメージは無いので、俺が隠れていたとは気づかれていないようだ。良かった。
 なんとか攻撃をやり過ごすと、またミューミューに意識を戻す。彼女は既に孤狼丸を叩き伏せていた。

「コ、コロちゃん!?」

俺と同時に気付いたみずちも驚いている。少し目を離しただけなのに何が。

「すいませぇん……」

 孤狼丸が情けない声を上げる。一応まだライフゲージは残っているが、プレイヤースキルの差がむごいということがあっさり証明された。

「でも、玻璃猫様の手札は使わせました。間違いなく『主砲』です!」
「はいはいっ!」

 ハイは1回! といつものようにツッコミたい衝動を俺はぐっと抑える。
 作戦は至ってシンプル。
 「主砲型」「支援型」に分かれるプレイヤーが多いということは、相手がそうであると勘違いしているプレイヤーもまた多いということ。
 それを逆手に取り、デッキを「主砲を持つ支援型」と「支援が出来る主砲型」にしたのだ。
 本来はあまり良い手では無いが、複数の効果を持つカードを多く入れてなんとか組み上げた。

 だからそうして俺に背を向けたとき。
 それこそが本当の隙なのだ。







 俺はあのとき自分が浮かべたどや顔を思い出す。

「やっぱ、1対1の状況から不意を突いてどちらかが『ごっつぁん』出来るカードがスペル以外で欲しい」
「ですね。実は私がピックアップしておいたこれはどうですか? 以前試してあったカードとも相性は良さそうですし、コスト面で研究の余地があるカードの上に、デッキの多様性にも貢献するかも」

 そうして彼女が提示したカードは、俺の中にすとんと落ちた。
 何故見落としていたのだ。それだ。それしかない。

「ミューミューさん、これ……」
「どうですか? 一応これとのシナジーがあるカードが、既に採用されている中にも何枚かあって――」

 この瞬間が好きだ。ひらめきの稲妻に頭を撃ち抜かれる快感が俺を貫く。
 俺はこれを求めてこのゲームを遊んでいるのだ。

「ハマった。完璧だ」
「えっ?」
「デッキ、多分出来たよ」
「ウソ、はやっ」

 めちゃくちゃ素で「はやっ」って言ったので俺がびっくりしていると、無表情で肩をスパンと叩かれた。照れ隠しか?
 いやでも今はそんな事に気を回している場合じゃない。
 モヤモヤしていた気持ちが一気に晴れ渡るのを俺は感じていた。
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