ロマン砲主義者のオーバーキル

TEN KEY

文字の大きさ
90 / 92
問7 溢れ出す限界までの容量を計算せよ

答7-6

しおりを挟む
 振り下ろされた攻撃は、まばゆい光を放ちながら俺の脳天に狙いを定めて落ちてくる。
 俺はとっさの事に反応しきれず、頭への致命傷クリティカルは避けたものの大きくダメージを受ける。
 ショットカード系の斬り下ろす大技に【朽梛】を重ねたダメージ増強が入っている。1発とはいえもらうべきでは無かった攻撃だ。

 俺は小さく舌打ちすると、すぐに状況判断に頭を回す。
 周囲に居た人形は俺もろとも斬撃の余波を食らって破壊されている。
 その影響で俺の周囲に少し空間が出来たが、それは水が流れ込むように一瞬で人形の群れで塗りつぶされた。
 すぐに戦闘再開。まずい、レミングスを見失った。
 俺は人形共の相手をしながら彼女の痕跡を探す。何かが強く光を反射した。

 俺は背後のNPCを蹴り飛ばし、その位置に自分の体を引き入れる。
 目の前には刀の切っ先。人形達の影から手と【朽梛】だけが飛び出ている。それは手応えがないと見るやすぐに引っ込んだ。

「なるほどね……」

 同じようなやりとりが何度も行われる。
 レミングスの攻撃は以前よりも鋭かった。
 ただでさえ人形どもに邪魔をされるのに、その隙間から煌めく銀閃はほとんどがクリティカル狙いだ。なんと恐ろしい。
 まるで永遠に援軍が来続ける上に、単体も強大なボス戦をやらされているかのような気分になる。
 そんなものオフラインでやったらクソゲーもクソゲー。難易度を上げておけば面白いとでも思ってるのかと突っ込まれる典型的なクソバランスゲーだ。
 だが、ここではそれが許される。
 そもそも最初のスペルを妨害出来なかったこちらが悪いのだ。俺にとってクソゲーになったのは相手が1枚上手だったからで、文句は言えないだろう。

 だがこのままというわけにも行かない。俺は逆転の手を打つべく、彼女に話しかけた。

「レミングスさん、久しぶりです! この間はどうも!」

 返事は無く、代わりの俺の胸部を狙った攻撃が飛んでくる。刀だけではなく、こう合間に普通のバレットカードを仕込んでくるあたり隙が無い。

「ちょ、ちょっと話しませんか!?」
「あぁん? 今戦闘中だぞ!」

 おっと返事があった。俺はアクティブ化してあった【花鼓はなづつみ】を撃つ。
 ぽんっ! と小気味良い音をたてて、狙い通りなら彼女の足元に大輪の花が咲いているはずだ。
 それはうまく行ったようで、人形達の隙間からむくむくと起き上がる巨大な花に乗せられ、彼女は雌しべに足を取られ転んだ姿で持ち上げられた。

「お返事ありがとうございまーす!」
「だぁっ! もう!」

 足に絡んでいた蔦のような雌しべを斬りはらいながらレミングスが立ち上がる。その正面に俺の【焼夷の息吹】を当てた。燃え上がる花弁に包まれ、小さな悲鳴が聞こえた。
 周囲に燃えるモノがなければ、自分で作ってしまえば良いのだ。
 レミングスが延焼ダメージに気を取られている間に、まとめて燃えている人形を蹴飛ばして包囲を抜ける。
 ようやく元の進行方向側に飛び出した。

 俺は遠方に意識を集中する。
 これだけ追い詰める為の手を打っておきながら、俺への攻撃がNPCとレミングスだけというのは不自然だ。

 クルーエルはどこにいる?

 どこからか彼が【艶やかな芳香】を当ててきたはずだ。
 本来ならそれほど離れていない場所からしか使えないはずなのに、俺の認識外、ミューミューの索敵範囲外から攻撃してきた。
 レミングスが唱えたのではない。あのカードは遮蔽物越しには使えないので、アーケードの屋根の上からでは使えない。
 ならば、アーケードの正面側か背後側のみ。背後にミューミューが隠れていることを考えると、答えは正面側しかない。
 今までは雑然とした戦闘で狙いにくかっただろうが、包囲を抜け出し、俺と彼の間に遮蔽物が無くなったこのタイミングなら。

 俺の予想通り攻撃は来た。
 しかし大技の可能性も考えていた俺の「正面から攻撃が来る」という予想通りではなく、正面に立ちふさがった「壁」が彼の攻撃だった。

「「え?」」

 炎から抜け出したレミングスと俺の声が重なる。
 振り向いて彼女と目を合わせた。

「えーっと……」
「……私ごと?」
「みたいですよ」

 俺たちの目の前、アーケードの入り口を埋めるように塞いだ【飛空剣の護り】が、ゆっくりと前進を始める。地面は固いコンクリ造りで、以前のように簡単には「下」に逃げられない。

 逃げるにしろ、迎え撃つにしろ、レミングスの存在が邪魔だ。俺は警戒して彼女の武器に目を向けるが、俺の攻撃がうまく行ったようで、その手に握った【朽梛】は燃え尽きて残骸と成り果てている。
 彼女もそれに気付いたのか手に持ったゴミを放り捨てると、にっこりと笑った。

「私のために死んで?」
「嫌です」

 がっし、と彼女が飛びかかって俺の肩を掴んだので、俺もレミングスの肩に手を伸ばす。

 俺たちはカードを使って打開しようとはせず、取っ組み合ってどちらかがどちらかの肉壁になるように迫りくる壁側に押し付けようとし、くるくると社交ダンスのように回る。
 そのついでに群がるNPCは弾き飛ばす。こいつらを盾にしても良いのだが、なんか癪なのでやらない。というか、そろそろ助けて玻璃猫様。

 俺の願いが通じたのか、ようやく頼れる仲間ミューミューからの援護が届いた。

 轟音。
 同時に剣の壁に俺たちが余裕で抜けられるくらいの大きな穴が空いた。
 いや、うにゃああという声がかすかに聞こえたか? 彼女の【獣王の咆哮】はあまり見る機会が無いので見たかったような、四肢を地につける姿は見たくないような。
 まあいいや。

「何いちゃいちゃしてるんですか?」
「してません」

 随分減った人形を破壊して包囲を蹴散らしながら、ミューミューが合流した。いいタイミングだ。

「げ、ミューミュー」

 レミングスは俺たち2人が揃ったと見るや、すぐに俺の肩から手を離し逃げようとしたので、俺は逃さぬように力を込める。

「まーだ、おしゃべり、してませんよ?」
「待った! 今ここでごちゃごちゃやってるとあいつが――」

 そう言い終わる前に、俺とレミングスはまとめてまばゆい光線に飲み込まれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

遠すぎた橋 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 3】 -初めての負け戦 マーケットガーデン作戦ー

take
SF
千年後の未来。ポールシフトによって滅亡の淵に立たされた人類は、それまで築き上げた文明を失いいくつかの国に別れて争いを繰り返していた。唯一の「帝国」に産まれ育った少女ヤヨイは、アサシンとなった。  ついに帝国はチナ王国に宣戦を布告した。  陸軍特務少尉に任官したヤヨイも総力戦の渦中に身を投じる。無線の専門家でも武術の手練れでもない、多くの部下を指揮して新たな戦いに臨むヤヨイは空挺部隊指揮官として敵地に降下する。ヤヨイを密かに慕い陰ながら支えるリヨンは一人敵地に潜入し機甲師団の進軍を援け、孤立した空挺部隊を救おうとするのだが・・・。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...