ロマン砲主義者のオーバーキル

TEN KEY

文字の大きさ
92 / 92
問7 溢れ出す限界までの容量を計算せよ

答7-8

しおりを挟む
 「距離延長」という効果を別のカードに与えるステータスカードはいくつかの種類があるが、どれも限定的で使用が難しい。
 カードの攻撃にはそれぞれ弾速のようなステータスがあるので、予め相手の行動を予測して撃たなければならないし、あまり弾速の遅いものだと視認してから避けることも出来てしまう。
 なので単に効果範囲が伸びるだけで強いわけではない。
 だが、それはそれ。単に「効果範囲が伸びるだけで強い」カードを使えばいいだけの話だ。

 そういった遠距離攻撃に特化させたデッキはシングル戦でも使われるので知っている。「移動砲台サイクルキャノン」というデッキがあるし、パーティーなら「射手アーチャー」と呼ばれるジョブデッキなんかが代表的だ。
 俺の組んだ「サーティーンリスペクト」もその手のデッキだが、遠距離の攻撃を収束させて一撃必殺級にしてぶち込むというちょっと狂ったコンセプトだったので同じようで同じではない。
 
 しかし、と俺は思い返す。

 今まで撃たれた攻撃を頭の中に並べる。
 距離延長が入っていそうなカードは、ある。だが、それは【飛空剣の護り】の設置だけだ。他のカードは視認範囲でさえあれば問題なく使える。この視認範囲というのは画面内でプレイヤーを「認識しているかどうか」という判定なのだが、このフィールド中央にある「舞台」には視認範囲を広げられる特殊な施設が設置されいてるのだ。
 だからこそ俺はそれを優先確保項目にしていたのだが、相手の行動が早すぎた。障害が配置されているはずの舞台を真っ先に制圧し、その上ですぐに俺たちを発見、攻撃を仕掛けたという事になる。

 そうまでして舞台が欲しかったのは、必ず長距離からの先制攻撃を仕掛けたいということ。
 なぜだ?
 普通に考えれば、それはクルーエルさんの遠距離攻撃を活用させたいからだ。
 しかし遠距離と中距離が使い分けられるというのなら、それなりの近さで戦っても良いのだ。だがそうせず、遠距離のみで攻撃してきたのは、何の理由が?
 ――そこまで考え、俺はようやく彼らの作戦にたどり着いた。

 遠距離攻撃を活かしたいから、舞台を確保したのではない。
 遠距離攻撃しか無いとに、舞台を確保したのだ。

 【艶やかな芳香】は俺を足止めしたいと「思わせるため」。
 【飛空剣の護り】は距離延長で設置したと「思わせるため」。
 それ以外の攻撃も、レミングスのそれらしい立ち回りも、全て伏線だ。
 彼は近くに居ないと思い込んだ俺たちが、遠距離からの攻撃が無いと不審がる前に、中距離の大技を当てるために。
 さっきの【虚空穿】だけでは、まだ距離伸張による攻撃だと思いこむところだった。

「既にクルーエルさんが近くに居る! ミューミューさん、気をつけて!!」
「!? ……!!」

 すぐにミューミューもピンと来たようだ。嫌らしい戦い方は俺の十八番おはこだ。向こうも面白い手を打ってくる。

 彼のデッキには、「距離延長」の効果のカードはおそらく無い。
 仲間が設置した壁でも【サイコキネシス:ウォール】で問題なく動かせる。あの【飛空剣の護り】は自分で出した癖にそうとは思わせないように一芝居打ったレミングスのカードだったんだ。

「え、いや、い、いないよ?」

 レミングスが焦ったのか、笑ってるような困ってるような変な顔でド下手な演技をしてきた。アドリブには弱いな。

 狙われるなら、当然俺だろう。
 普通なら、自らの身可愛さに守りに入るかも知れない。
 だがこれはペア戦。重要なのは、自らのライフではなくチームの勝利。それを忘れないことが肝要だ。

 俺は攻撃に転じる。レミングスに飛びかかり、苦手な近接戦闘を挑む。
 レミングスが笑ったのが見えた。それならそれで彼女は願ったり叶ったりの展開なのだろうか。でも、俺は無策で襲いかかったのではない。

「まとめて!!」
「はい!!」

 小気味よい返事。俺を迎撃するべく、レミングの手が伸びる。

 直線的な攻撃に見えるだろう? 俺は【死んだふり】をアクティブに。

 【死んだふり】
 起動したプレイヤーは体から力が抜け、倒れ込んでしまう。ゲーム上ライフを失ったプレイヤーは光の粒へと消えてしまうが、その「死亡エフェクト」が完全に消えるまで対戦相手の画面上では使用したプレイヤーのライフ表示は0になり、まるで敗北したかのように見える。

 相手の意表を突くにはうってつけのカード。けれども使い所が限定されすぎていてうまく使いこなすのは難しい。
 でもうまく使いこなすというのは、【死んだふり】を死んだふりに使わなくても良いと気づくかどうかだと俺は思う。
 このカードのもうひとつの能力。どんなスピード、体勢からでも「死亡エフェクト」のモーションに移ること。

 俺は彼女の攻撃ののために真正面で突如地面に倒れ伏すという通常では不可能な軌道でアバターを動かす。

 レミングスが撃ったバレットカードは俺には当たらなかった。
 そしてミューミューの撃った【石化術】が俺とレミングスを飲み込む円のエフェクトを描いたのは同時だった。
 俺とレミングスは、外界から遮断された空間の中で完全に停止した。

 「石化」の状態異常はプレイヤーのあらゆる行動を制限する。だが同時に、無敵の体も手に入れる。
 有名なゲーム魔法でいうところの「アス○ロン」だ。
 ダメージを全て受け付けなくなり、しかし体は不動となる。
 そして【石化術】の発動中は、その効果範囲円内に影響を与える何らかの効果も全て消え失せる。
 
 だから動けないのを良いことに悪さも出来ない。
 出来るのは、ただ残りの2人の戦闘を見るだけだ。

 【石化術】と同時に、更に撃たれたもうひとつの攻撃がミューミューを捉えていた。
 光る刃が彼女を穿っている。ミューミューのライフが大きく欠損した。

 ようやく姿を見せたクルーエルさんは、あいも変わらず何を考えているか分からない無表情さで、次の攻撃を放つ。
 ライフはミューミューが不利。しかし状況は五分。

 そして俺の「準備」は最高の状態でスタートした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

遠すぎた橋 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 3】 -初めての負け戦 マーケットガーデン作戦ー

take
SF
千年後の未来。ポールシフトによって滅亡の淵に立たされた人類は、それまで築き上げた文明を失いいくつかの国に別れて争いを繰り返していた。唯一の「帝国」に産まれ育った少女ヤヨイは、アサシンとなった。  ついに帝国はチナ王国に宣戦を布告した。  陸軍特務少尉に任官したヤヨイも総力戦の渦中に身を投じる。無線の専門家でも武術の手練れでもない、多くの部下を指揮して新たな戦いに臨むヤヨイは空挺部隊指揮官として敵地に降下する。ヤヨイを密かに慕い陰ながら支えるリヨンは一人敵地に潜入し機甲師団の進軍を援け、孤立した空挺部隊を救おうとするのだが・・・。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...