婚約者は無神経な転生悪役令嬢に夢中のようです

宝月 蓮

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6.転生無神経悪役令嬢の突撃

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 マーヤとエレノアがベネディクトとユージンの二人と交流を開始してから一ヶ月程が経過した。
「なるほど。スリジエ公爵領には海産物を燻製にする技術を確立したのね。その燻製にした海産物、ウィステリア公爵領で広めたら流行ると思うわね」
「ウィステリア公爵領産の柑橘類はリースブラン帝国でも人気だ。それに、私の父もウィステリア公爵領産のレモンを使用した果実酒が好物でね」
 図書室にて、マーヤとベネディクトはお互いの領地のことを話していた。そしてその隣でエレノアはユージンに刺繍を見せている。
 マーヤはベネディクトと話していると心が弾み、もっと話をしたいと思うようになった。
 オスカーに対しては絶対にこんな気持ちを抱かなかっただろう。
 家同士の話し合いがゆっくりと進んでいるが、まだマーヤとオスカーの婚約は解消されていない。
 早くオスカーと婚約解消したいことをエレノアに愚痴を言うと、エレノアも同じくグレンとの婚約解消が進んでいない状況だったので共感された。
 エレノアもグレンよりユージンといる方が楽しいと思っているようだ。
 しかし、マーヤもエレノアも一応婚約者がいる身なので、不貞だとは思われないよう異性と二人きりにならないようにしたり、距離感は気を付けている。
 ちなみに、ベネディクトとユージンはマーヤ達と同い年で、まだ婚約者がいない。

「じゃあ我々は次、向こうの校舎で授業だ」
「ええ。私とエレノア様はこの校舎で授業だから、会うのはお昼休みかしら」
「ああ、そうなる」
 マーヤとエレノア、ベネディクトとユージン、次の授業は男女で校舎が異なるので一旦別れることになる。
「エレノア嬢、また君の刺繍を見せてくれるかい?」
「ええ。新作をお見せ致しますわ、ユージン様」
 エレノアとユージンはすっかり打ち解けており、ユージンは砕けた口調になっていた。
「マーヤ様、行きましょうか」
「そうね、エレノアさん。ではベネディクト様、ユージン様、またお昼休みに」
 こうしてマーヤとエレノアは次の授業がおこなわれる教室へと向かう。
 その時、マーヤはふとある集団が目に入った。
 アミーラ達である。

「アミーラ。次の授業は君がいないだなんて寂しいな」
「まあ、アレクシス様ったら。私も寂しいですが、またすぐ会えますわよ」
 王太子のアレクシスに対し、馴れ馴れしい様子だ。
 通常公の場で、王太子に対しては殿下と呼ばなければならないが、アミーラは「アレクシス様」と呼んでいるのだ。
 それに対し、周囲にいた令嬢達は眉をひそめている。
「俺としてもアミーラ嬢がいた方が良いと思ってる」
「私もです」
「僕もですよ。アミーラ嬢がいればその場が華やぎますし」
 オスカー、グレン、サイモンもアミーラと別の教室であることを寂しげに嘆いているようだ。
 マーヤはポカンとしながら相変わらずだなと思っていたところ、いつの間にかアミーラはアレクシス達と別れて一人になっていた。

「アミーラ様、王太子殿下をあんな風に親しげにお呼びしているだなんて」
「アミーラ様、相変わらず婚約者以外の異性とも距離が近いですこと」
「アミーラ様は皆様のお手本となるべきはずなのに、あれではねえ」
「一度婚約者以外の異性との距離が近いことを指摘しましたら、アミーラ様は何と仰ったと思います? 『全員友達よ。何が悪いの?』ですって」
「まあ、呆れましたわ。あんなのが未来の王妃だなんて」
「オスカー様とグレン様には婚約者がおりますのにね」
「身分と発明以外何も良いところがありませんわよね」
 アレクシス達がいなくなり、周囲の令嬢達はアミーラのことを悪く言い出した。
 アレクシス達がいると、厳しく注意されたり面倒なことが起こるのだ。
 アミーラが一人になったので、令嬢達は溜まっていた鬱憤を吐き出すかのようだ。

「アミーラ様、嫌われているのね」
「まあ、仕方がないと言えば仕方がないことです。わたくしは確かにアミーラ様に命を救われた身ですが、あの方の態度は……」
 エレノアはそこで口を噤む。
 色々と言いたいことはあるようだが、周囲の令嬢達のようにアミーラのことを悪く言ってしまうと婚約者グレンと双子の弟サイモンが色々と面倒なことになってしまうのだ。
 マーヤも一応まだ婚約者であるオスカーが色々と面倒なので、何も言わないようにはしている。
「エレノアさん、授業が始まりますし、行きましょうか」
「そうですわね、マーヤ様」
 マーヤはエレノアを連れ、授業がある教室へと向かうのであった。

 しかしマーヤとエレノアは知らない。
 一人になったアミーラが二人のことを何か言いたげな様子で睨んでいたことを。





◇◇◇◇





 その日の昼休み、学園の食堂にて。
「マーヤ様、ランチの後はまた図書室かサロンでユージン様達とお話しましょうか」
 心なしかワクワクした様子のエレノアに対し、マーヤはクスッと微笑む。
「そうね、エレノアさん。その為にも、少し急いでランチをいただきましょう」
 マーヤもベネディクトと話せることに、心躍らせていた。
「あの」
 その時、マーヤとエレノアの前にとある人物が立ちはだかる。
 アミーラである。
 いつもとは違い、アレクシス達を引き連れておらず一人である。
 恐らくアレクシス達の授業がまだ終わっていないのだろうか。
「何でしょうか?」
 マーヤは思わず警戒していまう。
 一体アミーラは自分達に何の用なのだろうか。
 何となく面倒な予感がした。
「貴女達、オスカー様とグレン様の婚約者よね?」
「ええ、一応そうですが」
「はい。……グレン様とは婚約している状態ではあります」
 思いっきり顔をしかめているアミーラに対し、マーヤもエレノアも警戒しながらおずおずと頷いた。
「そうよね。それに、エレノア様の方は、サイモン様の姉でもあるわよね」
 どこか責めるような口調のアミーラである。
「ええ……」
 マーヤはそう頷くエレノアの方をチラリと見た。エレノアは困惑している表情だった。
(アミーラ様、一体何なのかしら? 私達は特に何もしていないわ。なのに、どうしてそんなに私達を責め立てるようなの?)
 マーヤはそれが疑問で仕方がなかった。
「じゃあ貴女達がオスカー様やグレン様やサイモン様の手綱を握っておいて欲しいわ」
 やや甲高いアミーラの声が食堂に響く。
 そのせいでマーヤ達は注目を浴びていた。
(……この方は……一体何を言っているの?)
 マーヤの水色の目は点になる。
 アミーラが言っていることが全く理解出来なかった。
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