3 / 5
アリスは超が付くほどのドジでもある
しおりを挟む
小鳥が囀り涼しげな風が吹き抜ける爽やかな朝。しかし、爽やかさとは程遠い怒鳴り声がルシヨン伯爵邸に響き渡る。
「おい! アリス! この飲み物は何だ!?」
「不味過ぎるわよ!」
「お義姉様は私にこれを飲めっていうの!?」
アリスが出した食後の飲み物を盛大に吹き出す三人。
「滋養強壮の紅茶でございます。蜥蜴の尻尾とムカデのエキスを使っていて、体力が向上する効果があるらしいですわ。皆様がこの先も健康でいられるよう用意しましたの」
アリスはニコリと微笑む。悪気があるようには感じられない。アメジストの目はキラキラと輝いている。
「何でものを出してくれるんだ! 今すぐ普通の紅茶を持って来い!」
「承知いたしました」
デュドネに言われ、アリスは少し肩を落として滋養強壮の紅茶を片付ける。
そして……。
「きゃっ」
滋養強壮の紅茶をトレーに乗せて部屋を出ようとした際、何もないところで躓いて転んでしまうアリス。その際にまだ中身の入ったポットがデュドネ目掛けて飛んで行き……。
「熱ーーーーい!」
ポットの中の熱々の紅茶がデュドネの肩にかかる。
「デュドネ様!」
「お父様!」
慌てるジスレーヌとユゲット。
「まあ! 叔父様、申し訳ございません! ただいま服をお脱がせします!」
アリスが勢いよくデュドネの服の肩の部分を破るのだが……。
「あー!! 痛い痛い!!」
何と皮膚が服に付いて剥がれてしまったのだ。
「まあ! 皮膚が……! どうしましょう?」
アリスは目を見開く。
「アリス! 何をしているの!? 火傷した場合服を脱がさずそのまま冷やすのが常識でしょう!」
思いっ切り顔を顰めて切りつけるように鋭い口調のジスレーヌ。
「お父様が可哀想だわ」
ジスレーヌと同じく顔を顰めてアリスを非難するユゲット。
「そうだったのですか!? それは申し訳ございません。熱い衣服だと叔父様もご不快になると思い、早く脱いでいただこうと思ったのですが……」
アリスは申し訳なさそうに肩を落としたように見えた。
またある時、アリスはデュドネの部屋に荷物を持って来た時のこと。
「アリス、何をぐずぐずしているんだ! 早く持って来い!」
「はい。……きゃっ」
デュドネに急かされたアリスはまた何もないところで躓いて転ぶ。その際、置いてあった書類をぶち撒けてしまった。
「何をしているんだ!」
「申し訳ございません。今すぐ片付けます」
アリスは散らばった書類を慌てて片付けようとするが……。
「きゃっ」
再び何もない場所で躓いて転んでしまう。そして起き上がる時、格調高いチェストに運悪く頭をぶつけた。驚いたアリスはその拍子に本棚にぶつかる。本棚は鈍器のような本がたくさん入っており、中々の重さではあるが重心が不安定であった。そして本棚はデュドネの方に倒れる。
「なっ!」
鈍器のような本がデュドネ目掛けて落ちる。ゴンッ、と鈍い音が響きデュドネは本棚の下敷きになってしまった。
「まあ! 叔父様! どうしましょう!」
アリスはオロオロしていた。
幸い他の使用人が本棚をどけてデュドネを救出したので大事には至らなかったが、デュドネはそれなりの怪我を負うのであった。
「アリス……貴様はもう部屋から出るな!!」
デュドネは怒髪天を衝き、アリスを部屋に閉じ込めるのであった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
(部屋から出るなと言われてしまいましたわ……。どうしましょう……?)
アリスは自室でため息をつく。
(考えても仕方ないわ。最近ダンスのレッスンもあまりしていなかったから、ステップの復習をしようかしら。窓も開けて換気もしましょう)
すぐに切り替えたアリスは自室の窓を開け、中くらいのぬいぐるみをダンスのパートナーに見立ててステップの練習を始めた。
(一人の練習も中々楽しいわね)
アリスはふふっと微笑む。アメジストの目は輝いている。
(そういえば、婚約者のボニファス様とも幼い頃こんな風にダンスをしたわね。……ボニファス様とは、私の両親が亡くなって以来会っていないわ)
アリスはふと婚約者の存在を思い出した。モンレリ伯爵家次男ボニファスは、アリスと結婚してルシヨン伯爵配となる予定である。ルシヨン伯爵家の後継者はアリスなのだ。
ボニファスのことを考えながらダンスの練習をしていたアリスは注意力が散漫になっていたのか、次のステップを踏んだ瞬間ぬいぐるみを窓の外に飛ばしてしまった。しかもかなりの勢いで。
「あ……」
アリスは急いで窓の外を見る。
ぬいぐるみは庭にある木の枝にぶつかる。その瞬間、その木にあった蜂の巣が地面に落ちた。
そして丁度落ちた所にはジスレーヌとユゲットがいた。
「きゃーっ! お母様、蜂の巣よ!」
「どうして落ちて来たのよ!?」
慌てるユゲットとジスレーヌ。しかし蜂は容赦なく二人を襲った。しかも運悪くそれは猛毒を持つ蜂であった。
(大変なことになりましたわね……)
アリスは急いで窓を閉めた。
(だけど、正直に話した方がいいかしら?)
その後医者を呼び、ジスレーヌとユゲットの治療をしてもらったので何とか命は助かった。ちなみに、ダンスの練習をしていた時にぬいぐるみを飛ばして蜂の巣を落としたことを正直に話したアリスは、やはり怒られた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
そんなある日、アリスの婚約者であるボニファスがルシヨン伯爵邸へやって来た。
(あら、ボニファス様だわ。久方振りね)
アリスは自室の窓から庭を歩いているボニファスを見かける。ブロンドの癖毛にクリソベリルのような緑の目の、アリスより一つ年上の少年だ。
その時、ユゲットが嬉しそうにボニファスの元へ駆け寄った。蜂の毒からは回復しているようだ。ボニファスもニマニマと頬を緩ませる。
(あら、ボニファス様、あんな表情もするのね)
アリスはアメジストの目を丸くした。
ユゲットは親しげにボニファスに寄りかかっている。まるで昔から交流があったかのように。
(あらまあ)
アリスのアメジストの目は丸くなったままであった。
一方、ユゲットとボニファスが何をしていたかというと……。
「ねえ、ボニファス様、お義姉様ったら酷いのよ。わざと私のものになる予定だったドレスに変な刺繍を入れるし、変なお茶を出してくるし、おまけにぬいぐるみを投げて私とお母様が猛毒を持つ蜂に刺されるように仕向けたのよ」
上目遣いで甘えた声を出すユゲット。
「何だって!? 酷い奴だな、アリスは。アリスの両親は厳しい人だと聞いていたが、亡くなった途端本性を現したのか。まあ、昔から俺より優秀で鼻持ちならない奴だったが」
ボニファスは憤慨する。
「ボニファス様、だったらお義姉様ではなく私と婚約したらどう?」
甘え声でボニファスに擦り寄るユゲット。
「妙案だな。アリスなんかより、可愛いユゲットの方がずっといい」
ボニファスはニヤリと笑った。
「やったわ。ありがとう、ボニファス様。少し暑くなってきたし、お部屋でティータイムにしましょう」
ユゲットがそう提案すると、ボニファスは快く頷いた。
そしてまた騒ぎが起こる。
ユゲットとボニファスがティータイムを楽しんでいる部屋にアリスが入って来た。
「お義姉様! どうして入って来るのよ!?」
ギョッとするユゲット。ボニファスも嫌そうな顔になる。
「え? 折角だしボニファス様とユゲットにお菓子を持って来たのよ」
ふふっと微笑むアリス。
「まさかまた変なものが入ったお菓子じゃないでしょうね?」
「まさか。変なものなんて入っていないわ。普通の焼き菓子よ。置いておくわね」
楽しそうに微笑むアリス。そのまま部屋を出ようとしたが……。
「きゃっ」
またしても何もない場所で躓く。アリスは自分の体を支えようと何かを掴むが、ビリッと派手に何かが破れる音がした。
「きゃあ! お義姉様、何するのよ!?」
ユゲットが悲鳴を上げる。アリスが掴んだのはユゲットのドレスであった。そしてそのドレスは派手に破れてユゲットの肌が露わになる。ユゲットは必死に自身の体を隠す。
「あら、ユゲット、ごめんなさい。急いで代わりのドレスを持って来るわね」
アリスは立ち上がるが、慌てていたせいでテーブルの紅茶をこぼしてしまう。熱々の紅茶はボニファスの下半身に直撃した。
「熱!」
ボニファスは思わず立ち上がる。
「おいアリス!何てことしてくれるんだ!?」
ボニファスはアリスを怒鳴りつける。
「申し訳ございません、ボニファス様。あ、少々お待ちください」
アリスは部屋の花瓶の花を取り出し、中の水をボニファスの下半身にぶっかける。
「冷たっ! アリス! 今度は何だ!?」
「火傷をした場合、服を脱がせず上から水をかけたらいいと言われましたの。これでボニファス様の火傷も軽減するかと思いまして」
「俺にこの格好でいろというのか!?」
顔を真っ赤にしてカンカンに怒っているボニファス。場所が場所なだけに、粗相をしたように見える。
「火傷をなさったままよりは良いと思いまして」
アリスはきょとんとしている。
「もういい! アリス! お前みたいな女とは婚約破棄だ! こんな女よりユゲットと婚約する!」
勢いに任せてそう宣言してしまうボニファス。
「まあ……。承知いたしました」
アリスはアメジストの目を丸くし、そう答えるのであった。
「ユゲット、婚約おめでとう」
ニコリとユゲットに笑みを向けるアリス。
「今それどころじゃないでしょう!」
破れたドレスで必死に体隠すユゲットに火傷を負ったボニファス。部屋の中はカオスであった。
「おい! アリス! この飲み物は何だ!?」
「不味過ぎるわよ!」
「お義姉様は私にこれを飲めっていうの!?」
アリスが出した食後の飲み物を盛大に吹き出す三人。
「滋養強壮の紅茶でございます。蜥蜴の尻尾とムカデのエキスを使っていて、体力が向上する効果があるらしいですわ。皆様がこの先も健康でいられるよう用意しましたの」
アリスはニコリと微笑む。悪気があるようには感じられない。アメジストの目はキラキラと輝いている。
「何でものを出してくれるんだ! 今すぐ普通の紅茶を持って来い!」
「承知いたしました」
デュドネに言われ、アリスは少し肩を落として滋養強壮の紅茶を片付ける。
そして……。
「きゃっ」
滋養強壮の紅茶をトレーに乗せて部屋を出ようとした際、何もないところで躓いて転んでしまうアリス。その際にまだ中身の入ったポットがデュドネ目掛けて飛んで行き……。
「熱ーーーーい!」
ポットの中の熱々の紅茶がデュドネの肩にかかる。
「デュドネ様!」
「お父様!」
慌てるジスレーヌとユゲット。
「まあ! 叔父様、申し訳ございません! ただいま服をお脱がせします!」
アリスが勢いよくデュドネの服の肩の部分を破るのだが……。
「あー!! 痛い痛い!!」
何と皮膚が服に付いて剥がれてしまったのだ。
「まあ! 皮膚が……! どうしましょう?」
アリスは目を見開く。
「アリス! 何をしているの!? 火傷した場合服を脱がさずそのまま冷やすのが常識でしょう!」
思いっ切り顔を顰めて切りつけるように鋭い口調のジスレーヌ。
「お父様が可哀想だわ」
ジスレーヌと同じく顔を顰めてアリスを非難するユゲット。
「そうだったのですか!? それは申し訳ございません。熱い衣服だと叔父様もご不快になると思い、早く脱いでいただこうと思ったのですが……」
アリスは申し訳なさそうに肩を落としたように見えた。
またある時、アリスはデュドネの部屋に荷物を持って来た時のこと。
「アリス、何をぐずぐずしているんだ! 早く持って来い!」
「はい。……きゃっ」
デュドネに急かされたアリスはまた何もないところで躓いて転ぶ。その際、置いてあった書類をぶち撒けてしまった。
「何をしているんだ!」
「申し訳ございません。今すぐ片付けます」
アリスは散らばった書類を慌てて片付けようとするが……。
「きゃっ」
再び何もない場所で躓いて転んでしまう。そして起き上がる時、格調高いチェストに運悪く頭をぶつけた。驚いたアリスはその拍子に本棚にぶつかる。本棚は鈍器のような本がたくさん入っており、中々の重さではあるが重心が不安定であった。そして本棚はデュドネの方に倒れる。
「なっ!」
鈍器のような本がデュドネ目掛けて落ちる。ゴンッ、と鈍い音が響きデュドネは本棚の下敷きになってしまった。
「まあ! 叔父様! どうしましょう!」
アリスはオロオロしていた。
幸い他の使用人が本棚をどけてデュドネを救出したので大事には至らなかったが、デュドネはそれなりの怪我を負うのであった。
「アリス……貴様はもう部屋から出るな!!」
デュドネは怒髪天を衝き、アリスを部屋に閉じ込めるのであった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
(部屋から出るなと言われてしまいましたわ……。どうしましょう……?)
アリスは自室でため息をつく。
(考えても仕方ないわ。最近ダンスのレッスンもあまりしていなかったから、ステップの復習をしようかしら。窓も開けて換気もしましょう)
すぐに切り替えたアリスは自室の窓を開け、中くらいのぬいぐるみをダンスのパートナーに見立ててステップの練習を始めた。
(一人の練習も中々楽しいわね)
アリスはふふっと微笑む。アメジストの目は輝いている。
(そういえば、婚約者のボニファス様とも幼い頃こんな風にダンスをしたわね。……ボニファス様とは、私の両親が亡くなって以来会っていないわ)
アリスはふと婚約者の存在を思い出した。モンレリ伯爵家次男ボニファスは、アリスと結婚してルシヨン伯爵配となる予定である。ルシヨン伯爵家の後継者はアリスなのだ。
ボニファスのことを考えながらダンスの練習をしていたアリスは注意力が散漫になっていたのか、次のステップを踏んだ瞬間ぬいぐるみを窓の外に飛ばしてしまった。しかもかなりの勢いで。
「あ……」
アリスは急いで窓の外を見る。
ぬいぐるみは庭にある木の枝にぶつかる。その瞬間、その木にあった蜂の巣が地面に落ちた。
そして丁度落ちた所にはジスレーヌとユゲットがいた。
「きゃーっ! お母様、蜂の巣よ!」
「どうして落ちて来たのよ!?」
慌てるユゲットとジスレーヌ。しかし蜂は容赦なく二人を襲った。しかも運悪くそれは猛毒を持つ蜂であった。
(大変なことになりましたわね……)
アリスは急いで窓を閉めた。
(だけど、正直に話した方がいいかしら?)
その後医者を呼び、ジスレーヌとユゲットの治療をしてもらったので何とか命は助かった。ちなみに、ダンスの練習をしていた時にぬいぐるみを飛ばして蜂の巣を落としたことを正直に話したアリスは、やはり怒られた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
そんなある日、アリスの婚約者であるボニファスがルシヨン伯爵邸へやって来た。
(あら、ボニファス様だわ。久方振りね)
アリスは自室の窓から庭を歩いているボニファスを見かける。ブロンドの癖毛にクリソベリルのような緑の目の、アリスより一つ年上の少年だ。
その時、ユゲットが嬉しそうにボニファスの元へ駆け寄った。蜂の毒からは回復しているようだ。ボニファスもニマニマと頬を緩ませる。
(あら、ボニファス様、あんな表情もするのね)
アリスはアメジストの目を丸くした。
ユゲットは親しげにボニファスに寄りかかっている。まるで昔から交流があったかのように。
(あらまあ)
アリスのアメジストの目は丸くなったままであった。
一方、ユゲットとボニファスが何をしていたかというと……。
「ねえ、ボニファス様、お義姉様ったら酷いのよ。わざと私のものになる予定だったドレスに変な刺繍を入れるし、変なお茶を出してくるし、おまけにぬいぐるみを投げて私とお母様が猛毒を持つ蜂に刺されるように仕向けたのよ」
上目遣いで甘えた声を出すユゲット。
「何だって!? 酷い奴だな、アリスは。アリスの両親は厳しい人だと聞いていたが、亡くなった途端本性を現したのか。まあ、昔から俺より優秀で鼻持ちならない奴だったが」
ボニファスは憤慨する。
「ボニファス様、だったらお義姉様ではなく私と婚約したらどう?」
甘え声でボニファスに擦り寄るユゲット。
「妙案だな。アリスなんかより、可愛いユゲットの方がずっといい」
ボニファスはニヤリと笑った。
「やったわ。ありがとう、ボニファス様。少し暑くなってきたし、お部屋でティータイムにしましょう」
ユゲットがそう提案すると、ボニファスは快く頷いた。
そしてまた騒ぎが起こる。
ユゲットとボニファスがティータイムを楽しんでいる部屋にアリスが入って来た。
「お義姉様! どうして入って来るのよ!?」
ギョッとするユゲット。ボニファスも嫌そうな顔になる。
「え? 折角だしボニファス様とユゲットにお菓子を持って来たのよ」
ふふっと微笑むアリス。
「まさかまた変なものが入ったお菓子じゃないでしょうね?」
「まさか。変なものなんて入っていないわ。普通の焼き菓子よ。置いておくわね」
楽しそうに微笑むアリス。そのまま部屋を出ようとしたが……。
「きゃっ」
またしても何もない場所で躓く。アリスは自分の体を支えようと何かを掴むが、ビリッと派手に何かが破れる音がした。
「きゃあ! お義姉様、何するのよ!?」
ユゲットが悲鳴を上げる。アリスが掴んだのはユゲットのドレスであった。そしてそのドレスは派手に破れてユゲットの肌が露わになる。ユゲットは必死に自身の体を隠す。
「あら、ユゲット、ごめんなさい。急いで代わりのドレスを持って来るわね」
アリスは立ち上がるが、慌てていたせいでテーブルの紅茶をこぼしてしまう。熱々の紅茶はボニファスの下半身に直撃した。
「熱!」
ボニファスは思わず立ち上がる。
「おいアリス!何てことしてくれるんだ!?」
ボニファスはアリスを怒鳴りつける。
「申し訳ございません、ボニファス様。あ、少々お待ちください」
アリスは部屋の花瓶の花を取り出し、中の水をボニファスの下半身にぶっかける。
「冷たっ! アリス! 今度は何だ!?」
「火傷をした場合、服を脱がせず上から水をかけたらいいと言われましたの。これでボニファス様の火傷も軽減するかと思いまして」
「俺にこの格好でいろというのか!?」
顔を真っ赤にしてカンカンに怒っているボニファス。場所が場所なだけに、粗相をしたように見える。
「火傷をなさったままよりは良いと思いまして」
アリスはきょとんとしている。
「もういい! アリス! お前みたいな女とは婚約破棄だ! こんな女よりユゲットと婚約する!」
勢いに任せてそう宣言してしまうボニファス。
「まあ……。承知いたしました」
アリスはアメジストの目を丸くし、そう答えるのであった。
「ユゲット、婚約おめでとう」
ニコリとユゲットに笑みを向けるアリス。
「今それどころじゃないでしょう!」
破れたドレスで必死に体隠すユゲットに火傷を負ったボニファス。部屋の中はカオスであった。
26
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました
Mimi
ファンタジー
私エヴァンジェリンには、幼い頃に決められた婚約者がいる。
男女間の愛はなかったけれど、幼馴染みとしての情はあったのに。
卒業パーティーの2日前。
私を呼び出した婚約者の隣には
彼の『真実の愛のお相手』がいて、
私は彼からパートナーにはならない、と宣言された。
彼は私にサプライズをあげる、なんて言うけれど、それはきっと私を悪役令嬢にした婚約破棄ね。
わかりました!
いつまでも夢を見たい貴方に、昨今流行りのざまぁを
かまして見せましょう!
そして……その結果。
何故、私が事故物件に認定されてしまうの!
※本人の恋愛的心情があまり無いので、恋愛ではなくファンタジーカテにしております。
チートな能力などは出現しません。
他サイトにて公開中
どうぞよろしくお願い致します!
あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす
青の雀
恋愛
公爵令嬢スカーレット・ロッテンマイヤーには、前世の記憶がある。
幼いときに政略で結ばれたジェミニ王国の第1王子ロベルトと20歳の時に結婚した。
スカーレットには、7歳年下の義妹リリアーヌがいるが、なぜかリリアーヌは、ロッテンマイヤー家に来た時から聖女様を名乗っている。
ロッテンマイヤーは、代々異能を輩出している家柄で、元は王族
物語は、前世、夫に殺されたところから始まる。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。
反論する婚約者の侯爵令嬢。
そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。
そこへ………
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。
◇なろうにも上げてます。
これぞほんとの悪役令嬢サマ!?〜掃討はすみやかに〜
黒鴉そら
ファンタジー
貴族の中の貴族と呼ばれるレイス家の令嬢、エリザベス。彼女は第一王子であるクリスの婚約者である。
ある時、クリス王子は平民の女生徒であるルナと仲良くなる。ルナは玉の輿を狙い、王子へ豊満な胸を当て、可愛らしい顔で誘惑する。エリザベスとクリス王子の仲を引き裂き、自分こそが王妃になるのだと企んでいたが……エリザベス様はそう簡単に平民にやられるような性格をしていなかった。
座右の銘は”先手必勝”の悪役令嬢サマ!
前・中・後編の短編です。今日中に全話投稿します。
婚約者に見捨てられた悪役令嬢は世界の終わりにお茶を飲む
・めぐめぐ・
ファンタジー
魔王によって、世界が終わりを迎えるこの日。
彼女はお茶を飲みながら、青年に語る。
婚約者である王子、異世界の聖女、聖騎士とともに、魔王を倒すために旅立った魔法使いたる彼女が、悪役令嬢となるまでの物語を――
※終わりは読者の想像にお任せする形です
※頭からっぽで
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる