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24 家族との再開
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「お待ちしておりました。すでに領主様がお待ちでいらっしゃいます」
元エミル王国の王城。その全てはそのまま使用され、ギルベアト帝国から遣わされた新しい支配者の住居となっていた。
「こちらでございます」
案内されたのは豪華な貴賓室で、中に居たのは部屋の造りに気後れしているような新領主の姿だった。
「兄上、エデル、ライナー卿、お久し振りです。それと……、姉上とお呼びすれば宜しいのでしょうか」
立ち上がったギルベアト帝国の第五皇子リーヴィスは、少し戸惑った様子でウィノラを見た。
「ウィノラで結構です、リーヴィス殿下。今は領主様とお呼びした方が宜しいでしょうか?」
「私の事もリーヴィスで構いませんよ。それにどうせ領主というのも一時的なものでしょうから。ギルベアト帝国の内情が落ち着けば、いずれ適任者が着任するはずです」
「リーヴィス様、お客様をこのまま立たせておくのはいかがなものかと存じますが」
「ああ、そうでしたね! どうぞお掛け下さい。ウィリアムは私の護衛兼、侍従として共に来ました」
「どうも」
「こら、ウィリアム! 相手は王族と公爵家なのだぞ。いつも礼儀正しいお前がどうしたんだ」
それでもそっぽを向いているウィリアムに疑問を感じていると、ライナーは肩を揺らして笑っているように見えた。
「ライナー様? どうかされましたか?」
「いや別に。しばらくの間滞在する事になるから宜しく頼むよ」
「よくもぬけぬけと!」
「ど、どうしたんだウィリアム」
リーヴィスが慌てる素振りも楽しんでいるかのようにライナーがくすりと笑うと、ウィリアムは更に火が付いたように顔を真っ赤にして腰の剣に手を伸ばした。
「ウィリアムッ!」
珍しく冷えた声のリーヴィスにウィリアムは渋々剣から手を離すと、扉近くに下がって行ってしまった。
「もしやライナー卿はウィリアムと顔見知りでしょうか? ウィリアムは元々ガリオン兄上の側近だったので、そうだとしても驚きませんが」
「ええ知っています。少し悪ふざけをしてしまったようで申し訳ありません。でもリーヴィス殿下に同行していたんですね」
「陛下が同行させたのです。ガリオン兄上が皇帝になられて、軍団も騎士団も再編成されましたから、その時ウィリアムは軍団を抜け、私に同行と命令が下った訳です。ライナー卿が帝都を離れていらした時ですね」
「ウィリアムを手放すとは思いませんでした」
「きっと私の監視でしょう。私は兄上に比べたらずっと出来損ないですから」
リーヴィスは自嘲気味にそう言った。
「それでわざわざ皆様お揃いの理由を伺っても?」
ウィノラは少しだけ前に出ると、緊張で両手を握り締めた。
「エミル領で保護している魔女達に会わせて下さい! その中に私の大事な家族がいるかもしれないんです!」
するとリーヴィスは僅かに目を見開いて、薄く唇を引いた。
「……隠している訳でもありませんしね。エミル王国を解体する時に知り得た事は全て、皇帝陛下にご報告申し上げているのでご案内致しましょう」
リーヴィスは王城の中をどんどん進んでいくと、やがて地下に向かい出した。嫌な予感がしてしまう。この国でも魔女達はやはり地下に捕らわれているのだろうか。無意識に震え出す身体を抑えるように抱え込むと、不意に前を歩いていたライナーが振り返ってきた。
「ウィノラ、手を繋ごうか?」
「なんでですか?」
「怖がっているようだったから。もしかして泣いているんじゃないかと思って」
クスクスと笑われ、ウィノラは思い切りライナーを追い越した。
「そんな訳ありません! 平気です!」
「そうか、それは良かった」
意地悪そうな言葉のはずなのにライナーの声は優しくて、いつの間にか不安は消え去っていた。
薄暗く長い通路の先から光が溢れ出す。無意識に足早に進むと、そこには神殿のような空間が広がっていた。閉鎖的な物ではなく、石の柱が建っているがその先は草原へと続いており、陽の光が燦々と降り注ぐ明るい場所だった。リーヴィスは隣に来ると得意げに言った。
「王城のあの通路は外の神殿に繋がっているのですよ」
リーヴィスの言う通り、広い神殿の先には外が見える。四方八方から入る事の出来る神殿は開かれた美しい場所だった。
「てっきり地下に向かっているのだと思っていました」
「王城自体が山の上にあるので単純に下って来ただけですよ。魔女達はこの先の村にいますよ」
「この先の村、ですか?」
「とは言っても魔女だけではなく、他の住民も住んでいる普通の村です」
「隔離しているんじゃないんですか?」
「まさか! その目で見た方が早いかもしれませんね」
ウィノラは走り出していた。神殿を突っ切り、草地を踏みしめる。坂を転がるように息を切らしながら見えてきたのは、ポツンポツンと点在する家々と笑い声。それに人々の姿だった。村の中に入って行き、アデリータ達を探す。走りながら周囲を探す姿に村人達は警戒しながらウィノラを見てきた。
「アディ! マイノさん! ディアンヌ! イリーゼ姉さん! デルマ姉さん! 皆いないの?!」
じんわりと涙が溜まってくる。ふと足を止めた時、遠くから名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ウィノラ! ウィノラ――!」
大手を振りながら走って来たのはマイノだった。ウィノラが向かうよりも先にマイノがガバっと身体を掴み、抱き上げてくる。そしてそのまま子供のように高い高いをされた。
「ちょ、ちょっと降ろしてよ! 恥ずかしいから!」
「ウィノラ! 良かった、無事だったんだな。いや無事だとは知っていたが、まさかこんなに早く会えるなんて思いもしなかったぞ!」
その瞬間、マイノの首に抱きついていた。
「皆はどこにいるの? 無事よね? 大丈夫よね?」
するとマイノは苦しそうに顔を上げて、後ろを振り返った。
「こら、姉を置いていくんじゃないよ!」
息を切らしながら走ってきたのはアデリータとイリーゼ。そしてその後ろにはデルマとディアンヌも居た。
「良かった、皆、本当に良かった……」
マイノに抱き上げられたままアデリータ達の元に行くと、一斉に抱き合って泣いた。
「ディアンヌも無事で良かったよ!」
「ウィノラ、ごめんね。私のせいで皆を危険な目に遭わせてしまったわ」
声を詰まらせたディアンヌの目は真っ赤で、何度も謝るその身体をきつく抱き寄せた。
「皆一緒に逃げて来られたの? アディとディアンヌは捕らえられていたのに」
「そこは愛しい人の出番じゃない。バラードが娼館の女達を集められるだけ集めて先にエミル王国に逃がしてくれていたのよ。私達は後から合流したのよ」
「でもこんな風に皆一緒にいられるなんていくら何でも……」
「それはほら、バラード様とあの御方のお力よ」
デルマがいたずらっぽく後ろを振り向くと、懐かしい顔に思わず目に涙が溢れていた。
「ロラ! ロラなの?!」
走ってくるその姿を思い切り抱き締めると、その後ろには息を切らした中年の男性が追いついた所だった。
「待って、待ってくれ、ロラ……もう」
どこからどう見ても良くて商人。中肉中背で髪の毛は黒々として若く見えるが、どうしても田舎臭さが抜けきらない。顔も冴えないが良い人が滲み出ている。そんな男性だった。
「ウィノラさん、こちらヘイワード男爵様です。旦那様、この女性がウィノラです。私を旦那様の元へ行かせてくれた恩人ですよ」
ヘイワードと聞いて忘れる訳がない。実在しているかも怪しかったが、とても親近感のある名前に呆けていると、ヘイワード男爵は少し照れたようにぺこりと頭を下げた。少し薄くなっている頭頂部も雰囲気と相まって中々愛嬌のある男性に見えてくるから不思議だ。驚いたように見つめていると、ロラは不安そうに顔を覗いてきた。
「もしかして惚れていないですよね? 駄目ですよ、旦那様は私の旦那様なんですからね」
「そんな訳ないじゃない! ただお名前にとても親近感があって、ただそれだけよ!」
「名前に親近感ですか?」
ロラは分かっていないがヘイワード男爵は察したように微笑んでいた。
「ヘイワード男爵様が皆を助けて下さったのですか?」
「いえいえ! 私は少し協力させて頂いただけで、クラウゼ伯爵のご尽力の賜物です」
するとデルマは得意そうに言った。
「バラード様はエミル王国と魔女についてずっとお調べになられていたの。ここだけの話、バラード様の御母上も魔女だからね。それでエミル王国の魔女の扱われ方を知ったバラード様は、いつかこの地に魔女達を移住させたいという計画を立てていらしたのよ。素敵よね、格好いいわよね、さすがバラード様だわ」
「もしかして、クラウゼ伯爵は私達が魔女だってずっとご存知だったの?!」
「そうよ。え、知らなかったの?」
「知る訳ないじゃない!」
「まあまあ、その辺で。ここはクラウゼ伯爵がエミル王国の貴族のお名前で買い取った土地なのです。国が解体され、その権力もどこまで影響するかもう分かりませんが、取り敢えずはこのまま所有出来る事になっているようです。今後ギルベアト帝国が落ち着き本格的にエミル領の改革に乗り出したら、その時はまた変わってしまうかもしれませんけれどね。ですが隣の領地は私が所有する領地なのでその辺りもご安心下さい」
「クラウゼ伯爵様はやっぱり凄いお方だったのね。というか、デルマ姉さんへの愛を感じるわ」
「ふふ、私ったら愛されているの」
「バラードはデルマに夢中だからな。それに先日皇帝陛下が帝国中に魔女の歴史の誤りについて新たな事実を発表したから、少しずつだが浸透していくだろう」
聞こえてきた声に振り返ると、気を使ったのかわざと遅れるようにして到着したライナーだった。
「魔女が原因で帝国が滅びかけたという事実はなく、魔女は常に賢く人々を導く能力を持っていたが、それを妬んだ時の皇帝が魔女を恐れて滅ぼそうとしたのが争いの始まりだったそうだ。帝国民が受け入れるには少し時間の掛かりそうな内容ではあるがな」
「ライナー様! ライナー様もウィノラを深く愛していますよね? そうじゃなきゃウィノラを探して数ヶ月も旅をしたりなんかしませんもんね?」
デルマに迫られたライナーは頬を赤くして咳払いをした。
「ウィノラ! ちょっとこっちに来なさい!」
デルマは愛想笑いを浮かべながら、ライナーからウィノラを引き離した。
「いいわね? 絶対、ぜ――ったいにライナー様を手放しては駄目よ?」
「な、突然なに!」
とっさに後ろを振り向くと、ライナーは聞こえていないふりをしているのかそっぽを向いている。それでも何事かとアディ達がこちらを見ていた。
「いいからよく聞きなさい! 家族はもちろん大事だけれど、いつかはそこから巣立つものなのよ。そして添い遂げたいと想う男の元に行けたなら最高に幸せだと思わない?」
それは叶ったデルマだから言える事だと思う。望まぬ結婚をする者は多い。それに望んだとしても上手くいかない事もある。そんな人達を沢山見てきた。自分も望まぬ結婚で生まれた子の一人なのだから、デルマのように真っ直ぐにそう言える自信などどこにもない。
ライナーは公爵家を継ぐ人。ギルベアト帝国で間違いなく大きな権力を手にする人。それに比べ、自分はすでに死んだとされる皇女。そして帝国で明るみとなった魔女なのだ。今回の件で、実は帝都に魔女や魔女の子孫が多くいたというのは周知の事実となった。実はいつも買い物に行っていた店の店員が魔女だった、妻も知らずに魔女の血を引いていたなど、魔女を嫌う帝都の人々の近くにこそ魔女は根付いていたのだ。しかしそれと魔女という存在を受け入れるかはまた別問題。だからこそ、今現在のライナーの立場には危ういものがある。
魔女の血は引いていないが、魔女を支配下におき退散させるという姿を多くの帝国民が目にしてしまった。フックス家=魔女という印象が強く付いてしまった以上、今後ライナーはフックス家の立場を確固たるものにするべく、大きな困難が待ち受けているに違いない。そんな大事な時に魔女のある自分が側にいていいはずがなかった。
「ウィノラ、私達は自由になったのよ。娼館はもうない。誰にも魔女だと隠さなくてもいい。誰からも逃げる必要なんてないの。それにあんたは皇女なんだからもっと堂々としていればいいの」
すると、今度はいつの間にかそばに来ていたイリーゼが背中をさすってきた。
「デルマは本当に楽観的なんだから。ウィノラ、帝都に戻ればきっとまだ魔女への風当たりは強いわよ。悪意を向けてくる人もいると思う。エミル王国はね、魔女を保護なんてしていなかったのよ。むしろ崇拝していたの」
「崇拝?! 魔女を?」
「ここに来る前に神殿に行ってきたでしょう?」
「神殿を通って来たけれど、急いで来たからほとんど見ていなかったわ」
「もう! 神官様がいらっしゃるから戻ってお勉強して来なさいッ!」
イリーゼらしい言い方に笑っていると、アデリータが背中を押してきた。
「何も心配する事はないさ。あんたには“真の統治者”が付いているんだからね。どこにいても、何をしていても私達は家族だよ」
そう言って視線が上に向く。顔を上げるとそこには手を差し出してくれていたライナーが立っていた。
「家族が見つかって良かったな、ウィノラ」
ウィノラが少し照れながらその手を掴むと、イリーゼが急かすように背中を押してきた。
「ライナー卿、ウィノラを頼みますよ」
「承知した。命に代えても守ってみせる」
当のウィノラ本人はライナーの言葉を理解出来ず呆気に取られていると、アデリータとマイノはどういう訳が目を真っ赤にして鼻を啜っていた。
「さあ行こうか」
繋がれた指先がぎゅっと握られる。ウィノラも力の加減が出来ない程に握り返した。
神殿に戻るとそこには放心したオーティスとエデルが立っていた。さっき走り抜けた広い空間は、白い円柱で支えられた古い神殿で、奥の祭壇の上には、見上げる程大きな背中合わせの男女神の巨像が建っていた。
「これは……」
祭壇の前にいたリーヴィスは神官に頷くと、神官がおもむろに話し出した。
「これはこの地に降り立った女神様の像でございます」
「女神様? 二神いらっしゃるのに?」
「女神様は二面性をお持ちの女神でいらっしゃいますゆえ、このような姿をとられたのだと思われます」
「それじゃあ一神という事なのね」
「ウィノラ様、魔女は元々この女神様の血を引く子孫だと言われているのですよ」
「魔女が女神の子孫ですって?!」
神官は小さく咳払いをして続けた。
「我が国に伝えられている魔女の伝説はギルベアト帝国のものとはかなり違います。遥か昔、女神の子孫には不思議な力が宿っておりました。火や水、風などの自然との繋がりを持ち、フェッチと呼ばれる分身を作り出す者達は、人々を導く統治者の素質があるとして、自然とこの地に散らばる部族の長や相談役としての仕事に就いていたそうです」
「それはエミル王国が出来るずっと前と言う事ですか?」
「そうですね、ずっと昔のお話でございます。まだエミル王国になる前のこの地は、幾つもの異なった部族が支配しておりました。やがてそれらが一つにまとまり、エミル王国が出来たのです。もうお分かりかもしれませんが、王族の先祖はより魔女として優秀な者でした。しかし、ギルベアト王国は次々に勢力を伸ばし、やがてこのエミル王国にも迫っていました。女神の子孫達は力を合わせて戦いましたが、数には勝つ事が出来なかったのです。戦いに破れると分かったエミル王国は力を奪われる事を恐れ、女神の力を持つ者達を散り散りにさせ、女神の伝承を隠し、女神の力が悪用されないように魔女の噂を流したのです」
「それじゃあなぜルシャード陛下は魔女の秘密を知っていたんでしょう」
「もしかしたら奪われた戦利品の中にそれを伝える何かが紛れていたのかもしれません。女神に関する何かが。魔女となった女神の子孫達にはフェッチを顕現する者達がいたので、歴史は途絶える事なくフェッチから魔女達に脈々と受け継がれ、やがて“真の統治者”を待ち望むようになったのでしょう」
神官はライナーに深々と頭を下げた。
「その“真の統治者”というのは一体どういう意味なんだ? 俺自身、この力がよく分かっていないんだが」
「それは女神の祝福そのものですよ。女神が祝福を授けると真から想い、フェッチが承諾した者にのみ宿る証のようなものです」
「それじゃあもしかして血を浴びるのは関係ないの?」
すると神官は怪訝そうに顔を顰めた。
「そのような事を女神様がお望みになられる訳がないではありませんか。祝福は本来、女神の力を強く引いた者が与えられる贈り物です。血など滅相もない」
「そんなぁ」
ウィノラはエデルと共に首元を擦ると、苦い顔をした。
「結局父上は勘違いをされていたという事だな。ウィノラの癒やしの力も、エデルが持つ力も本来強い力を持つ者の証拠だったという訳か。血を浴びたらいいだなんて、どこでそう歪んでいったのか」
オーティスは憐れむようにエデルの頭を抱き寄せた。
「それでもきっとギルベアト帝国には魔女が国の転覆を図ったという考えは抜けないだろうから、いくらそれは過去の王室が捏造した歴史だと言っても受け入れるのは安易ではないだろうな。現に暴走した魔女が帝都を襲っている訳だし」
「前王室の皆様はどう過ごされているのですか?」
するとリーヴィスは申し訳なさそうに言った。
「王族の方々の身柄は現在軟禁状態にあります。元々今回の戦争のきっかけはセリア王妃様が起こした事のようでした。幼い頃にこの国に嫁ぎ知った事実は、幼く純粋なセリア王妃様のお人柄を歪ませるには大き過ぎたのかもしれません。ギルベアト帝国に強い憤りを感じ、それがやがて制裁か粛清のような考えに至ったのでしょう」
「国王様は関与していないという事?」
「全く知らなかったという事はないと思います。実際に今回使われた魔女の力を増幅させる石は王族に厳重管理されていたものらしいです。魔女が死ぬと発生する、力が凝縮された物というくらいにしか分かっていないかなり危険な代物をセリア王妃様お一人で持ち出せるとは思えません。セリア王妃様は今だに黙秘しているようのでなんとも分かりませんが、エミル王国の王室自体はとても穏やかな人々でとても帝国に歯向かうような方々ではありませんでした。軟禁にも応じ、ギルベアト帝国の判断に任せるという姿勢を貫いておられます。しかし……」
「しかし?」
言いにくそうなリーヴィスは、意を決したように顔を上げた。
「国王様はセリア王妃様をご心配されておられました。幼い頃の政略結婚でしたでしょうに、きっと何か強い絆があったのかもしれません。ですが、セリア王妃様がこの地に戻る事は二度とないでしょう。ガリオン兄上はお許しにはならないでしょうから」
「これだけの事をしでかしたんだからしょうがないでしょう」
苦い表情をしながら話しているオーティスは、きっとエデルの事を思っているのだろう。ちらりと目が合うとオーティスは小さく首を傾げてくる。ウィノラは何でもないという風に首を振った。
「ライナー卿、少し二人でお話宜しいでしょうか」
リーヴィスはライナーを誘うと神殿の奥へと入って行ってしまった。
「エミル領の領主になるのは遠慮しておきますよ」
「やっぱり分かってしまいましたか」
神殿の奥は祈りの間になっており、狭い小部屋が幾つもある。リーヴィスは慣れた様子でその部屋の椅子に座った。
「振り分けた領地の運営は上手く行きそうですか?」
「振り分けたといっても元々の領主達に任せる場所の方がほとんどです。それに開いている場所はすでにこちらが信頼を置ける者に引き継いでおりますから、大きな問題にはならないと思います」
「私の友人もその大事な命を受けたと感謝しておりましたよ」
「それは良かったです」
リーヴィスは小さく笑うと、不意に身体から力が抜けたように椅子に座った。
「実はエミル王国に来てから何度もここに足を運んで来たんです」
「随分と信仰熱心だったのですね」
「ギルベアト帝国では皇帝陛下を神としますよね。でもここには不変の神がいたんです。誰の事も侵さず、従わせず、傷つけず、ただ愛を向け、力でもって皆を守り導く。それが私の思う真の統治者のように感じました」
「この地が気に入ったのならそれこそリーヴィス殿下が適任だと思いますよ。私は偶然ウィノラに力を与えてもらっただけで、あなたのような信仰心はありませんから」
すると激しくリーヴィスは首を振った。
「私では駄目なんです! あなたのような人を惹き付ける力がなくてはいけないと思うのです。今後この地は大きく揺れる事になります。その内いずれ領地に不満を出す者や反乱を起こす者、領民達の不満もあるかもしれません。それらに対処出来る者が必要なのです」
その時、扉が叩かれた。
「なんだ、今は大事な話中なんだ」
「それが急ぎご報告したい事がございます」
リーヴィスは扉を開けると、ウィリアムが中にいたライナーを見るなり嫌そうな顔をした。
「北西と北の領地でそれぞれ領主邸への暴動が起きているようです。まだ大きなものではありませんが、いかがなさいますか?」
「それなら一つは私が行こう。もう一箇所はお前が行ってくれ。くれぐれも領民達を傷つける事はしないように。いいな? 今はまだ新領主になって制度にも慣れていないだろうからいざこざが多いんだ。熱くならずに対話を心がけてくれ」
ウィリアムは敬礼するとその場を後にした。
「あのウィリアムに対話を望むんですか? 口よりも手が先に出る男ですよ」
「確かにここに来たばかりの頃は私にもそうでした」
するとライナーは目を瞬かせた。
「どうやって大人しくさせたのです? ガリオン殿下の側近として常に戦場にいた男です」
ガリオンの近くにいたから皆気が付いていないだろうが、ウィリアムは間違いなく帝国屈指の軍人で間違いなかった。そうでなければガリオンが側に置くはずがない。
「もちろん剣を交える事もありましたが、やはりそこは私が皇子という事や、陛下から直接のご命令という事もあり最後には引いてくれていましたよ」
「……なるほど、ここにも自分の能力に気が付いていない人がいたという訳ですね」
「どうかしましたか?」
ライナーは口元の緩みを元に戻すと、リーヴィスに頭を下げた。
「やはりこの地はあなたが治めた方がいいと思っただけです。帝国に戻った際には私からもそのように陛下にご助言致しましょう」
「そんな! 私の話を聞いていましたか?!」
「大丈夫ですよ、陛下が私の助言をそう素直に受け入れる訳がありませんから」
後ろではリーヴィスが困ったように後を付い来る。部屋を出た時、ウィノラの姿を探したがどこにも見えなくなっていた。
「オーティス殿下、ウィノラはどこです?」
「ウィノラなら……」
オーティスの視線の先には、女神像をじっと見上げるウィノラが目に入った。
「姿が見えなくなるとどうも不安になるな」
後ろから声を掛けても反応はない。ライナーは更に一歩近付き、その頬にそっと触れた。跳ね上がる程に肩をビクリとさせると、ライナーを見上げた。
「随分熱心に見ていたみたいだな」
「そうですか?」
「今日は驚く事ばかりだな。世界にはまだまだ知らない事ばかりだと思い知らされたよ」
「……そうですよ。世界にはもっと沢山ライナー様がご興味を引かれる事があるはずです」
「ウィノラ、さっきから様子がおかしい気がするんだが」
そっと触れられた頬をそっさに振り払う。驚きで固まってしまっていると、再びライナーの指先が顎に触れた。
「何かあったのか? 何か気にいらない事があるなら言葉にして欲しい。俺はバラードのようにマメな方ではないし、女性の気持ちを読むのも得意ではないんだ」
「……ルマ姉さんに」
「ん? デルマに?」
ライナーは小さな声を聞き取ろうと耳を近づけてきた。ウィノラは勢いよく顔を上げると、大きな声で言った。
「デルマ姉さんが近づいた時、ライナー様のお顔が赤くなっておられましたッ!」
沈黙が流れる。ウィノラは激しい後悔に飲まれながらその場を離れようとした時だった。後ろから大きな腕にすっぽり収められ、身動きが取れないままライナーの体温と香りに包まれていた。
「……俺の目は節穴だな」
「ライナー様?」
「君が高級娼婦だなんて、よく信じたものだ」
「酷いです! 確かにデルマ姉さん達の方が……」
その瞬間、抱き込んできていた腕の力が更に強くなった。
「デルマの事は勘違いだ。さっきのはその、つまりだな。君の家族達に認められた気がして、赤面してしまったと思う。そういう自覚はある」
ウィノラは緊張しながらもゆっくりと振り返ると、腕の力が緩くなる。宥めるようにそっと広い背中に腕を回した。たったそれだけでライナーの大きな身体が強張ったのが分かった。顔を覗こうとすると思い切り硬い胸に押し付けられて阻止されてしまう。今度は無理やり顔を上げようとするウィノラと、阻止するライナーとの攻防が始まった。
「もしかして照れています?」
「ウィノラこそ焼いていただろ?」
「ええ、焼いていましたよ。だってライナー様が愛しいんですもの」
その瞬間、一際大きく身体が跳ねたのが分かった。
「私もしかしたらライナー様を困らせるのが好きなのかもしれません」
呟くと頭上に短い口づけが降ってきた。そっと顔を上げようとすると今度は押し付けられる事はなく、少し不満そうな薄金色の瞳と目が合い、口元は小さく微笑んでいた。
「この調子じゃ俺はずっとウィノラには敵わないような気がするな」
「知っていました? 私これでもギルベアト帝国の皇女なんです」
すると再び頭頂部に口づけが降ってくる。そして耳元で囁かれた。
「もちろん、お生まれになるのを首を長くしてお待ちしておりましたよ」
元エミル王国の王城。その全てはそのまま使用され、ギルベアト帝国から遣わされた新しい支配者の住居となっていた。
「こちらでございます」
案内されたのは豪華な貴賓室で、中に居たのは部屋の造りに気後れしているような新領主の姿だった。
「兄上、エデル、ライナー卿、お久し振りです。それと……、姉上とお呼びすれば宜しいのでしょうか」
立ち上がったギルベアト帝国の第五皇子リーヴィスは、少し戸惑った様子でウィノラを見た。
「ウィノラで結構です、リーヴィス殿下。今は領主様とお呼びした方が宜しいでしょうか?」
「私の事もリーヴィスで構いませんよ。それにどうせ領主というのも一時的なものでしょうから。ギルベアト帝国の内情が落ち着けば、いずれ適任者が着任するはずです」
「リーヴィス様、お客様をこのまま立たせておくのはいかがなものかと存じますが」
「ああ、そうでしたね! どうぞお掛け下さい。ウィリアムは私の護衛兼、侍従として共に来ました」
「どうも」
「こら、ウィリアム! 相手は王族と公爵家なのだぞ。いつも礼儀正しいお前がどうしたんだ」
それでもそっぽを向いているウィリアムに疑問を感じていると、ライナーは肩を揺らして笑っているように見えた。
「ライナー様? どうかされましたか?」
「いや別に。しばらくの間滞在する事になるから宜しく頼むよ」
「よくもぬけぬけと!」
「ど、どうしたんだウィリアム」
リーヴィスが慌てる素振りも楽しんでいるかのようにライナーがくすりと笑うと、ウィリアムは更に火が付いたように顔を真っ赤にして腰の剣に手を伸ばした。
「ウィリアムッ!」
珍しく冷えた声のリーヴィスにウィリアムは渋々剣から手を離すと、扉近くに下がって行ってしまった。
「もしやライナー卿はウィリアムと顔見知りでしょうか? ウィリアムは元々ガリオン兄上の側近だったので、そうだとしても驚きませんが」
「ええ知っています。少し悪ふざけをしてしまったようで申し訳ありません。でもリーヴィス殿下に同行していたんですね」
「陛下が同行させたのです。ガリオン兄上が皇帝になられて、軍団も騎士団も再編成されましたから、その時ウィリアムは軍団を抜け、私に同行と命令が下った訳です。ライナー卿が帝都を離れていらした時ですね」
「ウィリアムを手放すとは思いませんでした」
「きっと私の監視でしょう。私は兄上に比べたらずっと出来損ないですから」
リーヴィスは自嘲気味にそう言った。
「それでわざわざ皆様お揃いの理由を伺っても?」
ウィノラは少しだけ前に出ると、緊張で両手を握り締めた。
「エミル領で保護している魔女達に会わせて下さい! その中に私の大事な家族がいるかもしれないんです!」
するとリーヴィスは僅かに目を見開いて、薄く唇を引いた。
「……隠している訳でもありませんしね。エミル王国を解体する時に知り得た事は全て、皇帝陛下にご報告申し上げているのでご案内致しましょう」
リーヴィスは王城の中をどんどん進んでいくと、やがて地下に向かい出した。嫌な予感がしてしまう。この国でも魔女達はやはり地下に捕らわれているのだろうか。無意識に震え出す身体を抑えるように抱え込むと、不意に前を歩いていたライナーが振り返ってきた。
「ウィノラ、手を繋ごうか?」
「なんでですか?」
「怖がっているようだったから。もしかして泣いているんじゃないかと思って」
クスクスと笑われ、ウィノラは思い切りライナーを追い越した。
「そんな訳ありません! 平気です!」
「そうか、それは良かった」
意地悪そうな言葉のはずなのにライナーの声は優しくて、いつの間にか不安は消え去っていた。
薄暗く長い通路の先から光が溢れ出す。無意識に足早に進むと、そこには神殿のような空間が広がっていた。閉鎖的な物ではなく、石の柱が建っているがその先は草原へと続いており、陽の光が燦々と降り注ぐ明るい場所だった。リーヴィスは隣に来ると得意げに言った。
「王城のあの通路は外の神殿に繋がっているのですよ」
リーヴィスの言う通り、広い神殿の先には外が見える。四方八方から入る事の出来る神殿は開かれた美しい場所だった。
「てっきり地下に向かっているのだと思っていました」
「王城自体が山の上にあるので単純に下って来ただけですよ。魔女達はこの先の村にいますよ」
「この先の村、ですか?」
「とは言っても魔女だけではなく、他の住民も住んでいる普通の村です」
「隔離しているんじゃないんですか?」
「まさか! その目で見た方が早いかもしれませんね」
ウィノラは走り出していた。神殿を突っ切り、草地を踏みしめる。坂を転がるように息を切らしながら見えてきたのは、ポツンポツンと点在する家々と笑い声。それに人々の姿だった。村の中に入って行き、アデリータ達を探す。走りながら周囲を探す姿に村人達は警戒しながらウィノラを見てきた。
「アディ! マイノさん! ディアンヌ! イリーゼ姉さん! デルマ姉さん! 皆いないの?!」
じんわりと涙が溜まってくる。ふと足を止めた時、遠くから名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ウィノラ! ウィノラ――!」
大手を振りながら走って来たのはマイノだった。ウィノラが向かうよりも先にマイノがガバっと身体を掴み、抱き上げてくる。そしてそのまま子供のように高い高いをされた。
「ちょ、ちょっと降ろしてよ! 恥ずかしいから!」
「ウィノラ! 良かった、無事だったんだな。いや無事だとは知っていたが、まさかこんなに早く会えるなんて思いもしなかったぞ!」
その瞬間、マイノの首に抱きついていた。
「皆はどこにいるの? 無事よね? 大丈夫よね?」
するとマイノは苦しそうに顔を上げて、後ろを振り返った。
「こら、姉を置いていくんじゃないよ!」
息を切らしながら走ってきたのはアデリータとイリーゼ。そしてその後ろにはデルマとディアンヌも居た。
「良かった、皆、本当に良かった……」
マイノに抱き上げられたままアデリータ達の元に行くと、一斉に抱き合って泣いた。
「ディアンヌも無事で良かったよ!」
「ウィノラ、ごめんね。私のせいで皆を危険な目に遭わせてしまったわ」
声を詰まらせたディアンヌの目は真っ赤で、何度も謝るその身体をきつく抱き寄せた。
「皆一緒に逃げて来られたの? アディとディアンヌは捕らえられていたのに」
「そこは愛しい人の出番じゃない。バラードが娼館の女達を集められるだけ集めて先にエミル王国に逃がしてくれていたのよ。私達は後から合流したのよ」
「でもこんな風に皆一緒にいられるなんていくら何でも……」
「それはほら、バラード様とあの御方のお力よ」
デルマがいたずらっぽく後ろを振り向くと、懐かしい顔に思わず目に涙が溢れていた。
「ロラ! ロラなの?!」
走ってくるその姿を思い切り抱き締めると、その後ろには息を切らした中年の男性が追いついた所だった。
「待って、待ってくれ、ロラ……もう」
どこからどう見ても良くて商人。中肉中背で髪の毛は黒々として若く見えるが、どうしても田舎臭さが抜けきらない。顔も冴えないが良い人が滲み出ている。そんな男性だった。
「ウィノラさん、こちらヘイワード男爵様です。旦那様、この女性がウィノラです。私を旦那様の元へ行かせてくれた恩人ですよ」
ヘイワードと聞いて忘れる訳がない。実在しているかも怪しかったが、とても親近感のある名前に呆けていると、ヘイワード男爵は少し照れたようにぺこりと頭を下げた。少し薄くなっている頭頂部も雰囲気と相まって中々愛嬌のある男性に見えてくるから不思議だ。驚いたように見つめていると、ロラは不安そうに顔を覗いてきた。
「もしかして惚れていないですよね? 駄目ですよ、旦那様は私の旦那様なんですからね」
「そんな訳ないじゃない! ただお名前にとても親近感があって、ただそれだけよ!」
「名前に親近感ですか?」
ロラは分かっていないがヘイワード男爵は察したように微笑んでいた。
「ヘイワード男爵様が皆を助けて下さったのですか?」
「いえいえ! 私は少し協力させて頂いただけで、クラウゼ伯爵のご尽力の賜物です」
するとデルマは得意そうに言った。
「バラード様はエミル王国と魔女についてずっとお調べになられていたの。ここだけの話、バラード様の御母上も魔女だからね。それでエミル王国の魔女の扱われ方を知ったバラード様は、いつかこの地に魔女達を移住させたいという計画を立てていらしたのよ。素敵よね、格好いいわよね、さすがバラード様だわ」
「もしかして、クラウゼ伯爵は私達が魔女だってずっとご存知だったの?!」
「そうよ。え、知らなかったの?」
「知る訳ないじゃない!」
「まあまあ、その辺で。ここはクラウゼ伯爵がエミル王国の貴族のお名前で買い取った土地なのです。国が解体され、その権力もどこまで影響するかもう分かりませんが、取り敢えずはこのまま所有出来る事になっているようです。今後ギルベアト帝国が落ち着き本格的にエミル領の改革に乗り出したら、その時はまた変わってしまうかもしれませんけれどね。ですが隣の領地は私が所有する領地なのでその辺りもご安心下さい」
「クラウゼ伯爵様はやっぱり凄いお方だったのね。というか、デルマ姉さんへの愛を感じるわ」
「ふふ、私ったら愛されているの」
「バラードはデルマに夢中だからな。それに先日皇帝陛下が帝国中に魔女の歴史の誤りについて新たな事実を発表したから、少しずつだが浸透していくだろう」
聞こえてきた声に振り返ると、気を使ったのかわざと遅れるようにして到着したライナーだった。
「魔女が原因で帝国が滅びかけたという事実はなく、魔女は常に賢く人々を導く能力を持っていたが、それを妬んだ時の皇帝が魔女を恐れて滅ぼそうとしたのが争いの始まりだったそうだ。帝国民が受け入れるには少し時間の掛かりそうな内容ではあるがな」
「ライナー様! ライナー様もウィノラを深く愛していますよね? そうじゃなきゃウィノラを探して数ヶ月も旅をしたりなんかしませんもんね?」
デルマに迫られたライナーは頬を赤くして咳払いをした。
「ウィノラ! ちょっとこっちに来なさい!」
デルマは愛想笑いを浮かべながら、ライナーからウィノラを引き離した。
「いいわね? 絶対、ぜ――ったいにライナー様を手放しては駄目よ?」
「な、突然なに!」
とっさに後ろを振り向くと、ライナーは聞こえていないふりをしているのかそっぽを向いている。それでも何事かとアディ達がこちらを見ていた。
「いいからよく聞きなさい! 家族はもちろん大事だけれど、いつかはそこから巣立つものなのよ。そして添い遂げたいと想う男の元に行けたなら最高に幸せだと思わない?」
それは叶ったデルマだから言える事だと思う。望まぬ結婚をする者は多い。それに望んだとしても上手くいかない事もある。そんな人達を沢山見てきた。自分も望まぬ結婚で生まれた子の一人なのだから、デルマのように真っ直ぐにそう言える自信などどこにもない。
ライナーは公爵家を継ぐ人。ギルベアト帝国で間違いなく大きな権力を手にする人。それに比べ、自分はすでに死んだとされる皇女。そして帝国で明るみとなった魔女なのだ。今回の件で、実は帝都に魔女や魔女の子孫が多くいたというのは周知の事実となった。実はいつも買い物に行っていた店の店員が魔女だった、妻も知らずに魔女の血を引いていたなど、魔女を嫌う帝都の人々の近くにこそ魔女は根付いていたのだ。しかしそれと魔女という存在を受け入れるかはまた別問題。だからこそ、今現在のライナーの立場には危ういものがある。
魔女の血は引いていないが、魔女を支配下におき退散させるという姿を多くの帝国民が目にしてしまった。フックス家=魔女という印象が強く付いてしまった以上、今後ライナーはフックス家の立場を確固たるものにするべく、大きな困難が待ち受けているに違いない。そんな大事な時に魔女のある自分が側にいていいはずがなかった。
「ウィノラ、私達は自由になったのよ。娼館はもうない。誰にも魔女だと隠さなくてもいい。誰からも逃げる必要なんてないの。それにあんたは皇女なんだからもっと堂々としていればいいの」
すると、今度はいつの間にかそばに来ていたイリーゼが背中をさすってきた。
「デルマは本当に楽観的なんだから。ウィノラ、帝都に戻ればきっとまだ魔女への風当たりは強いわよ。悪意を向けてくる人もいると思う。エミル王国はね、魔女を保護なんてしていなかったのよ。むしろ崇拝していたの」
「崇拝?! 魔女を?」
「ここに来る前に神殿に行ってきたでしょう?」
「神殿を通って来たけれど、急いで来たからほとんど見ていなかったわ」
「もう! 神官様がいらっしゃるから戻ってお勉強して来なさいッ!」
イリーゼらしい言い方に笑っていると、アデリータが背中を押してきた。
「何も心配する事はないさ。あんたには“真の統治者”が付いているんだからね。どこにいても、何をしていても私達は家族だよ」
そう言って視線が上に向く。顔を上げるとそこには手を差し出してくれていたライナーが立っていた。
「家族が見つかって良かったな、ウィノラ」
ウィノラが少し照れながらその手を掴むと、イリーゼが急かすように背中を押してきた。
「ライナー卿、ウィノラを頼みますよ」
「承知した。命に代えても守ってみせる」
当のウィノラ本人はライナーの言葉を理解出来ず呆気に取られていると、アデリータとマイノはどういう訳が目を真っ赤にして鼻を啜っていた。
「さあ行こうか」
繋がれた指先がぎゅっと握られる。ウィノラも力の加減が出来ない程に握り返した。
神殿に戻るとそこには放心したオーティスとエデルが立っていた。さっき走り抜けた広い空間は、白い円柱で支えられた古い神殿で、奥の祭壇の上には、見上げる程大きな背中合わせの男女神の巨像が建っていた。
「これは……」
祭壇の前にいたリーヴィスは神官に頷くと、神官がおもむろに話し出した。
「これはこの地に降り立った女神様の像でございます」
「女神様? 二神いらっしゃるのに?」
「女神様は二面性をお持ちの女神でいらっしゃいますゆえ、このような姿をとられたのだと思われます」
「それじゃあ一神という事なのね」
「ウィノラ様、魔女は元々この女神様の血を引く子孫だと言われているのですよ」
「魔女が女神の子孫ですって?!」
神官は小さく咳払いをして続けた。
「我が国に伝えられている魔女の伝説はギルベアト帝国のものとはかなり違います。遥か昔、女神の子孫には不思議な力が宿っておりました。火や水、風などの自然との繋がりを持ち、フェッチと呼ばれる分身を作り出す者達は、人々を導く統治者の素質があるとして、自然とこの地に散らばる部族の長や相談役としての仕事に就いていたそうです」
「それはエミル王国が出来るずっと前と言う事ですか?」
「そうですね、ずっと昔のお話でございます。まだエミル王国になる前のこの地は、幾つもの異なった部族が支配しておりました。やがてそれらが一つにまとまり、エミル王国が出来たのです。もうお分かりかもしれませんが、王族の先祖はより魔女として優秀な者でした。しかし、ギルベアト王国は次々に勢力を伸ばし、やがてこのエミル王国にも迫っていました。女神の子孫達は力を合わせて戦いましたが、数には勝つ事が出来なかったのです。戦いに破れると分かったエミル王国は力を奪われる事を恐れ、女神の力を持つ者達を散り散りにさせ、女神の伝承を隠し、女神の力が悪用されないように魔女の噂を流したのです」
「それじゃあなぜルシャード陛下は魔女の秘密を知っていたんでしょう」
「もしかしたら奪われた戦利品の中にそれを伝える何かが紛れていたのかもしれません。女神に関する何かが。魔女となった女神の子孫達にはフェッチを顕現する者達がいたので、歴史は途絶える事なくフェッチから魔女達に脈々と受け継がれ、やがて“真の統治者”を待ち望むようになったのでしょう」
神官はライナーに深々と頭を下げた。
「その“真の統治者”というのは一体どういう意味なんだ? 俺自身、この力がよく分かっていないんだが」
「それは女神の祝福そのものですよ。女神が祝福を授けると真から想い、フェッチが承諾した者にのみ宿る証のようなものです」
「それじゃあもしかして血を浴びるのは関係ないの?」
すると神官は怪訝そうに顔を顰めた。
「そのような事を女神様がお望みになられる訳がないではありませんか。祝福は本来、女神の力を強く引いた者が与えられる贈り物です。血など滅相もない」
「そんなぁ」
ウィノラはエデルと共に首元を擦ると、苦い顔をした。
「結局父上は勘違いをされていたという事だな。ウィノラの癒やしの力も、エデルが持つ力も本来強い力を持つ者の証拠だったという訳か。血を浴びたらいいだなんて、どこでそう歪んでいったのか」
オーティスは憐れむようにエデルの頭を抱き寄せた。
「それでもきっとギルベアト帝国には魔女が国の転覆を図ったという考えは抜けないだろうから、いくらそれは過去の王室が捏造した歴史だと言っても受け入れるのは安易ではないだろうな。現に暴走した魔女が帝都を襲っている訳だし」
「前王室の皆様はどう過ごされているのですか?」
するとリーヴィスは申し訳なさそうに言った。
「王族の方々の身柄は現在軟禁状態にあります。元々今回の戦争のきっかけはセリア王妃様が起こした事のようでした。幼い頃にこの国に嫁ぎ知った事実は、幼く純粋なセリア王妃様のお人柄を歪ませるには大き過ぎたのかもしれません。ギルベアト帝国に強い憤りを感じ、それがやがて制裁か粛清のような考えに至ったのでしょう」
「国王様は関与していないという事?」
「全く知らなかったという事はないと思います。実際に今回使われた魔女の力を増幅させる石は王族に厳重管理されていたものらしいです。魔女が死ぬと発生する、力が凝縮された物というくらいにしか分かっていないかなり危険な代物をセリア王妃様お一人で持ち出せるとは思えません。セリア王妃様は今だに黙秘しているようのでなんとも分かりませんが、エミル王国の王室自体はとても穏やかな人々でとても帝国に歯向かうような方々ではありませんでした。軟禁にも応じ、ギルベアト帝国の判断に任せるという姿勢を貫いておられます。しかし……」
「しかし?」
言いにくそうなリーヴィスは、意を決したように顔を上げた。
「国王様はセリア王妃様をご心配されておられました。幼い頃の政略結婚でしたでしょうに、きっと何か強い絆があったのかもしれません。ですが、セリア王妃様がこの地に戻る事は二度とないでしょう。ガリオン兄上はお許しにはならないでしょうから」
「これだけの事をしでかしたんだからしょうがないでしょう」
苦い表情をしながら話しているオーティスは、きっとエデルの事を思っているのだろう。ちらりと目が合うとオーティスは小さく首を傾げてくる。ウィノラは何でもないという風に首を振った。
「ライナー卿、少し二人でお話宜しいでしょうか」
リーヴィスはライナーを誘うと神殿の奥へと入って行ってしまった。
「エミル領の領主になるのは遠慮しておきますよ」
「やっぱり分かってしまいましたか」
神殿の奥は祈りの間になっており、狭い小部屋が幾つもある。リーヴィスは慣れた様子でその部屋の椅子に座った。
「振り分けた領地の運営は上手く行きそうですか?」
「振り分けたといっても元々の領主達に任せる場所の方がほとんどです。それに開いている場所はすでにこちらが信頼を置ける者に引き継いでおりますから、大きな問題にはならないと思います」
「私の友人もその大事な命を受けたと感謝しておりましたよ」
「それは良かったです」
リーヴィスは小さく笑うと、不意に身体から力が抜けたように椅子に座った。
「実はエミル王国に来てから何度もここに足を運んで来たんです」
「随分と信仰熱心だったのですね」
「ギルベアト帝国では皇帝陛下を神としますよね。でもここには不変の神がいたんです。誰の事も侵さず、従わせず、傷つけず、ただ愛を向け、力でもって皆を守り導く。それが私の思う真の統治者のように感じました」
「この地が気に入ったのならそれこそリーヴィス殿下が適任だと思いますよ。私は偶然ウィノラに力を与えてもらっただけで、あなたのような信仰心はありませんから」
すると激しくリーヴィスは首を振った。
「私では駄目なんです! あなたのような人を惹き付ける力がなくてはいけないと思うのです。今後この地は大きく揺れる事になります。その内いずれ領地に不満を出す者や反乱を起こす者、領民達の不満もあるかもしれません。それらに対処出来る者が必要なのです」
その時、扉が叩かれた。
「なんだ、今は大事な話中なんだ」
「それが急ぎご報告したい事がございます」
リーヴィスは扉を開けると、ウィリアムが中にいたライナーを見るなり嫌そうな顔をした。
「北西と北の領地でそれぞれ領主邸への暴動が起きているようです。まだ大きなものではありませんが、いかがなさいますか?」
「それなら一つは私が行こう。もう一箇所はお前が行ってくれ。くれぐれも領民達を傷つける事はしないように。いいな? 今はまだ新領主になって制度にも慣れていないだろうからいざこざが多いんだ。熱くならずに対話を心がけてくれ」
ウィリアムは敬礼するとその場を後にした。
「あのウィリアムに対話を望むんですか? 口よりも手が先に出る男ですよ」
「確かにここに来たばかりの頃は私にもそうでした」
するとライナーは目を瞬かせた。
「どうやって大人しくさせたのです? ガリオン殿下の側近として常に戦場にいた男です」
ガリオンの近くにいたから皆気が付いていないだろうが、ウィリアムは間違いなく帝国屈指の軍人で間違いなかった。そうでなければガリオンが側に置くはずがない。
「もちろん剣を交える事もありましたが、やはりそこは私が皇子という事や、陛下から直接のご命令という事もあり最後には引いてくれていましたよ」
「……なるほど、ここにも自分の能力に気が付いていない人がいたという訳ですね」
「どうかしましたか?」
ライナーは口元の緩みを元に戻すと、リーヴィスに頭を下げた。
「やはりこの地はあなたが治めた方がいいと思っただけです。帝国に戻った際には私からもそのように陛下にご助言致しましょう」
「そんな! 私の話を聞いていましたか?!」
「大丈夫ですよ、陛下が私の助言をそう素直に受け入れる訳がありませんから」
後ろではリーヴィスが困ったように後を付い来る。部屋を出た時、ウィノラの姿を探したがどこにも見えなくなっていた。
「オーティス殿下、ウィノラはどこです?」
「ウィノラなら……」
オーティスの視線の先には、女神像をじっと見上げるウィノラが目に入った。
「姿が見えなくなるとどうも不安になるな」
後ろから声を掛けても反応はない。ライナーは更に一歩近付き、その頬にそっと触れた。跳ね上がる程に肩をビクリとさせると、ライナーを見上げた。
「随分熱心に見ていたみたいだな」
「そうですか?」
「今日は驚く事ばかりだな。世界にはまだまだ知らない事ばかりだと思い知らされたよ」
「……そうですよ。世界にはもっと沢山ライナー様がご興味を引かれる事があるはずです」
「ウィノラ、さっきから様子がおかしい気がするんだが」
そっと触れられた頬をそっさに振り払う。驚きで固まってしまっていると、再びライナーの指先が顎に触れた。
「何かあったのか? 何か気にいらない事があるなら言葉にして欲しい。俺はバラードのようにマメな方ではないし、女性の気持ちを読むのも得意ではないんだ」
「……ルマ姉さんに」
「ん? デルマに?」
ライナーは小さな声を聞き取ろうと耳を近づけてきた。ウィノラは勢いよく顔を上げると、大きな声で言った。
「デルマ姉さんが近づいた時、ライナー様のお顔が赤くなっておられましたッ!」
沈黙が流れる。ウィノラは激しい後悔に飲まれながらその場を離れようとした時だった。後ろから大きな腕にすっぽり収められ、身動きが取れないままライナーの体温と香りに包まれていた。
「……俺の目は節穴だな」
「ライナー様?」
「君が高級娼婦だなんて、よく信じたものだ」
「酷いです! 確かにデルマ姉さん達の方が……」
その瞬間、抱き込んできていた腕の力が更に強くなった。
「デルマの事は勘違いだ。さっきのはその、つまりだな。君の家族達に認められた気がして、赤面してしまったと思う。そういう自覚はある」
ウィノラは緊張しながらもゆっくりと振り返ると、腕の力が緩くなる。宥めるようにそっと広い背中に腕を回した。たったそれだけでライナーの大きな身体が強張ったのが分かった。顔を覗こうとすると思い切り硬い胸に押し付けられて阻止されてしまう。今度は無理やり顔を上げようとするウィノラと、阻止するライナーとの攻防が始まった。
「もしかして照れています?」
「ウィノラこそ焼いていただろ?」
「ええ、焼いていましたよ。だってライナー様が愛しいんですもの」
その瞬間、一際大きく身体が跳ねたのが分かった。
「私もしかしたらライナー様を困らせるのが好きなのかもしれません」
呟くと頭上に短い口づけが降ってきた。そっと顔を上げようとすると今度は押し付けられる事はなく、少し不満そうな薄金色の瞳と目が合い、口元は小さく微笑んでいた。
「この調子じゃ俺はずっとウィノラには敵わないような気がするな」
「知っていました? 私これでもギルベアト帝国の皇女なんです」
すると再び頭頂部に口づけが降ってくる。そして耳元で囁かれた。
「もちろん、お生まれになるのを首を長くしてお待ちしておりましたよ」
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