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9章 ハンカチ
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夜会当日。イレネはお腹に巻かれたリボンの隙間にハンカチをそっと忍び込ませた。偶然実はタイストが蜥蜴好きだという事を知り、カティヤに教わりながら刺繍したレースのハンカチだった。これで身支度は完璧。タイストが準備してくれたドレス一式は、見事なまでに全身タイストの金色の髪の毛と同じ色をしており、宝石はタイストの瞳の色と同じ灰色掛かったダイヤモンドだった。首元は喉までレースの生地で覆うハイネックの形で、胸元はプリーツが入りふんわりとしていて腰はリボンで引き締められている。プリーツのおかけであまりない胸が隠されたのは良かったが、首から鎖骨にかけては自信があっただけに、出したい気持ちもあった。
「お待たせしまし……」
タイストの正装は何時にも増して格好良さが倍増していた。髪の毛は後ろに撫でつけられ、黒のジャケットに光沢のある銀色のクラヴァットが良く映えていた。
「旦那様、とっても素敵です。……旦那様?」
声を掛けるもタイストは固まっている。すると突然指が耳に伸びてきた。
「私の色を纏ったあなたは更に美しいですね」
そう言って流れるような仕草で後ろにまとめていた髪先をさらうように前に持ってくると、その毛先に口づけを落としてきた。女性ならば誰もが溶けてしまいそうな言葉を放ちながらじっと見つめてくるタイストに、イレネは腰が砕けてしまいそうだった。
「旦那様こそ、その、とてもお似合いです」
そう返すのが精一杯だった。
「それはとても光栄です。イレネのこの髪色と同じですよ。しかしイレネの銀糸のような美しい色を出す事は誰にも出来ませんね」
自分でも真っ赤になっているのが分かる。少し離れた場所でトルスティ達の生暖かい視線から逃れるように足を踏み出した。
「旦那様、もう向かいましょう。陛下方をお待たせする訳には参りません」
「まだ十分に間に合いますよ。ダグラス、ゆっくり頼むよ。イレネの美しい姿を一人で堪能したいんだ」
「た、堪能!?」
驚いている間にも馬車に乗るように促されてしまう。その時、ダグラスが一瞬タイストに耳打ちをした。しかしタイストは頷くだけですぐに馬車に乗り込んできた。
宣言通りにタイストは向かいに座りじっとこちらを見てきている。完璧な容姿のタイストに鑑賞される事程、居心地の悪いものはない。話題を逸らす為に持ってきていたハンカチを差し出した。
「あまり上手ではありませんが、日頃の感謝を込めて刺繍しました。受け取って頂けますか?」
長い指先に触れた瞬間、押し込むようにハンカチを渡した。タイストは蜥蜴の刺繍の箇所を食い入るように見つけている。そしてパッと顔を上げてきた。
「これをイレネが?」
「教えてもらいながらですけど」
「私の為に?」
「はい、その模様でしたらお喜び頂けるかと思いまして」
「とても嬉しいです。ありがとうございます!」
喜んでいる姿に安堵して息を漏らした。
「今日の夜会にはウェクスラー小侯爵様のいらっしゃるんでしょうか?」
その瞬間、表情が曇ったのが分かった。
「あの、先日あまりよい最後ではなかったので謝罪をと思いまして。宜しいでしょうか?」
「駄目ですね」
「え?」
「いや、別に駄目ではないんですが、恐らくハララムは気にしていませんよ。むしろ向こうが失礼を働いたんですから、謝罪に来るのはハララムの方でしょう」
「ですが旦那様のご友人ですし、良い印象を持って頂きたいんです」
「……つまりは、私の友人だから好かれたいと?」
当たり前の事を聞くものだと思いながら頷いた。
「そうですか。そうでしたら構いません。ですが私と一緒にという条件でもいいですか?」
「もちろんです! むしろ旦那様がいらっしゃらないとどうお話していいのか分かりません」
情けない事を言っていると分かっているのに、タイストの機嫌は何故がどんどん良くなっていくのだった。
「イレネ、そちらに行っても?」
「こちらですか? 少し狭いですよ」
“大丈夫です”と、隣りに来たタイストに抱き上げられ、膝の上に乗せられてしまった。
「旦那様!? あの、これは一体……」
頭が混乱していると首のすぐ後ろから楽しそうな声がした。
「あまり動かないで下さい。それにこの方がお尻が痛くないですよね?」
「気付いていらしたんですか?」
「もちろんです。イレネの事は良く見ていますから隠そうと思わない方がいいですよ。ですが馬車の装飾を一度見直しましょう。追々ですが領地まで向かう事になりますし、長旅になります。それまでに何とかしてイレネのお尻を守ると誓います」
何の誓いをされているのか羞恥と居心地の悪さで震えていると、面白がっているのか首筋に唇が当たる感触があった。
「旦那様? 何をしているんです?」
「夜会では忙しくなるでしょうから、イレネを補給しているんですよ」
「そんな所から補給は出来ません!」
「イレネは知らないだけですよ。ちゃんと出来るんです。ほら」
そう言って深呼吸されると熱い息が薄いレースの生地を通り過ぎて、むしろ肌に直接掛かっているようだった。
「ッ」
小さな声が漏れてしまう。タイストはその声を見逃さなかった。
「イレネ、少しだけ声を我慢して下さい」
その瞬間、レースの生地の上から首筋を舐められ、そのまま耳を食まれた。
「ヒャッ!」
馬車の揺れる音よりも大きくなってしまったかと思い、自分で口を押さえた。
「可愛らしい声は聞きたいんですが、ダグラスに聞こえるのは絶対に嫌なんです。だからその手と取らないで下さい」
下から覗き込むようにそう言われれば頷くしかない。その瞬間、ドレスの下に手が入ってきた。声にならない声を上げて必死に首を振る。しかしタイストのゴツゴツした手はあっという間に下着に到達し、薄い布の上からするりと撫でられてしまった。
「少し湿っていますね。馬車の中は暑かったですか?」
コクコクと頷くと、タイストは耳から首に何度も唇を往復させながら緩く撫でてきた。
「これでも日々丁寧に抱いているつもりなんです。イレネはどうすれば良い反応をしてくれるのか、もう知っているんですよ?」
そう言って下着がゆっくりとずらされていく。自分でもソコは確実にぬかるんでいると分かる部分にタイストの指が迫ってくる。そしてヌプッという感覚があった瞬間、馬車はゆっくりと止まっていった。
「残念ですね、もう着いてしまいましたか。さすがにゆっくりといっても屋敷から王都はまではさほど離れていないですからね」
少しだけ触れていた指先が離れていく。安堵したのも束の間、今度は落ち着かない居心地の悪い感覚だけが残ってしまった。
「それじゃあ行きましょうか」
ドレスの下から手が抜かれそうになった瞬間、腕は再びドレスの中に潜り、一気に下着を横にずらしてきた。何が起きたのか分からないままでいると、タイストは持っていたハンカチで秘部をそっと拭いたのだった。
「こんなに濡らしていては気持ち悪いでしょう。さあ、これで大丈夫です」
ハンカチをそのままポケットにしまおうとするタイストの腕を力一杯握り締めた。ぶら下がったと言ってもいい。
「旦那様、そのハンカチは私がお預かり致します!」
「駄目です。これはイレネから貰ったばかりの大事なハンカチなんですからもう私の物です」
「返してと言っているんじゃありません! 洗ってから改めてお渡し致しますから!」
しかしタイストに力で叶うはずもなく、ギリギリとした攻防の中、愛液を染み込ませたハンカチがタイストの胸の内ポケットにしまわれてしまった。
「旦那様、奥様、王城へ到着致しました」
扉が叩かれるのと共に膝から飛び降りる。しかしタイストの手をギュッと握って食い下がった。
「早く洗わないと染みになってしまいます。それに、に、臭いも……」
「旦那様? いかがないさいましたか?」
「ほら、ダグラスが呼んでいますよ。行きましょう」
タイストが屈みながら馬車を出ていく。するとそれはそれは完璧な所作で手を差し出してくれた。
「イレネ、皆待っていますよ」
そう言われればここでハンカチを返してと騒ぐ訳にはいかない。タイストの胸元をじっと見つめながら渋々馬車を降りるしかなかった。
「お待たせしまし……」
タイストの正装は何時にも増して格好良さが倍増していた。髪の毛は後ろに撫でつけられ、黒のジャケットに光沢のある銀色のクラヴァットが良く映えていた。
「旦那様、とっても素敵です。……旦那様?」
声を掛けるもタイストは固まっている。すると突然指が耳に伸びてきた。
「私の色を纏ったあなたは更に美しいですね」
そう言って流れるような仕草で後ろにまとめていた髪先をさらうように前に持ってくると、その毛先に口づけを落としてきた。女性ならば誰もが溶けてしまいそうな言葉を放ちながらじっと見つめてくるタイストに、イレネは腰が砕けてしまいそうだった。
「旦那様こそ、その、とてもお似合いです」
そう返すのが精一杯だった。
「それはとても光栄です。イレネのこの髪色と同じですよ。しかしイレネの銀糸のような美しい色を出す事は誰にも出来ませんね」
自分でも真っ赤になっているのが分かる。少し離れた場所でトルスティ達の生暖かい視線から逃れるように足を踏み出した。
「旦那様、もう向かいましょう。陛下方をお待たせする訳には参りません」
「まだ十分に間に合いますよ。ダグラス、ゆっくり頼むよ。イレネの美しい姿を一人で堪能したいんだ」
「た、堪能!?」
驚いている間にも馬車に乗るように促されてしまう。その時、ダグラスが一瞬タイストに耳打ちをした。しかしタイストは頷くだけですぐに馬車に乗り込んできた。
宣言通りにタイストは向かいに座りじっとこちらを見てきている。完璧な容姿のタイストに鑑賞される事程、居心地の悪いものはない。話題を逸らす為に持ってきていたハンカチを差し出した。
「あまり上手ではありませんが、日頃の感謝を込めて刺繍しました。受け取って頂けますか?」
長い指先に触れた瞬間、押し込むようにハンカチを渡した。タイストは蜥蜴の刺繍の箇所を食い入るように見つけている。そしてパッと顔を上げてきた。
「これをイレネが?」
「教えてもらいながらですけど」
「私の為に?」
「はい、その模様でしたらお喜び頂けるかと思いまして」
「とても嬉しいです。ありがとうございます!」
喜んでいる姿に安堵して息を漏らした。
「今日の夜会にはウェクスラー小侯爵様のいらっしゃるんでしょうか?」
その瞬間、表情が曇ったのが分かった。
「あの、先日あまりよい最後ではなかったので謝罪をと思いまして。宜しいでしょうか?」
「駄目ですね」
「え?」
「いや、別に駄目ではないんですが、恐らくハララムは気にしていませんよ。むしろ向こうが失礼を働いたんですから、謝罪に来るのはハララムの方でしょう」
「ですが旦那様のご友人ですし、良い印象を持って頂きたいんです」
「……つまりは、私の友人だから好かれたいと?」
当たり前の事を聞くものだと思いながら頷いた。
「そうですか。そうでしたら構いません。ですが私と一緒にという条件でもいいですか?」
「もちろんです! むしろ旦那様がいらっしゃらないとどうお話していいのか分かりません」
情けない事を言っていると分かっているのに、タイストの機嫌は何故がどんどん良くなっていくのだった。
「イレネ、そちらに行っても?」
「こちらですか? 少し狭いですよ」
“大丈夫です”と、隣りに来たタイストに抱き上げられ、膝の上に乗せられてしまった。
「旦那様!? あの、これは一体……」
頭が混乱していると首のすぐ後ろから楽しそうな声がした。
「あまり動かないで下さい。それにこの方がお尻が痛くないですよね?」
「気付いていらしたんですか?」
「もちろんです。イレネの事は良く見ていますから隠そうと思わない方がいいですよ。ですが馬車の装飾を一度見直しましょう。追々ですが領地まで向かう事になりますし、長旅になります。それまでに何とかしてイレネのお尻を守ると誓います」
何の誓いをされているのか羞恥と居心地の悪さで震えていると、面白がっているのか首筋に唇が当たる感触があった。
「旦那様? 何をしているんです?」
「夜会では忙しくなるでしょうから、イレネを補給しているんですよ」
「そんな所から補給は出来ません!」
「イレネは知らないだけですよ。ちゃんと出来るんです。ほら」
そう言って深呼吸されると熱い息が薄いレースの生地を通り過ぎて、むしろ肌に直接掛かっているようだった。
「ッ」
小さな声が漏れてしまう。タイストはその声を見逃さなかった。
「イレネ、少しだけ声を我慢して下さい」
その瞬間、レースの生地の上から首筋を舐められ、そのまま耳を食まれた。
「ヒャッ!」
馬車の揺れる音よりも大きくなってしまったかと思い、自分で口を押さえた。
「可愛らしい声は聞きたいんですが、ダグラスに聞こえるのは絶対に嫌なんです。だからその手と取らないで下さい」
下から覗き込むようにそう言われれば頷くしかない。その瞬間、ドレスの下に手が入ってきた。声にならない声を上げて必死に首を振る。しかしタイストのゴツゴツした手はあっという間に下着に到達し、薄い布の上からするりと撫でられてしまった。
「少し湿っていますね。馬車の中は暑かったですか?」
コクコクと頷くと、タイストは耳から首に何度も唇を往復させながら緩く撫でてきた。
「これでも日々丁寧に抱いているつもりなんです。イレネはどうすれば良い反応をしてくれるのか、もう知っているんですよ?」
そう言って下着がゆっくりとずらされていく。自分でもソコは確実にぬかるんでいると分かる部分にタイストの指が迫ってくる。そしてヌプッという感覚があった瞬間、馬車はゆっくりと止まっていった。
「残念ですね、もう着いてしまいましたか。さすがにゆっくりといっても屋敷から王都はまではさほど離れていないですからね」
少しだけ触れていた指先が離れていく。安堵したのも束の間、今度は落ち着かない居心地の悪い感覚だけが残ってしまった。
「それじゃあ行きましょうか」
ドレスの下から手が抜かれそうになった瞬間、腕は再びドレスの中に潜り、一気に下着を横にずらしてきた。何が起きたのか分からないままでいると、タイストは持っていたハンカチで秘部をそっと拭いたのだった。
「こんなに濡らしていては気持ち悪いでしょう。さあ、これで大丈夫です」
ハンカチをそのままポケットにしまおうとするタイストの腕を力一杯握り締めた。ぶら下がったと言ってもいい。
「旦那様、そのハンカチは私がお預かり致します!」
「駄目です。これはイレネから貰ったばかりの大事なハンカチなんですからもう私の物です」
「返してと言っているんじゃありません! 洗ってから改めてお渡し致しますから!」
しかしタイストに力で叶うはずもなく、ギリギリとした攻防の中、愛液を染み込ませたハンカチがタイストの胸の内ポケットにしまわれてしまった。
「旦那様、奥様、王城へ到着致しました」
扉が叩かれるのと共に膝から飛び降りる。しかしタイストの手をギュッと握って食い下がった。
「早く洗わないと染みになってしまいます。それに、に、臭いも……」
「旦那様? いかがないさいましたか?」
「ほら、ダグラスが呼んでいますよ。行きましょう」
タイストが屈みながら馬車を出ていく。するとそれはそれは完璧な所作で手を差し出してくれた。
「イレネ、皆待っていますよ」
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