拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ

文字の大きさ
12 / 14

#12 初めての感覚

しおりを挟む
(あれっ……今…………首筋に………………えっ??)

 突然訪れた柔らかい感触に、ユアの頭は理解が追い付かない。

ちゅ

ちゅ

ちゅう

「!!!」

 ぶわぁっと首から頭にかけて一気に熱が溢れ出る。ユージの唇が、ユアの首筋と鎖骨、耳に触れたのだ。

「はぁ…………ユージ様っ…………あの………………っ」

 何を言えばいいのか、何をすればいいのかがわからないユア。

 ユージの両手がユアの顔を包み込む。

「僕にキスされるの……嫌?」

(そんなわけ……!!)

「……嫌なわけがございませんっ……幸せすぎてどうすればいいのかがわからないのです……っ」

 ユージは優しく嬉しそうに微笑むと、ユアのほっぺにキスをした。思わず目を瞑るユア。

(ユージ様がっ……ほっぺにキス……キッス…………!!)

 そんな興奮も束の間、


ちゅう……


 反射的に目を開けるユア。ユージと自分の顔の間には、隙間と呼べるような隙間がないことをすぐに理解した。

(今、私の唇に重なっているのはユージ様の唇で……つまり私は今、ユージ様とキスをしていて……まさにしている最中で…………!?)

 頭では理解できていても、ちゃんと状況を把握できているのか自信がない。ふわふわした感覚が自分の周りを囲っているように感じるユア。

 ユージの唇が離れると、

「はあぁ…………」

 っとユアの口から息が漏れ出た。
 ユージが彼女の顔を撫でながら、少し心配そうな顔をする。

「ごめん……苦しかった?」

「いえっ……苦しくな…………心臓が…ドキドキし過ぎて……幸せすぎるあまり、心臓が苦しかったです……つまり幸せですっ!」

 ユージはホッとした表情を浮かべた。

「そっか……よかった……」

 愛おしそうにユアを見つめるユージ。彼の指が、ユアの唇をなぞるように撫でる。

「ふぁっ……!」

(ふぁっ???)

 初めて発したかもしれない声に冷や汗が出るユア。

 ユージの指がゆっくりと丁寧に唇の上を這っていく。


ゾクゾクゾクゥ……!!


 鳥肌が立つような……ユアの体が……ふぁふぁふぁ……となっている。

「指でなぞられるの……気持ちいい?」

「…………えっ…………?」

(気持ちいい…………?)

 戸惑うユア。

(ど どうなのでしょうか……!? ……変な感覚で……身体中がくすぐったいような……なんだかいけないことをしているかのような………………)

「……気持ちいい……かもしれません…………」

(ひゃーーーーーーーっ!!??)

 口に出した途端、恥ずかしさの波が押し寄せ、すでに真っ赤っかの彼女の顔がさらに熱くなる。

(気持ちいいかもしれません、だなんてっ……! 16になったばかりの私には……あまりそぐわない言葉なのではないかしらっ……!!)

 大混乱のユアをよそに、ユージの愛情はどんどん熱を帯びていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今夜で忘れる。

豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」 そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。 黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。 今はお互いに別の方と婚約しています。 「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」 なろう様でも公開中です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。

音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日…… *体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

完結 歩く岩と言われた少女

音爽(ネソウ)
恋愛
国を護るために尽力してきた少女。 国土全体が清浄化されたことを期に彼女の扱いに変化が……

完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。 しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。 一体どういうことかと彼女は震える……

拗れた恋の行方

音爽(ネソウ)
恋愛
どうしてあの人はワザと絡んで意地悪をするの? 理解できない子爵令嬢のナリレットは幼少期から悩んでいた。 大切にしていた亡き祖母の髪飾りを隠され、ボロボロにされて……。 彼女は次第に恨むようになっていく。 隣に住む男爵家の次男グランはナリレットに焦がれていた。 しかし、素直になれないまま今日もナリレットに意地悪をするのだった。

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

この幻が消えるまで

豆狸
恋愛
「君は自分が周りにどう見られているのかわかっているのかい? 幻に悋気を妬く頭のおかしい公爵令嬢だよ?」 なろう様でも公開中です。

処理中です...