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王都出立編
久しぶりの旅路
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俺とエドワルドは城門を抜けると、外堀にかかる橋を歩いて通過した。
城の敷地を出ると馬車乗り場に向かって足を運んだ。
周りが市街地に入ったところで、エドワルドが声をかけてきた。
「王都外からの出入りが厳しくなったので、人通りが少し減りましたな」
「たしかにそうですね。騒乱の後に市場を覗いた時も似たような状況でした。入るのに時間がかかるからと行商人が王都を避けることで、品薄になる商品も出たと聞きました」
行商人ともなれば大きな耳を持っており、ランス城に暗殺機構の手の者が侵入したことを知っていても不思議ではない。
入場制限と暗殺機構の危険があれば、王都を回避するのは自然な流れだった。
「リリア様の情報で暗殺機構の危機も減りましたので、もう少しの辛抱かと」
「残党もわずかみたいですからね」
「各地のギルドに協力依頼を出したそうなので、いくら暗殺機構の者でも束になった冒険者を相手にするのは苦しいはず」
エドワルドは誠実なだけでなく、先を見通す考えを持っているように感じられた。
暗殺機構が不気味だからと、過度に恐れを抱いているようには見えない。
二人で会話をしながら歩くうちに、前方にいくつか馬車が見えた。
ここが目的の馬車乗り場である。
「着きましたね」
「御者はすでに待機しているはずなので、確認してきます。少々お待ちを」
「お願いします」
エドワルドは足早に馬車の方へ向かった。
近くの椅子に腰かけて待つと、すぐに彼が戻ってきた。
「馬車の準備はできているそうです」
「分かりました」
エドワルドについていくと、二頭の馬がつなげられた一台の馬車が目に入った。
近くに御者の青年が控えており、彼はこちらに気づくと話しかけてきた。
「マルク様、先日はお世話になりました」
「……おっ、往路で一緒だった人だ」
「あの時は街道が封鎖されたので、迂回して王都に向かいました。そちらも無事に王都にたどり着いたと伺って安心しました」
「いえいえ、今回もお願いします」
「はい、かしこまりました」
彼はこちらに笑顔で応じた後、御者台に移動した。
「すぐに出発できますので、よろしければお乗りください」
御者の青年は俺たちにゆっくりと呼びかけた。
メイドのアンもそうだったが、彼も同じように丁寧な物腰だった。
俺とエドワルドは荷台側に回った。
特に順番などないのだが、エドワルドが譲ってくれたので、先に乗らせてもらった。
「御者のピートと顔見知りでしたか」
「バラムから王都に向かう時、途中まで乗せてもらいました」
エドワルドの話から、御者の青年の名前がピートということを知った。
「そうでしたか。乗り合いの馬車と違って、貸し切りの馬車の御者は誰でもなれるわけではないそうな。貴族が乗ることもあるので、礼儀作法も必要と聞きます」
「馬車も立派ですけど、特別待遇で送ってくれるんですね」
「ちなみに馬車の手配はブルーム様がされたそうです。費用は城の方で持ちますのでご安心を」
エドワルドは柔らかな笑みを見せた。
王都からバラムまでを貸し切りの馬車で帰ったら、けっこうな金額になる。
貴族や王族でもない限り、費用は気になるところだ。
もちろん、アデルという例外はあるが。
「それでは、出発します」
御者の青年――ピートが合図をした後、馬車はゆっくりと加速していった。
次第に速度を上げた馬車は王都の中を進むと、高い城壁の下に街道へと続く出入り口が見えてきた。
そこには衛兵が待機しており、馬車のことを気にしているように見えた。
「止まってください」
衛兵に呼びかけられて、ピートは馬車を停止させた。
この状況なので、何か確認が必要なのだろうか。
様子を見守っていると、エドワルドが荷台から顔を出した。
「ああっ、お疲れ様。この方をバラムという町までお送りするところだ」
「おっ、これはエドワルド殿。通って頂いて問題ありません」
「さあ、馬車を進めてもらえるかな」
「はい」
エドワルドが応対したことで、何ごともなく通過できるようだ。
ピートが再び馬車を進めて、城壁の下を通り抜けた。
王都から街道に出ると、整備された幅の広い道が続いていた。
この光景を見るのは久しぶりに感じられた。
城内の生活に不満はなかったが、外に出てこられた解放感がある。
「マルク様、この前よりも一人少ないため、バラムには短めの時間で着きそうです」
「分かりました。店の様子が気になるのでそれはありがたいですけど、無理はしなくても大丈夫ですよ」
「ええ、もちろんです。安全第一で参ります」
ピートは話を終えると、前方に注意を向けるように正面を見据えた。
街道の様子に目を向けると、人通りはまばらな印象を受けた。
最近の情勢が影響しているのか、単に時間帯の影響なのかは分からなかった。
しばらくの間、車内は静かなままだったが、エドワルドが話しかけてきた。
「私は生まれも育ちも王都なのですが、バラムはどんな町ですか?」
「うーん、どうでしょう。王都よりも小さな町で、どちらかというと田舎になると思います。素朴で静かなところは生活しやすいですかね」
「なるほど、興味深い」
普通に答えたつもりだったが、エドワルドが関心を持ってくれたようで少しうれしかった。
城の敷地を出ると馬車乗り場に向かって足を運んだ。
周りが市街地に入ったところで、エドワルドが声をかけてきた。
「王都外からの出入りが厳しくなったので、人通りが少し減りましたな」
「たしかにそうですね。騒乱の後に市場を覗いた時も似たような状況でした。入るのに時間がかかるからと行商人が王都を避けることで、品薄になる商品も出たと聞きました」
行商人ともなれば大きな耳を持っており、ランス城に暗殺機構の手の者が侵入したことを知っていても不思議ではない。
入場制限と暗殺機構の危険があれば、王都を回避するのは自然な流れだった。
「リリア様の情報で暗殺機構の危機も減りましたので、もう少しの辛抱かと」
「残党もわずかみたいですからね」
「各地のギルドに協力依頼を出したそうなので、いくら暗殺機構の者でも束になった冒険者を相手にするのは苦しいはず」
エドワルドは誠実なだけでなく、先を見通す考えを持っているように感じられた。
暗殺機構が不気味だからと、過度に恐れを抱いているようには見えない。
二人で会話をしながら歩くうちに、前方にいくつか馬車が見えた。
ここが目的の馬車乗り場である。
「着きましたね」
「御者はすでに待機しているはずなので、確認してきます。少々お待ちを」
「お願いします」
エドワルドは足早に馬車の方へ向かった。
近くの椅子に腰かけて待つと、すぐに彼が戻ってきた。
「馬車の準備はできているそうです」
「分かりました」
エドワルドについていくと、二頭の馬がつなげられた一台の馬車が目に入った。
近くに御者の青年が控えており、彼はこちらに気づくと話しかけてきた。
「マルク様、先日はお世話になりました」
「……おっ、往路で一緒だった人だ」
「あの時は街道が封鎖されたので、迂回して王都に向かいました。そちらも無事に王都にたどり着いたと伺って安心しました」
「いえいえ、今回もお願いします」
「はい、かしこまりました」
彼はこちらに笑顔で応じた後、御者台に移動した。
「すぐに出発できますので、よろしければお乗りください」
御者の青年は俺たちにゆっくりと呼びかけた。
メイドのアンもそうだったが、彼も同じように丁寧な物腰だった。
俺とエドワルドは荷台側に回った。
特に順番などないのだが、エドワルドが譲ってくれたので、先に乗らせてもらった。
「御者のピートと顔見知りでしたか」
「バラムから王都に向かう時、途中まで乗せてもらいました」
エドワルドの話から、御者の青年の名前がピートということを知った。
「そうでしたか。乗り合いの馬車と違って、貸し切りの馬車の御者は誰でもなれるわけではないそうな。貴族が乗ることもあるので、礼儀作法も必要と聞きます」
「馬車も立派ですけど、特別待遇で送ってくれるんですね」
「ちなみに馬車の手配はブルーム様がされたそうです。費用は城の方で持ちますのでご安心を」
エドワルドは柔らかな笑みを見せた。
王都からバラムまでを貸し切りの馬車で帰ったら、けっこうな金額になる。
貴族や王族でもない限り、費用は気になるところだ。
もちろん、アデルという例外はあるが。
「それでは、出発します」
御者の青年――ピートが合図をした後、馬車はゆっくりと加速していった。
次第に速度を上げた馬車は王都の中を進むと、高い城壁の下に街道へと続く出入り口が見えてきた。
そこには衛兵が待機しており、馬車のことを気にしているように見えた。
「止まってください」
衛兵に呼びかけられて、ピートは馬車を停止させた。
この状況なので、何か確認が必要なのだろうか。
様子を見守っていると、エドワルドが荷台から顔を出した。
「ああっ、お疲れ様。この方をバラムという町までお送りするところだ」
「おっ、これはエドワルド殿。通って頂いて問題ありません」
「さあ、馬車を進めてもらえるかな」
「はい」
エドワルドが応対したことで、何ごともなく通過できるようだ。
ピートが再び馬車を進めて、城壁の下を通り抜けた。
王都から街道に出ると、整備された幅の広い道が続いていた。
この光景を見るのは久しぶりに感じられた。
城内の生活に不満はなかったが、外に出てこられた解放感がある。
「マルク様、この前よりも一人少ないため、バラムには短めの時間で着きそうです」
「分かりました。店の様子が気になるのでそれはありがたいですけど、無理はしなくても大丈夫ですよ」
「ええ、もちろんです。安全第一で参ります」
ピートは話を終えると、前方に注意を向けるように正面を見据えた。
街道の様子に目を向けると、人通りはまばらな印象を受けた。
最近の情勢が影響しているのか、単に時間帯の影響なのかは分からなかった。
しばらくの間、車内は静かなままだったが、エドワルドが話しかけてきた。
「私は生まれも育ちも王都なのですが、バラムはどんな町ですか?」
「うーん、どうでしょう。王都よりも小さな町で、どちらかというと田舎になると思います。素朴で静かなところは生活しやすいですかね」
「なるほど、興味深い」
普通に答えたつもりだったが、エドワルドが関心を持ってくれたようで少しうれしかった。
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