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和の国サクラギとミズキ姫
城下町への帰還
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その後、それぞれに部屋を用意されて一夜を明かした。
俺が泊まったのは小ぎれいな民家で、村に来客があった時に使われるところのようだった。
ミズキは特別待遇のようで、別の宿に泊まったのだと思われる。
俺が身支度を終えると、村人がやってきて朝食を用意してくれた。
それを食べ終えてから、ミズキたちと合流するために村の中を歩いた。
「おはよう」
「おはようございます」
移動の途中でアデルに出会った。
彼女は俺と別のところに泊まったのだ。
「昨日は遅くまで飲んだから、少し寝足りないわ」
彼女はふわっとあくびをした。
そうすることはあまり見ないので、かなり眠そうなことが分かった。
「火山の件は解決したので、ミズキさんに予定を聞こうと思ってるんですけど」
「私もそのつもりだったわ。ハンクは城下町で修繕しているし、どのみち戻らないといけないわね」
「ああっ、完全に忘れてました」
「今回は色々あったから、そうなるのも無理ないわ」
アデルはどこか含みを感じさせる笑みを浮かべた。
村娘たちの件を思い返しているのだろうか。
できれば、昨日のことはハンクには話さないでほしい。
「とりあえず、ミズキさんに会いましょうか」
こうして俺とアデルはミズキの元へ向かうことにした。
城下町の面積に比べれば、そこまで広くはない村の中。
すぐに彼女――おそらくアカネも――が泊まったと思われるところが見つかった。
早速、入ろうとしたところで、玄関からミズキとアカネが出てきた。
「あれっ、おはよう! 迎えに来てくれたの?」
「この後の予定が未定なので、ミズキさんと話そうと思って」
「そうか、予定ねえ。まずはお父さんに成功したことを報告した方がいいからなー。村の人たちにあいさつを済ませたら、来た時と同じように城下町に戻ろうか」
「分かりました」
それから俺たちはオウレンやリンドウなど、村の人たちに声をかけて、サクラギの城下町へ戻ることにした。
ヨツバ村を出るところで、ほとんどの村人が見送ってくれた。
帰りには水牛が必須なため、リンドウの同行で厩舎へと向かう。
彼は口が悪いこともあるが、気のいい若者だと思った。
「ミズキ様、水牛の世話は村の者が行いましたので、元気そのものです」
「うん、ありがとう。火山の件が収まって村長は忙しくなると思うから、支えてあげてね」
「はい、もちろんです」
ミズキの言葉にリンドウは力のこもった眼差しを見せた。
彼自身が村のことを考えていることもあり、きっと父親のオウレンを支えていくのだろう。
「じゃあまた、温泉に入りに来るから。手入れはよろしく頼むよ」
「承知しました。どうかお気をつけて」
リンドウは深く頭を下げて、俺たちを見送った。
ミズキが少し牛車を進めて、街道の近くに来たところで客車に乗りこんだ。
彼女は水牛の状態を確かめたかっただけのようで、帰路もアカネが御者台に座るようだ。
客車の中は清潔感が保たれており、村人が掃除してくれたのだと思った。
今日は穏やか天気なので、問題なければ夕方までには城下町へたどり着くだろう。
火山を攻める時に気をすり減らすような状況だったこともあり、今の自分は気の抜けたような状態になっている。
ヨツバ村から城下町へのルートが平坦なことは幸いだった。
「――というわけで、城下町に戻ってきたよ」
牛車を指定の場所に戻して、町の中に入るとミズキがご機嫌な様子で言った。
移動中に特にアクシデントもなく、夕方前には戻ってくることができた。
「とりあえず、仲間に声をかけていっていいですか?」
「うん、大丈夫。あたしは茶店で冷たいお茶でも飲んでるから」
「ミズキ、私もマルクについていくから、後ほど合流するわ」
「そっか、それじゃあまた後で」
俺たちは二手に分かれて町の中を歩き始めた。
こちらでも地震が起きたようで、一部の外壁や古そうな建物に崩落の痕跡が見られる。
ヨツバ村で被害が目立たなかったのは、耐震性の強い構造だったからなのだろう。
アデルといくらか歩いたところで、崩れた外壁を修繕するハンクの姿があった。
髪の色と服装は違えど、サクラギの人たちに溶けこんでいるように見える。
「今日も精が出ますね」
「おう、マルクとアデルか。地震が収まったってことは上手くやれたか」
「当主の娘のミズキさんが頑張ってくれて、無事に解決しました」
「そうか、それはよかったな」
ハンクは額の汗を拭い、いつもと変わらない笑顔を見せた。
瓦礫を運ぶこともありそうなので、決して負担の軽い仕事ではないと思うのだが、充実した表情に活力をもらうような感じがした。
「アデルも元気そうだな」
「今回は大したことなかったわ。温泉にも入れたし」
「マジか、温泉があったのか……」
ハンクはショックを受けたような反応を見せた。
「行こうと思えば行けますよ。牛車か馬に乘れば遠い距離ではないので」
「そ、そうか」
俺がフォローを入れると、彼は少しホッとしたように息を吐いた。
「そういえば、次の目的はどうしましょう。すぐにバラムに戻らないといけないわけではないので、まだ旅を続けてもいいですけど」
「おれはもう少し修繕を続けたいから、二人は好きなところに行ってこいよ。さすがに帰る時は迎えを頼みたいけどな」
「分かりました。この後にミズキさんと話すので、予定が決まったらまた伝えますね」
「そうだな、それで頼む」
ハンクと話すことができたので、ミズキの待つ茶店へ向かうことにした。
俺が泊まったのは小ぎれいな民家で、村に来客があった時に使われるところのようだった。
ミズキは特別待遇のようで、別の宿に泊まったのだと思われる。
俺が身支度を終えると、村人がやってきて朝食を用意してくれた。
それを食べ終えてから、ミズキたちと合流するために村の中を歩いた。
「おはよう」
「おはようございます」
移動の途中でアデルに出会った。
彼女は俺と別のところに泊まったのだ。
「昨日は遅くまで飲んだから、少し寝足りないわ」
彼女はふわっとあくびをした。
そうすることはあまり見ないので、かなり眠そうなことが分かった。
「火山の件は解決したので、ミズキさんに予定を聞こうと思ってるんですけど」
「私もそのつもりだったわ。ハンクは城下町で修繕しているし、どのみち戻らないといけないわね」
「ああっ、完全に忘れてました」
「今回は色々あったから、そうなるのも無理ないわ」
アデルはどこか含みを感じさせる笑みを浮かべた。
村娘たちの件を思い返しているのだろうか。
できれば、昨日のことはハンクには話さないでほしい。
「とりあえず、ミズキさんに会いましょうか」
こうして俺とアデルはミズキの元へ向かうことにした。
城下町の面積に比べれば、そこまで広くはない村の中。
すぐに彼女――おそらくアカネも――が泊まったと思われるところが見つかった。
早速、入ろうとしたところで、玄関からミズキとアカネが出てきた。
「あれっ、おはよう! 迎えに来てくれたの?」
「この後の予定が未定なので、ミズキさんと話そうと思って」
「そうか、予定ねえ。まずはお父さんに成功したことを報告した方がいいからなー。村の人たちにあいさつを済ませたら、来た時と同じように城下町に戻ろうか」
「分かりました」
それから俺たちはオウレンやリンドウなど、村の人たちに声をかけて、サクラギの城下町へ戻ることにした。
ヨツバ村を出るところで、ほとんどの村人が見送ってくれた。
帰りには水牛が必須なため、リンドウの同行で厩舎へと向かう。
彼は口が悪いこともあるが、気のいい若者だと思った。
「ミズキ様、水牛の世話は村の者が行いましたので、元気そのものです」
「うん、ありがとう。火山の件が収まって村長は忙しくなると思うから、支えてあげてね」
「はい、もちろんです」
ミズキの言葉にリンドウは力のこもった眼差しを見せた。
彼自身が村のことを考えていることもあり、きっと父親のオウレンを支えていくのだろう。
「じゃあまた、温泉に入りに来るから。手入れはよろしく頼むよ」
「承知しました。どうかお気をつけて」
リンドウは深く頭を下げて、俺たちを見送った。
ミズキが少し牛車を進めて、街道の近くに来たところで客車に乗りこんだ。
彼女は水牛の状態を確かめたかっただけのようで、帰路もアカネが御者台に座るようだ。
客車の中は清潔感が保たれており、村人が掃除してくれたのだと思った。
今日は穏やか天気なので、問題なければ夕方までには城下町へたどり着くだろう。
火山を攻める時に気をすり減らすような状況だったこともあり、今の自分は気の抜けたような状態になっている。
ヨツバ村から城下町へのルートが平坦なことは幸いだった。
「――というわけで、城下町に戻ってきたよ」
牛車を指定の場所に戻して、町の中に入るとミズキがご機嫌な様子で言った。
移動中に特にアクシデントもなく、夕方前には戻ってくることができた。
「とりあえず、仲間に声をかけていっていいですか?」
「うん、大丈夫。あたしは茶店で冷たいお茶でも飲んでるから」
「ミズキ、私もマルクについていくから、後ほど合流するわ」
「そっか、それじゃあまた後で」
俺たちは二手に分かれて町の中を歩き始めた。
こちらでも地震が起きたようで、一部の外壁や古そうな建物に崩落の痕跡が見られる。
ヨツバ村で被害が目立たなかったのは、耐震性の強い構造だったからなのだろう。
アデルといくらか歩いたところで、崩れた外壁を修繕するハンクの姿があった。
髪の色と服装は違えど、サクラギの人たちに溶けこんでいるように見える。
「今日も精が出ますね」
「おう、マルクとアデルか。地震が収まったってことは上手くやれたか」
「当主の娘のミズキさんが頑張ってくれて、無事に解決しました」
「そうか、それはよかったな」
ハンクは額の汗を拭い、いつもと変わらない笑顔を見せた。
瓦礫を運ぶこともありそうなので、決して負担の軽い仕事ではないと思うのだが、充実した表情に活力をもらうような感じがした。
「アデルも元気そうだな」
「今回は大したことなかったわ。温泉にも入れたし」
「マジか、温泉があったのか……」
ハンクはショックを受けたような反応を見せた。
「行こうと思えば行けますよ。牛車か馬に乘れば遠い距離ではないので」
「そ、そうか」
俺がフォローを入れると、彼は少しホッとしたように息を吐いた。
「そういえば、次の目的はどうしましょう。すぐにバラムに戻らないといけないわけではないので、まだ旅を続けてもいいですけど」
「おれはもう少し修繕を続けたいから、二人は好きなところに行ってこいよ。さすがに帰る時は迎えを頼みたいけどな」
「分かりました。この後にミズキさんと話すので、予定が決まったらまた伝えますね」
「そうだな、それで頼む」
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