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異世界の南国ヤルマ
新しい力を手に入れる
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もう少しすれば深夜になろうかという時間帯なのだが、道沿いの魔力灯が点灯していて明るさが保たれている。
俺とオルスはマグロ三昧の前を出発して、海岸へと向かっていた。
「さすがにこの時間は誰も歩いてませんね」
「観光客を遅い時間に見かけることはあるが、地元の人間は早い時間に寝る者が多い」
「サービス業以外は農業や漁業を営む人が多いみたいなので、朝早いのもあるんでしょうね」
ヤルマよりも都会と呼べるバラムでは市場に関わる人は早寝早起きだが、それ以外の人は夜更かしをするし、早朝に起きる理由は多くない。
海岸の近くまで来るとヤシガニがゆっくりと歩いているのが見えた。
破壊力のあるハサミを持っているので、無闇に触らない方がいいらしい。
「むっ、ヤシガニか」
オルスも同じ個体に気づいて、独り言のように言葉をこぼした。
「あれ、よく見かけるんですか?」
「夜に海岸を歩いているとよく見かける。見た目はあんなだが、蒸して食べると美味しいぞ」
「興味ありますけど、今はお腹いっぱいです」
俺とオルスはヤシガニを捕まえることなく、波の音が聞こえる方へ歩いた。
砂浜の近くに来たところで、淡い光が広がっていることに気づいた。
「これはもしかして……」
「魔力灯だ。観光客向けに明るくしている」
「なるほど」
そのまま進むと等間隔で魔力灯のついた棒が砂浜に刺さっているのが見えた。
男同士でなければ、それなりにロマンチックに感じられたと思う。
俺たちは砂浜の一角に置かれた丸太の上に腰かけた。
元々は流れついた流木だと思うが、ちょうどいい長さで座りやすい。
「早速だが、これが渡したいものだ」
オルスは作務衣の懐から何かを取り出す。
それは魔力灯に照らされて、キラリと光を反射した。
「……これは腕輪ですか?」
「そうだ。純度の高い銀が素材で、魔力がこめられている」
手に取ってみると、指先に電流のようなものを感じた。
内包する魔力が一定以上であることを察した。
「ある意味魔道具みたいなものですね」
「ふむ、そうとも言える」
オルスに促されて、試しに左腕に装着してみる。
腕の太さより余裕がある大きさに見えたが、つけて少しするとぴったりと吸いつくようになじんでいた。
「ちなみにこの腕輪、外せるんですか?」
あまりに完璧なフィット感だったため、外せなくなるのではと不安を覚えた。
腕を振って確かめたところで、オルスがこちらを向いた。
「それなら問題ない。つけた者が外そうと念じれば、簡単に外せる」
「……なるほど」
俺は頭の中で腕輪を外すことを念じた。
すると、腕に密着していた腕輪が緩くなった。
「おっ、たしかに外れました」
「それをつけると、魔力が増幅される。近隣で危険な目に遭うことは滅多にないだろうが、旅の途中で窮地に陥った時に使うといい」
「ありがとうございます」
俺はオルスに感謝を述べて頭を下げた。
「礼には及ばん」
「ところで、オルスさんとクーデリアさんはもう実戦に出ることはないんですか?」
「ほう、興味深い質問だ。我らが戦いに身を投じることはないだろう。そなたも知っての通り、平和な時代が長く続いている。一部の地域では国同士の小競り合いがあるようだが、それが大規模な戦乱につながる気配はない。それにのどかな生活を手放したくはない」
オルスの言葉からここでの生活を気に入っていることが伝わってきた。
伝承に出てくるような、魔界の軍勢を率いて世界を滅ぼそうとする邪悪な存在などという面影は微塵も感じられない。
「ここはいいですね。星の光と魔力灯でうっすらと明るくて、波の音以外は何も聞こえない」
「……長き旅の末にたどり着いた安住の地だ」
オルスは誰にともなくといったふうに言った。
横目で彼の方を見やると、遠くを見据えるような眼差しで海を見ていた。
俺とオルスはそこでしばらくすごした後、どちらともなく声をかけて帰路についた。
翌朝、俺たちは水牛に乗って、フェルトライン王国に向けて出発した。
民宿を離れる時、リンは別れを惜しんでくれて、クーデリアは再会できることを楽しみにしていると言っていた。
オルスは見送りに来なかったものの、ヤルマに来ることがあれば会える気がした。
フェルトライン王国までは離れており、牛車があっても二日ほどの道のりだった。
途中で街道沿いの宿に泊まりつつ、順調に移動して国境の町を通過した。
中心部からは離れていることもあり、聞いていたほど発展している様子はない。
「今回は長旅でしたね」
俺は外の景色を眺めながら言った。
すれ違う旅人や行商人の外見や身なりから、異国へ来たことを実感する。
「ランスも十分に栄えているのに、さらに発展した国なんて想像もつかないわね」
「レイランドまではもう少しですけど、どんなところか気になります」
カイルの話では工業が発展していて、人口が多いらしい。
彼の話しぶりからして、ランスの王都よりも人口密度が高そうだ。
牛車はそのまま進み続けて、気づけば昼時になっていた。
アカネが通りがかった町で停車させて、昼食を食べに行くことになった。
下車して町を眺めると、国境の町よりも規模が大きくなったことに気づく。
地元のバラムを一回り小さくしたぐらいの広さに見えた。
俺とオルスはマグロ三昧の前を出発して、海岸へと向かっていた。
「さすがにこの時間は誰も歩いてませんね」
「観光客を遅い時間に見かけることはあるが、地元の人間は早い時間に寝る者が多い」
「サービス業以外は農業や漁業を営む人が多いみたいなので、朝早いのもあるんでしょうね」
ヤルマよりも都会と呼べるバラムでは市場に関わる人は早寝早起きだが、それ以外の人は夜更かしをするし、早朝に起きる理由は多くない。
海岸の近くまで来るとヤシガニがゆっくりと歩いているのが見えた。
破壊力のあるハサミを持っているので、無闇に触らない方がいいらしい。
「むっ、ヤシガニか」
オルスも同じ個体に気づいて、独り言のように言葉をこぼした。
「あれ、よく見かけるんですか?」
「夜に海岸を歩いているとよく見かける。見た目はあんなだが、蒸して食べると美味しいぞ」
「興味ありますけど、今はお腹いっぱいです」
俺とオルスはヤシガニを捕まえることなく、波の音が聞こえる方へ歩いた。
砂浜の近くに来たところで、淡い光が広がっていることに気づいた。
「これはもしかして……」
「魔力灯だ。観光客向けに明るくしている」
「なるほど」
そのまま進むと等間隔で魔力灯のついた棒が砂浜に刺さっているのが見えた。
男同士でなければ、それなりにロマンチックに感じられたと思う。
俺たちは砂浜の一角に置かれた丸太の上に腰かけた。
元々は流れついた流木だと思うが、ちょうどいい長さで座りやすい。
「早速だが、これが渡したいものだ」
オルスは作務衣の懐から何かを取り出す。
それは魔力灯に照らされて、キラリと光を反射した。
「……これは腕輪ですか?」
「そうだ。純度の高い銀が素材で、魔力がこめられている」
手に取ってみると、指先に電流のようなものを感じた。
内包する魔力が一定以上であることを察した。
「ある意味魔道具みたいなものですね」
「ふむ、そうとも言える」
オルスに促されて、試しに左腕に装着してみる。
腕の太さより余裕がある大きさに見えたが、つけて少しするとぴったりと吸いつくようになじんでいた。
「ちなみにこの腕輪、外せるんですか?」
あまりに完璧なフィット感だったため、外せなくなるのではと不安を覚えた。
腕を振って確かめたところで、オルスがこちらを向いた。
「それなら問題ない。つけた者が外そうと念じれば、簡単に外せる」
「……なるほど」
俺は頭の中で腕輪を外すことを念じた。
すると、腕に密着していた腕輪が緩くなった。
「おっ、たしかに外れました」
「それをつけると、魔力が増幅される。近隣で危険な目に遭うことは滅多にないだろうが、旅の途中で窮地に陥った時に使うといい」
「ありがとうございます」
俺はオルスに感謝を述べて頭を下げた。
「礼には及ばん」
「ところで、オルスさんとクーデリアさんはもう実戦に出ることはないんですか?」
「ほう、興味深い質問だ。我らが戦いに身を投じることはないだろう。そなたも知っての通り、平和な時代が長く続いている。一部の地域では国同士の小競り合いがあるようだが、それが大規模な戦乱につながる気配はない。それにのどかな生活を手放したくはない」
オルスの言葉からここでの生活を気に入っていることが伝わってきた。
伝承に出てくるような、魔界の軍勢を率いて世界を滅ぼそうとする邪悪な存在などという面影は微塵も感じられない。
「ここはいいですね。星の光と魔力灯でうっすらと明るくて、波の音以外は何も聞こえない」
「……長き旅の末にたどり着いた安住の地だ」
オルスは誰にともなくといったふうに言った。
横目で彼の方を見やると、遠くを見据えるような眼差しで海を見ていた。
俺とオルスはそこでしばらくすごした後、どちらともなく声をかけて帰路についた。
翌朝、俺たちは水牛に乗って、フェルトライン王国に向けて出発した。
民宿を離れる時、リンは別れを惜しんでくれて、クーデリアは再会できることを楽しみにしていると言っていた。
オルスは見送りに来なかったものの、ヤルマに来ることがあれば会える気がした。
フェルトライン王国までは離れており、牛車があっても二日ほどの道のりだった。
途中で街道沿いの宿に泊まりつつ、順調に移動して国境の町を通過した。
中心部からは離れていることもあり、聞いていたほど発展している様子はない。
「今回は長旅でしたね」
俺は外の景色を眺めながら言った。
すれ違う旅人や行商人の外見や身なりから、異国へ来たことを実感する。
「ランスも十分に栄えているのに、さらに発展した国なんて想像もつかないわね」
「レイランドまではもう少しですけど、どんなところか気になります」
カイルの話では工業が発展していて、人口が多いらしい。
彼の話しぶりからして、ランスの王都よりも人口密度が高そうだ。
牛車はそのまま進み続けて、気づけば昼時になっていた。
アカネが通りがかった町で停車させて、昼食を食べに行くことになった。
下車して町を眺めると、国境の町よりも規模が大きくなったことに気づく。
地元のバラムを一回り小さくしたぐらいの広さに見えた。
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