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発展を遂げた国フェルトライン
故郷を思い返すマルク
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俺たちはモリウッド氏との対面を終えてから、レイランドの街にあるカフェに立ち寄った。
ここは大通りから少し離れているため、そこまで混雑していない。
上品な雰囲気のあるカウンター席、それ以外にはテーブル席がいくつか並ぶ。
この店はモリウッド氏が経営する店の一つということで、ギュンターに勧められて足を運んだ。
俺とアデル、ミズキにアカネ。それにギュンターの五人で丸いテーブルを囲むかたちで椅子に腰かけている。
「モリウッドさんからここに案内するように仰せつかってな」
ギュンターは座ったままそう言うと、店のメニュー表をテーブルの上に並べた。
俺はそのうちの一つを手に取り、広げて内容を確かめる。
アイスティーにハーブティーという見かけることの多いものがある中で、一つの商品に目が留まった。
「……おっ、コーヒーがある」
モリウッド氏の娘であるロミーに聞いたところ、コーヒー豆は希少価値があり、それに比例して高価ということだった。
それを示すようにバラムだけでなく、ランス王国周辺でも見かけたことがない。
これまでの情報を反映するように一杯当たりの値段は銀貨三枚。
店自体が上品な雰囲気こともあり全体的に高単価ではあるが、それを差し引いても一杯のコーヒーの値段が突出している。
「あの、コーヒーを頂くことってできます? 他のより割高なんですけど」
「それなら気にするな。モリウッドさんはみみっちいことは言わない。軽食が必要なら頼んでもいいぞ」
「さっき朝食を食べたので、食事は間に合ってます」
ギュンターに断りを入れてから、コーヒーを頼むことに決めた。
「私は決まったわ。ミズキとアカネはどう?」
メニュー表をじっと見ていたアデルが顔を上げて言った。
「あたしはいいんだけど、アカネが迷ってる。サクラギで食べられないものがほとんどだからね」
「功労者なんだから好きなものを頼んだら? たくさん注文してもモリウッドはみみっちいことを言わないらしいわよ」
アデルの言葉を受けて、アカネはギュンターに窺うような視線を向けた。
「もちろんその通りだ。モリウッドさんだけでなくオレも感謝している。遠慮せずに注文してくれ」
「ふむ、では遠慮なく」
アカネが頷いたところで、ギュンターが給仕をしているメイドを呼んだ。
モリウッド氏が雇っていたメイドと同じような服を身につけている。
落ちついた風合いのそれは古風なメイド服のようだ。
「皆さん、お決まりですか?」
俺たちは順番に頼みたいものを注文した。
俺はホットコーヒー、アデルは日替わりケーキと紅茶のセット。
ミズキはフルーツパフェとアイスティー、アカネはハンバーグステーキ、自家製プリン、オレンジジュース――注文内容はこういった具合だった。
アカネは注文を終えた後、ギュンターに「かたじけない」と言った。
しかし、一番高いのはホットコーヒーであることは言い出しにくいと思った。
少ししてテーブルに飲みものが揃ったところで、ギュンターが乾杯の音頭を取るように話し始めた。
ちなみに彼は別口でウイスキーのロックを頼んでいた。
「お前たちのおかげでデックスを捕らえることができた。あいつはモリウッドさんだけでなく、オレたち料理人にとっても厄介な存在だった」
ギュンターはそこまで言い終えたところで、感極まったような間があった。
涙を流しているわけではないが、いかつい顔に複雑な感情の変化が見て取れる。
「……とにかく、これで安心できる、ホントにありがとう」
乾杯とまではいかないが、それぞれにグラスを掲げてから飲み始めた。
俺は早速コーヒーを味わおうとした。
ロミーが飲ませてくれたものとは豆が違うようで、マグカップから香る匂いは同じではなかった。
「うん、どれどれ……」
マグカップの取っ手に手を伸ばして、湯気の浮かぶ黒い液体を口につける。
酸味と苦みのバランスがとれた味わいで、飲みやすい口当たりだと思った。
「コーヒーって美味しいのかしら? 高価だから特別な味がしそうだけれど、見た目がよくなくて飲んだことがないのよね。見かけることも少ないし」
「どうでしょう。味というより風味を味わうといった感じですね」
こちらの返事に納得するように頷いた後、アデルは降り積もった雪のようにクリームの乗ったケーキを食べ始めた。
ミズキとアカネは楽しそうに話しながら、それぞれが注文したものを口に運んでいる。
「お前の故郷……バラムだったか。そこは平和なところなのか?」
隣に座るギュンターがちびりちびりとウイスキーをすすりながらたずねてきた。
「レイランドと比べるつもりはないですけど、デックスのような悪党はいませんし、のんびりして住みやすいところだと思います」
「そうか、いいところだな」
「ええ、そうです」
ギュンターの問いかけをきっかけにして、バラムのことに意識が向いた。
フレヤとシリルたちに店を任せてきたものの、店を離れて久しい。
そろそろ、戻ってもいい頃なのかもしれない。
コーヒーを口に運び、店の雰囲気を味わうように眺める。
俺は自分の店のことを思い返しながら、仲間たちとすごす時間を大切にしたいと思った。
ここは大通りから少し離れているため、そこまで混雑していない。
上品な雰囲気のあるカウンター席、それ以外にはテーブル席がいくつか並ぶ。
この店はモリウッド氏が経営する店の一つということで、ギュンターに勧められて足を運んだ。
俺とアデル、ミズキにアカネ。それにギュンターの五人で丸いテーブルを囲むかたちで椅子に腰かけている。
「モリウッドさんからここに案内するように仰せつかってな」
ギュンターは座ったままそう言うと、店のメニュー表をテーブルの上に並べた。
俺はそのうちの一つを手に取り、広げて内容を確かめる。
アイスティーにハーブティーという見かけることの多いものがある中で、一つの商品に目が留まった。
「……おっ、コーヒーがある」
モリウッド氏の娘であるロミーに聞いたところ、コーヒー豆は希少価値があり、それに比例して高価ということだった。
それを示すようにバラムだけでなく、ランス王国周辺でも見かけたことがない。
これまでの情報を反映するように一杯当たりの値段は銀貨三枚。
店自体が上品な雰囲気こともあり全体的に高単価ではあるが、それを差し引いても一杯のコーヒーの値段が突出している。
「あの、コーヒーを頂くことってできます? 他のより割高なんですけど」
「それなら気にするな。モリウッドさんはみみっちいことは言わない。軽食が必要なら頼んでもいいぞ」
「さっき朝食を食べたので、食事は間に合ってます」
ギュンターに断りを入れてから、コーヒーを頼むことに決めた。
「私は決まったわ。ミズキとアカネはどう?」
メニュー表をじっと見ていたアデルが顔を上げて言った。
「あたしはいいんだけど、アカネが迷ってる。サクラギで食べられないものがほとんどだからね」
「功労者なんだから好きなものを頼んだら? たくさん注文してもモリウッドはみみっちいことを言わないらしいわよ」
アデルの言葉を受けて、アカネはギュンターに窺うような視線を向けた。
「もちろんその通りだ。モリウッドさんだけでなくオレも感謝している。遠慮せずに注文してくれ」
「ふむ、では遠慮なく」
アカネが頷いたところで、ギュンターが給仕をしているメイドを呼んだ。
モリウッド氏が雇っていたメイドと同じような服を身につけている。
落ちついた風合いのそれは古風なメイド服のようだ。
「皆さん、お決まりですか?」
俺たちは順番に頼みたいものを注文した。
俺はホットコーヒー、アデルは日替わりケーキと紅茶のセット。
ミズキはフルーツパフェとアイスティー、アカネはハンバーグステーキ、自家製プリン、オレンジジュース――注文内容はこういった具合だった。
アカネは注文を終えた後、ギュンターに「かたじけない」と言った。
しかし、一番高いのはホットコーヒーであることは言い出しにくいと思った。
少ししてテーブルに飲みものが揃ったところで、ギュンターが乾杯の音頭を取るように話し始めた。
ちなみに彼は別口でウイスキーのロックを頼んでいた。
「お前たちのおかげでデックスを捕らえることができた。あいつはモリウッドさんだけでなく、オレたち料理人にとっても厄介な存在だった」
ギュンターはそこまで言い終えたところで、感極まったような間があった。
涙を流しているわけではないが、いかつい顔に複雑な感情の変化が見て取れる。
「……とにかく、これで安心できる、ホントにありがとう」
乾杯とまではいかないが、それぞれにグラスを掲げてから飲み始めた。
俺は早速コーヒーを味わおうとした。
ロミーが飲ませてくれたものとは豆が違うようで、マグカップから香る匂いは同じではなかった。
「うん、どれどれ……」
マグカップの取っ手に手を伸ばして、湯気の浮かぶ黒い液体を口につける。
酸味と苦みのバランスがとれた味わいで、飲みやすい口当たりだと思った。
「コーヒーって美味しいのかしら? 高価だから特別な味がしそうだけれど、見た目がよくなくて飲んだことがないのよね。見かけることも少ないし」
「どうでしょう。味というより風味を味わうといった感じですね」
こちらの返事に納得するように頷いた後、アデルは降り積もった雪のようにクリームの乗ったケーキを食べ始めた。
ミズキとアカネは楽しそうに話しながら、それぞれが注文したものを口に運んでいる。
「お前の故郷……バラムだったか。そこは平和なところなのか?」
隣に座るギュンターがちびりちびりとウイスキーをすすりながらたずねてきた。
「レイランドと比べるつもりはないですけど、デックスのような悪党はいませんし、のんびりして住みやすいところだと思います」
「そうか、いいところだな」
「ええ、そうです」
ギュンターの問いかけをきっかけにして、バラムのことに意識が向いた。
フレヤとシリルたちに店を任せてきたものの、店を離れて久しい。
そろそろ、戻ってもいい頃なのかもしれない。
コーヒーを口に運び、店の雰囲気を味わうように眺める。
俺は自分の店のことを思い返しながら、仲間たちとすごす時間を大切にしたいと思った。
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