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はじめての異世界 ―ウィリデ探訪編―

エルフの偉い人 その2

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「まあ、カルマンはフォンスを攻める気満々だから。ウィリデとフォンスがつながってなかったら、どうなってたか分かったもんじゃないわ」

 リサは苦々しげな表情を浮かべていた。

「まさか、そんな過激な国だとは知らなかった。そうするとカルマンを通らずに別の地域に行くことはできないのかな。そもそも、カルマンの先はどうなってる?」
「不思議な質問をするのね。その先なんて途方もなく遠いわ」
 
 彼女は呆れるように笑った。
 それを見て少し恥ずかしい気持ちになる。

「行くのはむずかしいのかもしれないけれど、何があるのか知りたいんだ」
「……そんなに知りたいの。その向こうはアルブスという国ね。雪に覆われていることが多い場所だと聞かされているわ」
「ありがとう。ひとまず気は済んだよ」
 
 俺は満足してリサに笑いかけた。
 彼女と話していると気持ちが明るくなるような気がした。

「そう、どういたしまして」

 彼女も朗らかな顔で笑っていた。

 気がつくと市場の喧騒に近づいていた。
 そこまで時間が経っていないので、まだまだ買い物客が多くいる。

「ここまで来れば帰れるでしょ」
「ああっ、大丈夫だと思う」
「大森林は危険が伴う場所だから、ちゃんと準備をしておいてね」
 
 リサはそういって離れていった。
 胸に小さな穴が空くように名残惜しい気持ちになる。

 もう少し話していたい気もしたが、彼女はそれなりに忙しそうに見えた。
 俺は市場を適当に散策してから、宿舎へ戻ることにした。

 行きに通った道を思い返しながら歩き始めた。
 頭の中でリサのことや大森林のことが浮かんだ。

 エルフがわざわざ危険というからには注意が必要なのだろう。
 オオコウモリに苦戦しているようでは力不足なのかもしれない。

 出発までの時間を使ってエルネスに魔術の修練に付き合ってもらおう。
 あとは村川に結果を教えに行ってやろう。きっと喜ぶはずだ。

 宿舎までの距離はそう遠くないので、慣れない道でも帰ることができた。
 何気なく晴れた空を見上げると陽が高くなっていた。

「……あれっ、珍しいな」

 宿舎の前につくと村川の姿があった。
 今日はワイシャツにスラックスといういつもの出で立ちだった。

「ちょっと近くを通りがかってな」
「とりあえず、そこに座るか」

 俺は宿舎に入ってすぐのところにある椅子を指した。
 小ぶりの丸テーブルと一組の椅子が置かれている。

「それで、何か用事があるんだろう?」
「……この前エルフへの交渉を頼んだところだが、こちら側と地球側をつなぐ装置が不安定になっていて、しばらくは目を離せそうにない。もし行くのなら僕は頭数から外しておいてくれ」
「そうか、そんなことが……」
 
 どう返せばいいのか分からなかった。
 自分の中で彼も旅の一員になっていた。

「夏井が開拓してくれるのなら、後からでもどうにかなるだろう。どう考えてるのか分からないが、装置に不具合が起きるようなら戻れなくなる可能性もある。僕にとって最優先すべきことなんだ」
 
 村川は力強い声でいった。
 装置が重要なのは当然のことで説得力がある。

「ちなみにその件は少し前に許可が取れたばかりだ。村川が一緒に行ける方がいいけど、それなら仕方がないな」
「そうだったのか。僕のことは気にせずに行ってくれ」

 村川は用件はそれだけだといって席を立った。
 装置が不安定なら長時間離れるのは好ましくないのだろう。

「あっ、カナタさん、おかえりなさい」

 村川との話が終わったところでミチルが通りかかった。

「ただいま、奇遇だね」
「お昼ごはんは食べましたか? よければお作りしますよ」
 
 彼女はいつもの愛らしい笑顔で微笑んだ。
 思わず和んでしまうような表情だった。

「それじゃあ、お願いしようかな」
「お部屋まで運ぶので待っててください」
 
 ミチルはそそくさとその場を離れた。

 部屋に戻って椅子に腰かけると、どっと疲れが出たような気がした。
 ヨセフの許可を受ける必要があったし、村川が行けなくなるのは予想外だった。
 
「……そうなると、地球人は俺だけになるのか」

 ヨセフはリサが護衛になると話していたが、長旅を男女二人きりにすることはないだろう。それに魔術が得意でないメンバーがいるのなら、魔術が得意な人手がいるはずだ。バランス的に。

 何を準備するのか、魔術の能力は不足していないか。大森林へ向かう上で考えなければいけないことはたくさんあった。
 今日は疲れてしまったので、明日、エルネスに会ってたずねてみよう。

「――失礼します。食事をお持ちしました」
「ありがとう。ここに置いておいて」

 俺はミチルが持ってきてくれたヘルシーなリゾット風の食べ物を口にしながら、整理しきらない情報をまとめていた。
 期待や楽しみも大いにあるが、これまでの野生動物との戦いを振り返ると、それなりに危険が待ち構えている可能性は十分にありそうだ。
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