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はじめての異世界 ―ウィリデ探訪編―

街道沿いの食堂

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 それから数分が経つと、順番に料理が運ばれてきた。
 三人それぞれの前に料理の入った皿、次いでナイフとフォークが置かれた。

「これはなかなか美味しそうだな」
「ふふっ、いい匂い~」
「挽いた肉の煮込み料理ですか、いいですね」  

 皿の上に煮込んだハンバーグ、横にライスというラフな盛りつけだった。
 エルフ二人は米が苦手らしいが、肉の方に関心が注がれている。
 
 今はのんびりするような状況ではなく、さっとナイフとフォークに手を伸ばす。
 まだ湯気が立ち上る熱さなので、一口目を切り分けて冷まし、口へと運んだ。

 歯ごたえのあるひき肉からジューシーな汁がにじみ出た。
 
 ハンバーグそのものは濃厚な味わいで、煮汁はワインのようなものを使っているのかフルーティーな芳しい風味がした。丁寧に煮込まれた味がする。

 リサとエルネスも満足そうな表情をしていた。
 おいしい食事をして少しでも元気が出るのならそれでいいのだと思う。

 ドライに見えるトマスの粋な計らいだった。
 客へのサービスのつもりかもしれないが、俺は親切だと受け止めておいた。
 
 俺たちは手早く食事を済ませて、食堂を後にした。
 外ではトマスが馬車の準備を終えていた。

「おれはもう出れるぜ。さあ、出発しよう」

 彼は御者台に乗りこんで手綱を手にした。
 俺たちも馬車の後ろから荷台に乗った。

 すぐさま馬車は動き出して、ウィリデへの移動が再開された。
 食事を終えてから、エルネスとリサはゆるんだよう顔になっている。

 それから静かな時間のまま、馬車は進み続けた。
 しばらく経った頃、御者台のトマスが話しかけてきた。

「夜はできるだけ大森林を通りたくない。今日は森の手前で夜を明かして、朝になったら出発する。それでいいか?」
「ええ、そうしてください。二人ともそれでよろしいですか?」
 
 俺とリサはエルネスの問いかけに頷いた。
  
 このペースなら丸一日進めば明日のうちにウィリデ側へ行けるだろう。もしむずかしくても、メルディスにとどまればその翌日にはたどり着ける。

 それから夕暮れが近づく頃、遠くに大森林を望む場所で馬車がとまった。
 エルネスはテントの準備をして、トマスは焚き火を用意していた。

 ここは道を少し外れたところで、何もない平らな場所だった。
 周囲には背丈の低い草が生え、それを馬車の馬が思い出したようにかじる。

「そこまで森から離れていないので、交代で見張りをします。トマスは馬車を操らなければいけないので眠ってもらいましょう」

 エルネスの提案で大森林で野営した時のように見張りをすることになった。
 眠る時間になるまでしばらくあったので、今は焚き火の周りにトマスを含めた四人が集まっている。
 
「商売仲間にカルマンが攻めてくるなんて話をしても、誰も信じないだろうな」
 
 トマスはおもむろに口を開いた。

「それが普通の反応でしょう」
「ところで、トマスは信じないのか?」
 
 俺はそれをたずねてみたかった。
 行商人という立場なら客観的な意見を聞けるだろうと考えたから。

「おれか、おれは半信半疑だ。信じる根拠もないが、疑うに足る根拠もない。エルネスがドワーフに聞いたと嘘をつくはずがないから、そのドワーフが嘘つきでなければ本当なんだろう。ただ、行商人の仕事はあくまで商売だ。戦いじゃない。どんな時でも商売が中心になるのは変わりない」

 トマスの話を聞いて、どこか芯が通ったところがあるような印象を受けた。
 そうでなければ、ウィリデとフォンスの行き来という大変な仕事は務まらないのかもしれない。

 しばらく、雑談を続けていたが、眠る時間になった人から離れていった。
 森の只中ではないということもあって、一人で見張りをすることを申し出た。

 夜空には雲が少なく、たくさんの星々が輝いている。
 焚き火と馬車のランプ以外は光源が何もないので、周囲は暗闇に包まれていた。
 
 次の順番のエルネスが起きてくるまで、まだまだ時間がある。
 見張りの夜は始まったばかりだった。
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