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揺れる異世界 ―戦乱のフォンス編―

望まれざる客 その1

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 レギナからコダンまではそう遠い距離とはいえないが、コダンから次の街エスラまでは一日がかりの移動となる。
 クルトたちは途中で野盗を撃退しつつ、街道を歩き続けていた。

 その後、道中に異変はなく、無事にエスラに到着した。
 クルトは野盗たちの追撃を警戒していたが、その気配を感じることはなかった。

 朝から移動を続けて、すでに日は傾き始めていた。
 遥か彼方の空に太陽が少しずつ沈んでいこうとしている。

 クルトの思惑として、もう少し早く到着できればと考えていた。
 しかし、どうやっても多少時間を縮めるのが精一杯だったと彼は理解していた。
 
 正面に町の入口が見えており、大きな篝火が置かれて赤々と炎が上がっている。
 周囲には夕日を映す水田が広がり、少し背の高い木が町を囲うようにいくつか生えていた。

 立ち並ぶ建物はフォンスの地方では主流の平屋がほとんどで、ざっと見た感じではただの農村にしか見えない。
 
 実際のところ、クルトは見回りや客として来たわけではないので、エスラの娼館をその場で目にしたことはなかった。
 そのため、どこに娼館があるかなど、町の作りを知っているわけではない。

 クルトの足取りが重く見えたのか、ヘレナは進むペースを落とした。
 彼の事情を知るシモンもその歩調に合わせている。

 町まであと少しというところで、こちらに駆けてくる人影が目に入った。
 その様子に緊迫したものを感じて、クルトは立ち止まって注視した。

「誰か、助けてくれー!!」

 聞き覚えのあるその声は騎士仲間のアレスのものだった。
 クルトは慎重に周囲へ目を向けた。

 それから、アレスを追う気配に気づいた。
 クルトは鞘から剣を引き抜いて、戦闘態勢に入った。

 その様子を見ていたシモンは鞘に手を置いた。
 ヘレナはやや緊張した様子で前を見据えている。

「アレス! 僕だ、クルトだ」
「ク、クルト!? なぜこんなところに」
「それはこっちのセリフだ。一体何事だ?」
「カ、カルマンの……」

 アレスが言い終わる前に、彼を追跡した人影が近づいていた。
 その気迫に押されて、クルトはわずかな間だけ怯んだ。

 青い色の髪。背が高く筋肉質な身体をしている。
 クルトは見慣れない服装だと思いかけたが、少し前に彼を襲った男が似た雰囲気の格好をしていたことを思い出した。

 もっとも、シルデラのところで絡んできたのはチンピラのような男だったが、クルトの前に立ちはだかっている男は肩当てや鎧などを装備している。
 クルトはそれらの様子から、相手はカルマンの正統な戦士だと判断した。

「……クルト、ちょっとこの場は任せてください」
「んっ? そんなに危険なのか?」
「この距離じゃ魔術も使いづらい、おれが――」

 シモンは怒涛の速さで踏みこんだ。
 彼らが話している隙に男が斬りこむところだった。

 キィーンと剣と剣がぶつかり、金属音が鳴り響いた。
 クルトはヘレナやアレスを急いで後ろに退かせた。

 自らも戦おうとしたが、その他の戦力が読めないことに加えて、シモンの邪魔になりそうだったので、その場に踏みとどまった。
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