96 / 237
揺れる異世界 ―戦乱のフォンス編―
国境の町メルス その2
しおりを挟む
クルトが次の言葉を待っていると、町長はおもむろに口を開いた。
「やはり、そういった話ですか。私の勘はよく当たるんですよ」
「……信じてもらえますか?」
町長は、はにかむような表情だったが、クルトの言葉で神妙な顔つきになった。
彼は町長の言葉を待った。
「それはもちろんです。今すぐ町の皆に声をかけましょう、と言いたいところですが……」
「何か問題でも?」
「騎士様、あなたはずいぶん疲れていますね。その状態では十分な働きもできないというもの。皆には早朝声をかけますから、うちで少し休んでいってください」
クルトは町長の厚意に胸が温かくなるのを感じた。
それに加えて、言われた通り疲れがあるのも事実だと考えた。
「わかりました。それではお言葉に甘えさせていただきます」
「そうですか、それはよかった。ところでお一人でここまで?」
「いえ、町の外に仲間を待たせています」
「なるほど、それではその方たちも呼んでください」
クルトは町の入り口に戻って、シモンたちに声をかけた。
二人は馬の側で彼を待っているところだった。
「シモン、アデリナ。ここの町長と話ができた」
「それはよかったじゃないですか。それで?」
「早朝に町民たちへ声をかけてくれるみたいだから、それまで休んでいけばいいと言ってくれた」
クルト、シモン、アデリナの三人は町長の家に移動した。
それから、早朝まで仮眠を取って身体を休めた。
「おはようございます。少しは休めましたか」
「おかげさまで、だいぶ体力が回復しました」
町長はクルトと話してから、町民たちに事情を説明するといって外出した。
そうたくさんの家はないので、そこまで時間はかからないと言い残した。
クルトたちが町長の家で待っていると、しばらくして町長が戻ってきた。
町長はクルトの元へ歩み寄って口を開いた。
「皆、フォンスの果てにある町なのに、騎士様が気にかけて下さってありがたいと口々に話していました。なかなかこちらまで来られることもないですからね」
「ほとんど見回りに来れてなかったことは申し訳ありません。遠くにあるというのは理由になりません」
クルトは町長に謝罪した。
町長はその言葉を聞いて首を横に振った。
「カルマンが攻めてくるというのは一大事です。レギナの人たちはどうか分かりませんが、ここの者たちはカルマンのことを恐れています。ですから、今回の話も耳に入ってよかったです」
「……そうですか」
クルトは胸を打たれたことで目頭が熱くなっていた。
しかし、周りの誰にも涙は見せずに話を続けた。
「メルスの皆さんは準備が整い次第、ルカレア方面に避難してください。そこから、カセル、エスラ、コダンとレギナ方面へ順番に移動して頂けるとよろしいかと思います」
「昔の戦争でもレギナの壁は越えられなかったらしいですから、レギナまで逃げられたら安全ということですね」
「はい、そうです」
クルトは町長の言葉に頷いた。
それから、町民の準備ができて避難が始まった。
「騎士様、ありがとうございました。私たちはルカレアを目指します」
「いえ、こちらこそ聞き入れていただいてありがとうございました」
「……これからどうなされるおつもりで?」
「カルマンの近くまで向かって、様子を確認に行きます」
「どうか、お気をつけて」
クルトは町長たちを見送ると、シモンたちと馬のところへ移動した。
メルスの入り口前に留められた馬は元気そのものだった。
「これだけ体力があれば、今日一日動けそうです」
「そうか、カルマンに近づくのは危険だが、二人ともよろしく頼む」
クルトたちは馬に乗って、メルスの町を出発した。
「やはり、そういった話ですか。私の勘はよく当たるんですよ」
「……信じてもらえますか?」
町長は、はにかむような表情だったが、クルトの言葉で神妙な顔つきになった。
彼は町長の言葉を待った。
「それはもちろんです。今すぐ町の皆に声をかけましょう、と言いたいところですが……」
「何か問題でも?」
「騎士様、あなたはずいぶん疲れていますね。その状態では十分な働きもできないというもの。皆には早朝声をかけますから、うちで少し休んでいってください」
クルトは町長の厚意に胸が温かくなるのを感じた。
それに加えて、言われた通り疲れがあるのも事実だと考えた。
「わかりました。それではお言葉に甘えさせていただきます」
「そうですか、それはよかった。ところでお一人でここまで?」
「いえ、町の外に仲間を待たせています」
「なるほど、それではその方たちも呼んでください」
クルトは町の入り口に戻って、シモンたちに声をかけた。
二人は馬の側で彼を待っているところだった。
「シモン、アデリナ。ここの町長と話ができた」
「それはよかったじゃないですか。それで?」
「早朝に町民たちへ声をかけてくれるみたいだから、それまで休んでいけばいいと言ってくれた」
クルト、シモン、アデリナの三人は町長の家に移動した。
それから、早朝まで仮眠を取って身体を休めた。
「おはようございます。少しは休めましたか」
「おかげさまで、だいぶ体力が回復しました」
町長はクルトと話してから、町民たちに事情を説明するといって外出した。
そうたくさんの家はないので、そこまで時間はかからないと言い残した。
クルトたちが町長の家で待っていると、しばらくして町長が戻ってきた。
町長はクルトの元へ歩み寄って口を開いた。
「皆、フォンスの果てにある町なのに、騎士様が気にかけて下さってありがたいと口々に話していました。なかなかこちらまで来られることもないですからね」
「ほとんど見回りに来れてなかったことは申し訳ありません。遠くにあるというのは理由になりません」
クルトは町長に謝罪した。
町長はその言葉を聞いて首を横に振った。
「カルマンが攻めてくるというのは一大事です。レギナの人たちはどうか分かりませんが、ここの者たちはカルマンのことを恐れています。ですから、今回の話も耳に入ってよかったです」
「……そうですか」
クルトは胸を打たれたことで目頭が熱くなっていた。
しかし、周りの誰にも涙は見せずに話を続けた。
「メルスの皆さんは準備が整い次第、ルカレア方面に避難してください。そこから、カセル、エスラ、コダンとレギナ方面へ順番に移動して頂けるとよろしいかと思います」
「昔の戦争でもレギナの壁は越えられなかったらしいですから、レギナまで逃げられたら安全ということですね」
「はい、そうです」
クルトは町長の言葉に頷いた。
それから、町民の準備ができて避難が始まった。
「騎士様、ありがとうございました。私たちはルカレアを目指します」
「いえ、こちらこそ聞き入れていただいてありがとうございました」
「……これからどうなされるおつもりで?」
「カルマンの近くまで向かって、様子を確認に行きます」
「どうか、お気をつけて」
クルトは町長たちを見送ると、シモンたちと馬のところへ移動した。
メルスの入り口前に留められた馬は元気そのものだった。
「これだけ体力があれば、今日一日動けそうです」
「そうか、カルマンに近づくのは危険だが、二人ともよろしく頼む」
クルトたちは馬に乗って、メルスの町を出発した。
1
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる