133 / 237
ありふれた異世界 ―エルフに頼まれてドラゴン退治―
戦いが終わったばかりの彼は穏やかに過ごしたい
しおりを挟む
カルマンとの戦いが終わり、今までと同じようにウィリデで過ごす日々だった。
帰ってきてからは静かに過ごせると思っていたが、女子エルフたちの豪邸トークに付き合わされることが多かった。
土地、資材、大工、建築士。
どれも潤沢にあるため、彼女たちのオーダーはことごとく通った。
これで数ヶ月もすれば、ウィリデに似つかわしくない建物が増える予定だ。
全体的に控えめな建物が多く、ここに豪邸って……と思わなくもないが、口出しするつもりはない。
肝心の予算については、フォンスから贈られた戦勝祝いで用立てられるらしい。
きっと、MVP級の彼女たちならかなりの報酬だったに違いない。
一応、俺も受け取りはしたものの、国から出された援軍という立場なので、そこまで高額ではなかった。まあ、金目当てではなかったので問題ない。
それから風のうわさで、クルトがフォンスの王になったと聞いた。
ちなみに、王といっても暫定的なものらしい。
今回の戦乱で、あと少しでカルマンに攻めこまれそうだったことが問題になり、内通者の件を黙認していた先王が失脚した。
その流れで、中心的な活躍を見せたクルトが王に選出されたようだ。
俺は知らなかったことだが、彼の父親がフォンスでは英雄的存在だったことも大きく関係しているらしい。
日本で例えるなら、他国の侵略から国を守った英雄がいたとして、その息子が同じように国を守って、殿様になるよう担ぎ上げられたみたいな感じか。
あれだけしっかりした人柄なら、何ら不自然なことはない。
彼は俺より年下なのに、強い信念と高潔な精神を持っていた。
おそらく、こちらの世界に来ることがなければ、あんな逸材とは死ぬまで出会うことはなかっただろうと思う。
ところで、俺の日常にも多少の変化が起きていた。
上級魔術師になったことで弟子をとれるようになったものの、そこは丁重にお断りして、エルネスの弟子という立場を保持。
エルフの女性、リサのことは気になっているが、しばらく見かけていない。
これに関しては、人間とエルフの交際は上手くいきにくいという悲しい情報を耳にしたので、そこまで期待はしていない。残念だが。
あとは、カルマンとの戦乱で魔術を使いすぎて、マナの許容量が増えすぎてしまい、なかなか本気で魔術を使えなくなったのが最近の悩みだったりする。
師匠のエルネスには気を遣うし、外様という立場なので、あまり活躍しすぎるのも敵を作りそうで抵抗がある。
もちろん、ウィリデにそんなイヤな奴はいない。
仮にエルネスを追い越したところで、彼はこれまで通り接してくれるだろう。
ただ、余計なリスクは取りたくない。
九割方大丈夫だと読んでいるが、豹変されても困る。
きっと、そんなことはないはずだが……。
こんな感じで堂々巡りを繰り返している。
カルマンとの戦いから一ヶ月ほど経ったある日。
俺は行きつけのカフェでハーブティーを飲んでいた。
転移装置にまつわる諸問題は村川が解決済みで、完全にこちらの世界の住人になりつつあった。
ストレスフリーで周りは穏やかで優しい人ばかり。飯が上手くて、空気は綺麗。
おまけに雨は少なく、宿舎にはミチルちゃんというお手伝いさんまでいる。
今の状況にいると、日本で生活するのが馬鹿らしくなってくるので、そろそろアパートを解約しておこうかなと考えたりする。
テラス席の上空には、澄んだ美しい青空。
芳しいお茶と麗らかな一時。
まるで、セレブにでもなったかのような気分だ。
「――ちょっと、失礼」
そんな最高の時間を誰かに遮られた。
「……何か?」
ほんの少しだけ苛立ちを感じながら反応を返した。
視線を向けると、エルフ特有の細長い耳と肩まで伸びた白銀の髪が目に入った。
年齢は人間でいうなら、二十歳前後といったところか。
リサほどではないが、綺麗な見た目をしている。
「カナタ、久しぶりですね」
「あれシモン、その連れは……誰?」
シモンが声をかけてきた女性の付き添いだった。
「私から自己紹介を。ここから遠く離れた地から参りましたカレンといいます」
「えっと、遠く……カルマンよりも向こう?」
「はい、もっと遠くです」
「それで、俺に何か用なんです?」
用件があるなら、早く済ませてくれと思った。
今はくつろぎの時間なのだ。
「実はドラゴンを退治してほしくて、腕の立つ人を探しています」
「……はっ、ドラゴン? ドラゴンって尻尾と羽が生えて、火を吹く」
「はい、そのドラゴンです」
「なんでまた俺に声を?」
質問しながら、シモンが話を勧めたのかもしれないと思った。
「街を歩いていたら、強いマナの反応を感じたので」
「ああっ、なるほど」
「否定はされないのですね」
「い、いや。別に肯定したわけでは……」
カレンは低姿勢なものの、会話の主導権を取られそうだった。
もしかして、苦手なタイプかもしれない。
帰ってきてからは静かに過ごせると思っていたが、女子エルフたちの豪邸トークに付き合わされることが多かった。
土地、資材、大工、建築士。
どれも潤沢にあるため、彼女たちのオーダーはことごとく通った。
これで数ヶ月もすれば、ウィリデに似つかわしくない建物が増える予定だ。
全体的に控えめな建物が多く、ここに豪邸って……と思わなくもないが、口出しするつもりはない。
肝心の予算については、フォンスから贈られた戦勝祝いで用立てられるらしい。
きっと、MVP級の彼女たちならかなりの報酬だったに違いない。
一応、俺も受け取りはしたものの、国から出された援軍という立場なので、そこまで高額ではなかった。まあ、金目当てではなかったので問題ない。
それから風のうわさで、クルトがフォンスの王になったと聞いた。
ちなみに、王といっても暫定的なものらしい。
今回の戦乱で、あと少しでカルマンに攻めこまれそうだったことが問題になり、内通者の件を黙認していた先王が失脚した。
その流れで、中心的な活躍を見せたクルトが王に選出されたようだ。
俺は知らなかったことだが、彼の父親がフォンスでは英雄的存在だったことも大きく関係しているらしい。
日本で例えるなら、他国の侵略から国を守った英雄がいたとして、その息子が同じように国を守って、殿様になるよう担ぎ上げられたみたいな感じか。
あれだけしっかりした人柄なら、何ら不自然なことはない。
彼は俺より年下なのに、強い信念と高潔な精神を持っていた。
おそらく、こちらの世界に来ることがなければ、あんな逸材とは死ぬまで出会うことはなかっただろうと思う。
ところで、俺の日常にも多少の変化が起きていた。
上級魔術師になったことで弟子をとれるようになったものの、そこは丁重にお断りして、エルネスの弟子という立場を保持。
エルフの女性、リサのことは気になっているが、しばらく見かけていない。
これに関しては、人間とエルフの交際は上手くいきにくいという悲しい情報を耳にしたので、そこまで期待はしていない。残念だが。
あとは、カルマンとの戦乱で魔術を使いすぎて、マナの許容量が増えすぎてしまい、なかなか本気で魔術を使えなくなったのが最近の悩みだったりする。
師匠のエルネスには気を遣うし、外様という立場なので、あまり活躍しすぎるのも敵を作りそうで抵抗がある。
もちろん、ウィリデにそんなイヤな奴はいない。
仮にエルネスを追い越したところで、彼はこれまで通り接してくれるだろう。
ただ、余計なリスクは取りたくない。
九割方大丈夫だと読んでいるが、豹変されても困る。
きっと、そんなことはないはずだが……。
こんな感じで堂々巡りを繰り返している。
カルマンとの戦いから一ヶ月ほど経ったある日。
俺は行きつけのカフェでハーブティーを飲んでいた。
転移装置にまつわる諸問題は村川が解決済みで、完全にこちらの世界の住人になりつつあった。
ストレスフリーで周りは穏やかで優しい人ばかり。飯が上手くて、空気は綺麗。
おまけに雨は少なく、宿舎にはミチルちゃんというお手伝いさんまでいる。
今の状況にいると、日本で生活するのが馬鹿らしくなってくるので、そろそろアパートを解約しておこうかなと考えたりする。
テラス席の上空には、澄んだ美しい青空。
芳しいお茶と麗らかな一時。
まるで、セレブにでもなったかのような気分だ。
「――ちょっと、失礼」
そんな最高の時間を誰かに遮られた。
「……何か?」
ほんの少しだけ苛立ちを感じながら反応を返した。
視線を向けると、エルフ特有の細長い耳と肩まで伸びた白銀の髪が目に入った。
年齢は人間でいうなら、二十歳前後といったところか。
リサほどではないが、綺麗な見た目をしている。
「カナタ、久しぶりですね」
「あれシモン、その連れは……誰?」
シモンが声をかけてきた女性の付き添いだった。
「私から自己紹介を。ここから遠く離れた地から参りましたカレンといいます」
「えっと、遠く……カルマンよりも向こう?」
「はい、もっと遠くです」
「それで、俺に何か用なんです?」
用件があるなら、早く済ませてくれと思った。
今はくつろぎの時間なのだ。
「実はドラゴンを退治してほしくて、腕の立つ人を探しています」
「……はっ、ドラゴン? ドラゴンって尻尾と羽が生えて、火を吹く」
「はい、そのドラゴンです」
「なんでまた俺に声を?」
質問しながら、シモンが話を勧めたのかもしれないと思った。
「街を歩いていたら、強いマナの反応を感じたので」
「ああっ、なるほど」
「否定はされないのですね」
「い、いや。別に肯定したわけでは……」
カレンは低姿勢なものの、会話の主導権を取られそうだった。
もしかして、苦手なタイプかもしれない。
1
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる