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ありふれた異世界 ―エルフに頼まれてドラゴン退治―

ドラゴン退治の報酬について

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「カルマンとの戦いが終わったところだし、時間はあるんじゃないですか?」
「そう言われると、そうですけど……」
「同じ流れ者同士、一緒にドラゴン退治に行きましょうよ」  
「流れ者って……あながち間違ってはないか」

 さすらいの身であるシモンと、違う世界からきた自分。
 こちらの世界では見かけない黒い髪の二人。

 彼とすごく仲がいいわけではないが、似通ったところがあることに気づいた。
 
「カナタ様、何か渋る理由がありますか?」
「渋るというよりも、唐突な気がして」
「急すぎるというならば、一日この街で待ちます。お望みの報酬があれば、何なりとおっしゃって下さい」
「うーん、粘るんですね。報酬ってどんな用意があるんですか?」

 そこまで乗り気ではないが、何となく興味が湧いた。

「近隣で採れる鉱山資源、金目の物は一通り。食料が希望でしたら、肉魚果物、できる限りご用意させて頂きます」
「けっこう、何でもあるんですね」
「それから、気に入った街の娘を嫁に取って頂いてかまいません。エルフは純潔を尊びますので、気立てのいい処女がたくさんおります」
「……は、はあっ」

 美人の処女を嫁にもらえて、それが報酬になるなんて時代錯誤感がすごい。
 ただ、カレンの国では当たり前の価値観のようなので蔑視するのは失礼か。
 
「分かりました。報酬はともかく、もう少し詳しい話を聞かせてもらえませんか」
「はい、喜んで」

 カレンは表情の変化が薄めなので、喜んでいるのか見分けるのがむずかしい。
 気心知れるには、もう少し時間がかかりそうだ。


 さて、ようやく聞かされた本題はこうだった。

 ここからものすごーく離れたところに、カレンの住む街がある。
 彼女はエルフだが大森林とは無関係で、その街も森から離れている。

 街の近くで、何百年かに一度、ドラゴンが目覚める時がある。
 その度に、歴戦の勇士が集まって眠りに追いやるのだが、今回に限って戦力が集まっていない。

 街の中で話し合いが持たれた結果、柔軟的に戦力を受け入れることになった。
 その結果、カレンがスカウトの旅に出ることになったというのだ。

 
 彼女の話を聞き終えて、話が壮大すぎる気がした。 
 俺は地球出身のしがない魔術師で、そこまでの武勲があるわけでもない。

「少々、いや、だいぶ荷が重い気がするんですけど」
「大丈夫です。シモンもあなたを推していました」
「えっ、そうなんですか?」

 何となくその可能性はあると感じていた。
 とはいえ、戸惑う部分もある。

「この前の戦いで、そんなに活躍してなかったと思いますけど」
「いやいや、そんなに謙虚にならなくてもいいですよ。おれはちゃんと見てましたから。エルフ以外の魔術師としては、ずいぶんがんばったもんです」
「そこまで評価してもらえてるとは。うーん、ドラゴンか。うーん……」

 カルマンが相手の時は、剣や弓を持った敵と戦うことが想像できた。
 しかし、ドラゴンがターゲットというのは、いまいち想像できない。

「ご心配なく。これから人員を追加するので、大丈夫です」
「わりと自信あるんですね」
「はい、人を見る目はあると思います。それにシモンのように強力な戦士に出会えたので、運も持ち合わせているはずです」

 カレンは澄んだ両目でこちらを見た。
 美しい宝石のような輝きをたたえる瞳だった。

「わかりました。手伝うことにましょう。どのみち、しばらく予定がないので」
「ありがとうございます。後の仲間は今日中に集めてみせます。しばしお待ちを」
「連絡はどうすれば?」
「あなたのマナを把握したので、よほど離れていなければ見つけられます」

 GPSでも取り付けられたような気分だが、そこは触れないでおいた。


 カフェでカレンと別れてから、魔術の練習をしたり、街を散策したりするうちに時間が経っていた。

 改めて、ドラゴン退治とはスケールの大きな話だと思った。
 成長した魔術を試したい気持ちもあるが、未知の部分も多い。

 カルマンよりもずっと遠くに何があるのか気になる気持ちもある。

 俺の性分なのかもしれないが、一度やるといったことを断るのは気が引ける。
 何事もなければカレンに協力すると意思を固めた。
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