150 / 237
こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―
新しい目的地
しおりを挟む
俺とメリルはアルヒ村を出て移動を開始した。
村の周辺は見晴らしのいい平野で、遠くの方まで見渡すことができる。
風魔術を使えば移動時間を短縮できるのだが、奥の手を無闇に教えるわけにもいかず、メリルには話していなかった。
というわけで、ここから徒歩で隣町に向かうことになっている。
「アルヒは小さな農村でしたが、目的地のメソンはもう少し栄えています」
「なるほどね。そういえば、メリルはこの近くの出身なの?」
「……わたしの住んでいた村はモンスターの襲撃を受けて壊滅しました」
――ああっ、まずい。地雷を踏んでしまった。
声のトーンが下がった彼女を見て、触れられたくない話題だと判断した。
「何だか話しづらいことを……ごめん」
「いえ、気にしないでください。いずれ話すことになったかもしれませんから」
メリルはこちらを気遣うように、かすかな微笑みを浮かべた。
「この辺りはまだいい方なんです。支配がひどいところは生きるか死ぬかで、最終手段として抗うしかなくなってしまった地域もあります」
その中に彼女の故郷も含まれるのだと理解した。
この話題は気が重くなりそうなので、ひとまず口を閉じておくことにした。
ところどころ荒れていたり、草が伸びたりした街道を歩きづつけると、先の方に町らしきものが見えてきた。
「あそこがメソンです。中にはモンスターがいるので、できる限り目立たないようにお願いします」
「はい、了解」
途中までは横並びに歩いていたが、町が近くになってからはメリルが先導するかたちで移動していた。
オークを倒したばかりではあるものの、情報が伝わっていれば警戒されている可能性もある。
まずは何事もなく町に入れたらと思うが。
徐々に距離が狭まり、町の入口にたどり着いた。
周囲を低い壁で囲まれており、仕切られた内側が町の区画のようだ。
アルヒ村の民家は質素な外観だったが、この町の民家は少し立派な雰囲気だった。木造であることは共通している。
徒歩で小一時間ほどの距離しか離れていないのに、アルヒとメソンに格差のようなものを感じて不思議に思った。
産業の違いか、あるいは身分の違いなのか。
どんな背景があるかを推し測るには情報が少なすぎた。
「メソンの人たちも強制労働に駆り出されているので、この時間は人通りが少ないですね。女性と子どもしかいないようです」
メリルについて町に入ると、何ともいえない寂しげな空気を感じた。
いくらか通行人がいるものの、ほとんどの人が元気がないように見えた。
「アルヒと同じか、それ以上にヤバい雰囲気だな」
「慣れないかもしれませんが、この周辺はどこも似たような様子です」
メリルは淡々とした口調で言った。
彼女にとっては当たり前でも、俺からすれば気持ちのいいものではなかった。
とりあえず、モンスターが見当たらないのはよかったが、これからどうするつもりなのかメリルに詳しく確認しなければ。
俺が質問するとメリルが説明を始めた。
「ここはオークほど危険なモンスターはいないという情報で、わたしが一人で来る予定でした。しかし、カナタさんが力を貸してくれることになり、二人で到着したというわけです」
そういえば、オーク以外にどんな種類のモンスターがいるのだろう。
RPGの知識は多少あるものの、実際に存在する環境では想像もつかない。
「ちなみに、ここにはどんなモンスターが?」
「以前調べに来た時と変わりなければ、ゴブリンが数体のはずです」
「なるほど、ゴブリンか」
オークに続いてゴブリンとは……まさにゲームの世界に迷いこんだような錯覚を抱かせる組み合わせじゃないか。
現実問題として、二人で複数の敵を処理しなければいけないとなると、作戦を立てるべきなのか検討した方がいいだろう。
「そのうちにゴブリンが戻ってくるだろうから、先に作戦を立てておこう」
「はい、そうですね」
俺たちは、町中の人目がつきにくそうな路地に移動を始めた。
町の出入り口は二ヶ所あるため、そこから離れた場所を選ぶことにした。
少し歩くうちに、ちょうどいい場所が見つかった。
民家の裏手に何本か木が生えており、その間に身を潜めるように腰を下ろした。
「オークの時は楽にいったけど、あまり油断しない方がいい」
「カナタさんは実戦でも物怖じしなかったので、戦いに慣れていますね」
「うーん、そうかな。とにかく、敵の方が多い可能性もあるみたいだから、討ち漏らしたり、反撃にあったりしないようにした方がいい」
この状況では一蓮托生に近いため、多少は手の内を明かすことに決めた。
俺が氷魔術で敵の動きを止めて、動けない敵をメリルが仕留めるというシンプルな作戦にしてもらうように説明した。
「氷の力で敵の動きを止められるなんてすごいですね」
「俺の周りの魔術師なら、そんなに難しいことではないよ」
謙遜でも何でもなく、エルネスや他の魔術師なら十分可能な技法だ。
今回の作戦は大まかな流れが決定した。
ここのモンスターが戻ってくるまで、隠れたまま待機することにした。
村の周辺は見晴らしのいい平野で、遠くの方まで見渡すことができる。
風魔術を使えば移動時間を短縮できるのだが、奥の手を無闇に教えるわけにもいかず、メリルには話していなかった。
というわけで、ここから徒歩で隣町に向かうことになっている。
「アルヒは小さな農村でしたが、目的地のメソンはもう少し栄えています」
「なるほどね。そういえば、メリルはこの近くの出身なの?」
「……わたしの住んでいた村はモンスターの襲撃を受けて壊滅しました」
――ああっ、まずい。地雷を踏んでしまった。
声のトーンが下がった彼女を見て、触れられたくない話題だと判断した。
「何だか話しづらいことを……ごめん」
「いえ、気にしないでください。いずれ話すことになったかもしれませんから」
メリルはこちらを気遣うように、かすかな微笑みを浮かべた。
「この辺りはまだいい方なんです。支配がひどいところは生きるか死ぬかで、最終手段として抗うしかなくなってしまった地域もあります」
その中に彼女の故郷も含まれるのだと理解した。
この話題は気が重くなりそうなので、ひとまず口を閉じておくことにした。
ところどころ荒れていたり、草が伸びたりした街道を歩きづつけると、先の方に町らしきものが見えてきた。
「あそこがメソンです。中にはモンスターがいるので、できる限り目立たないようにお願いします」
「はい、了解」
途中までは横並びに歩いていたが、町が近くになってからはメリルが先導するかたちで移動していた。
オークを倒したばかりではあるものの、情報が伝わっていれば警戒されている可能性もある。
まずは何事もなく町に入れたらと思うが。
徐々に距離が狭まり、町の入口にたどり着いた。
周囲を低い壁で囲まれており、仕切られた内側が町の区画のようだ。
アルヒ村の民家は質素な外観だったが、この町の民家は少し立派な雰囲気だった。木造であることは共通している。
徒歩で小一時間ほどの距離しか離れていないのに、アルヒとメソンに格差のようなものを感じて不思議に思った。
産業の違いか、あるいは身分の違いなのか。
どんな背景があるかを推し測るには情報が少なすぎた。
「メソンの人たちも強制労働に駆り出されているので、この時間は人通りが少ないですね。女性と子どもしかいないようです」
メリルについて町に入ると、何ともいえない寂しげな空気を感じた。
いくらか通行人がいるものの、ほとんどの人が元気がないように見えた。
「アルヒと同じか、それ以上にヤバい雰囲気だな」
「慣れないかもしれませんが、この周辺はどこも似たような様子です」
メリルは淡々とした口調で言った。
彼女にとっては当たり前でも、俺からすれば気持ちのいいものではなかった。
とりあえず、モンスターが見当たらないのはよかったが、これからどうするつもりなのかメリルに詳しく確認しなければ。
俺が質問するとメリルが説明を始めた。
「ここはオークほど危険なモンスターはいないという情報で、わたしが一人で来る予定でした。しかし、カナタさんが力を貸してくれることになり、二人で到着したというわけです」
そういえば、オーク以外にどんな種類のモンスターがいるのだろう。
RPGの知識は多少あるものの、実際に存在する環境では想像もつかない。
「ちなみに、ここにはどんなモンスターが?」
「以前調べに来た時と変わりなければ、ゴブリンが数体のはずです」
「なるほど、ゴブリンか」
オークに続いてゴブリンとは……まさにゲームの世界に迷いこんだような錯覚を抱かせる組み合わせじゃないか。
現実問題として、二人で複数の敵を処理しなければいけないとなると、作戦を立てるべきなのか検討した方がいいだろう。
「そのうちにゴブリンが戻ってくるだろうから、先に作戦を立てておこう」
「はい、そうですね」
俺たちは、町中の人目がつきにくそうな路地に移動を始めた。
町の出入り口は二ヶ所あるため、そこから離れた場所を選ぶことにした。
少し歩くうちに、ちょうどいい場所が見つかった。
民家の裏手に何本か木が生えており、その間に身を潜めるように腰を下ろした。
「オークの時は楽にいったけど、あまり油断しない方がいい」
「カナタさんは実戦でも物怖じしなかったので、戦いに慣れていますね」
「うーん、そうかな。とにかく、敵の方が多い可能性もあるみたいだから、討ち漏らしたり、反撃にあったりしないようにした方がいい」
この状況では一蓮托生に近いため、多少は手の内を明かすことに決めた。
俺が氷魔術で敵の動きを止めて、動けない敵をメリルが仕留めるというシンプルな作戦にしてもらうように説明した。
「氷の力で敵の動きを止められるなんてすごいですね」
「俺の周りの魔術師なら、そんなに難しいことではないよ」
謙遜でも何でもなく、エルネスや他の魔術師なら十分可能な技法だ。
今回の作戦は大まかな流れが決定した。
ここのモンスターが戻ってくるまで、隠れたまま待機することにした。
1
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる