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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

オークの行方

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 メリルとオークが吹き飛んだ方向へ歩き出した。
 先を行く仲間からは離れていて、遠くの方で足音が小さく聞こえるだけだった。
 
「あのオークはまだ生きているでしょうか」
「さあ……手応えはあったけど、致命傷になるほどではなかったかもしれない」

 急ごしらえの一撃だったため、あまり自信はない。
 もしも、オークが反撃に出るのなら迎え撃つつもりだった。

 戦闘中は左手でコントロールしていた火の魔術を右手に戻した。
 そこまで大きな差はないが、利き手の方が明るさの加減をしやすい気がする。

 戦っていた場所から少しずつ進んでいるが、それらしい痕跡が見当たらない。

「そこまで派手に飛んだのか?」
「壁や地面にぶつかった様子もありません」

 メリルは丁寧に周囲を観察してくれている。
 俺が疑問を抱くように、彼女も同じようなことを感じているようだ。
   
「……どうしようか? もう少し引き返してもいいけど、仲間と離れすぎると迷うかもしれない」
「そうですね、危険がないようなら先を急ぎましょう」

 俺たちは撤退する仲間を追うことにした。
 オークの痕跡を見つけられなかったのは後ろ髪を引かれる思いだった。
 
「……あっ、これは! さっきは暗くて気づかなかったのか」
「カナタさん、何かありましたか?」
「ここ、壁にぶつかった後があって、その先に足跡がある」

 移動を再開したところで、削れたばかりの壁を発見した。
 しかし、そこから先には何も残されていなかった。

「予想でしかないけど、もしかしたら魔術を使って移動したかもしれない」
「そうですか。逃げただけならよいのですが……」

 メリルは心配そうな様子だった。

「まずは先の仲間と合流して安全を確かめよう」
「はい、そうしましょう」

 俺たちは移動を再開した。
 それから足早に歩き続けると、前方に灯りの輪郭がぼんやりと見えた。

「おおっ、追手を振り切ったのか!」

 俺たちの足音が聞こえたようで、リュートが振り返った。

「ああっ、どうにか」
「…………」

 メリルが困ったような表情をこちらに向けた。
 オークを倒し損ねたことを伝えるべきか彼女と話し合っていなかった。

「どうした? 何かあったのか?」

 リュートは立ち止まって、俺とメリルを交互に見た。

「追い返すことはできたと思うけど、トドメは刺せなかったみたいなんだ」
「それは仕方ねえって。まずは拠点に戻ってからだ。この通路がばれちまったなら、どのみち数を揃えて攻めてくるだろうよ」 

 この場所では本領発揮といかないだろうが、自信をにじませる言葉だった。
 
「……さあ、行きましょう」

 俺たちの立ち話を遮るようにメリルが言った。

「そうだな、うっかりしてた。まずは拠点に行かねえとな」
「ああっ、先を急ごう」

 三人でそそくさと移動を再開した。

 しばらく移動を続けていると、光の差さない地下通路が明るくなっていた。
 頭上を見上げると天井が高くなっていて、その隙間から光が入りこんでいる。

「よしっ、あと少しだ」

 同じグループの灯りを持った男が明るい声で言った。

「リュート、彼女の剣を新しくしてもらいたいんだけど、拠点に行けば替えはありそうかい?」
「んっ? 剣なら予備が何本かあるから大丈夫だぞ」
「それはよかったです」

 三人で話しながら進むうちに、人の背丈よりも高い頑丈そうな扉が現れた。
 そこには出発前に全体を仕切っていた長髪あご髭の男の姿があった。

「これで最後だな。追手があったと聞いているが、負傷者はいないか?」
「オレたちは無事だぜ。新しい二人に助けられた」
   
 リュートがあご髭の男に言った。

「そうか、中で詳しい話を聞こう。地下通路の存在がバレてしまったのは災難だったが、この扉は簡単にこじ開けられないはずだ」

 男は扉を開いて、中に入るよう促した。
 
 足早に同じグループの面々が扉を通過していった。
 俺とメリルもそれに続いた。

「よしっ、これで最後だな――」

 中に入ってから、後方で男が扉を閉めようとしたその時だった。

「――あらっ、あたくしも入れてちょうだい」

 聞き覚えのある不気味な声が響いた。
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