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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

ダスクへの撤退戦

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 オーウェンを筆頭に戦士たちは拠点を離れようとしていた。
 ここでは勝手が分からないので、彼らの後に続くことにした。

 十数人が列になり、狭い通路を歩いている。
 希望を持っているように見える者、疲弊している者、様々だった。

「エスラではモンスターにやられちまったが、ダスクは陥落してないことを願うばかりだな」
「あそこは優れた戦士がいるのに、この町に応援をよこさなかったじゃないか。行ったところで歓迎されるのか分からないぞ?」

 彼らは口々に手前勝手なことを言っているが、それが聞こえているであろうオーウェンが咎めたりする様子は見られなかった。

「戦力が点在していて、メリルの組織がよく分からないんだけど……」
「なかなか説明する機会がなくてすみませんでした。しばらく歩くみたいなので、移動しながら話しますね」

 薄暗い通路を抜けると、地上につながる階段が目に入った。
 順番に上がって外に出ると、戦士たちが一塊になって立ち止まっていた。

 頭上を見上げると曇天ではあるが、雲の切れ間から陽光が差しこんでいる。
 
「ここまでは追手が来ていないが、森を抜けた辺りから見通しがよくなって監視が容易になる。注意して進んでくれ」

 オーウェンが声を落として指示を出した。

 そして、誰にともなく整列して移動を開始した。

「カナタさん、先ほどの話を続けます」
「……うん、聞かせてほしい」

 メリルはすぐ近くにいるので、控えめな声でも十分聞き取れる。
 それから、彼女は始まりの青について補足をしてくれた。  


「――なるほど、そういう感じなのか」

 メリルから一通り聞き終えると納得がいった。

 すでに何度か説明を聞いていたが、分からなかった部分が補完できた気がする。

 各都市の防衛や奪還に向けて戦力が分散した結果、優勢もしくは劣勢であるかは地域差が生じているということだ。
 それにはモンスターの戦力を組織が読み切れなかったことや戦況の変化が大きく関わっているという。

 メリルの見解では、ダスク地方の戦力がエスラを救援していてもおかしくないはずだが、来ていないということはそれだけの状況にあるのではということだった。

 彼女の言うように、モンスターの危険度にばらつきがあることは実感していた。

 最初の頃にアルヒで対峙したオークは脅威と呼べるものではなかったし、他方でケラスのように驚異的な力を持つ敵もいる。

 ケラスに至っては、全力のエルネスやシモンが戦っても勝てるか分からないほどの強さを感じた。

 
 俺たちは縦一列になった状態で、木々の間を縫うように歩いていた。
 武装した大人が十人以上も歩いているため、落ち葉を踏みつける音がガサガサと周囲に響いている。

 この辺りは監視対象ではないのか分からないが、付近にモンスターの姿は見当たらなかった。

 すぐに戦闘になりそうな気配はないものの、不測の事態に備えて魔術を発動できるように準備をすることにした。

 ――全身を流れるマナに意識を向ける。

 地下通路での戦いは大きな影響はなかった。
 マナの状態に異常はなく、まだまだ戦えるように思えた。

 あの時に威力を抑えざるを得なかったことは結果的によかったかもしれない。
  
 森を抜けて開けた場所に出れば、存分に魔術を使うことができるだろう。

 
 感覚的に数分ほど歩いたところで、森の切れ目が見えてきた。

 オーウェンや先を行く戦士たちが周囲を警戒しながら進んでいく。

「辺りにモンスターはいない。速やかに移動してくれ」

 先頭を行く彼が指示を出すと、戦士たちが足早に動いた。
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