174 / 237
こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―
生き残るための選択
しおりを挟む
「……ふっ、ごほっ」
イアンは町の中心で戦いを続けていた。
ほとんどの兵士が市民の誘導に向かい、近くにいるのは一人の仲間だけだった。
「さすがのイアン隊長でも、この煙には苦戦しますね」
「軽口を叩く余裕があるなら、もっとモンスターを倒せ」
「はいはい、分かってますって」
イアンよりも年少の兵士エレンは軽い調子で言った後、鋭い突きでオークの急所をうがった。引き抜いた槍の先端から赤い血が滴り落ちる。
エレンは藍色の髪と細く引き締まった身体が特徴的な青年だ。
イアンと同じく甲冑に身を包み、戦闘用に武装している。
エレンは少年のような微笑みを浮かべながら、そそくさとイアンに近づいた。
「次から次へときりがないですね」
「包囲がなければどうにかなったかもしれないが、今回は壁が仇になったな」
「仰る通りで」
二人が話していると増援のモンスターが迫ってきた。
彼らはすぐさま臨戦態勢に入り、それぞれ手にした武器を構えた。
「ここまでの規模は初めてだ。一体、どこにこれだけの戦力が隠れていたんだ」
「エスラと組んでれば、こんなことにならなかったんじゃないですかね」
「何を今更。すでにモンスターに支配されているのに、彼らに何ができる?」
「はいはい、愚問でしたね」
モンスターが勢力を拡大してから、ダスクでは何度も話し合いが行われた。
エスラと協力するべきという意見は繰り返し上がったものの、過去に交戦状態になった経緯からダスクの重鎮は手を結ぶことに消極的だった。
そうこうするうちにエスラはモンスターの手に落ち、高い防衛力を誇るダスクは難を逃れることができた。
「――お二人とも、市民の避難が完了しました。さあ、一緒に地下通路へ!」
イアンとエレンがモンスターと応戦していると、一人の兵士が駆け寄ってきた。
「分かった、すぐに向かう」
イアンはこの場にいるモンスターだけでも斬り伏せておこうと考えていた。
彼は深く息を吸いこむと、勢いをつけて前方に踏みこんだ。
流れるような動作で剣を振り、周囲にいたゴブリンやオークが倒れていく。
一時的に付近のモンスターを減らすことができたものの、すぐにどこからかモンスターが集まってきた。この状況では彼の優れた剣技でさえ焼け石に水だった。
「ほら、隊長行きましょうよ」
「ああっ、すぐ行く」
エレンの呼びかけでイアンはその場を後にした。
二人に声をかけた兵士が先を進み、地下通路に向けて駆けていた。
「――うわっ」
兵士は短い悲鳴を上げたかと思うと、そのまま勢いよく吹き飛ばされた。
「大丈夫か!?」
「おっと、ヤバめのモンスター登場ですね」
飄々とした様子のエレンが気を引き締めるように背筋を伸ばした。
二人の前に立ちふさがるように通常よりも一回り大きなオークが立っている。
「我々の邪魔をしようというのか」
「いい度胸ですね。暴れたりないので相手してあげましょう」
二人はそれぞれの武器を手にして、オークに立ち向かっていった。
イアンは町の中心で戦いを続けていた。
ほとんどの兵士が市民の誘導に向かい、近くにいるのは一人の仲間だけだった。
「さすがのイアン隊長でも、この煙には苦戦しますね」
「軽口を叩く余裕があるなら、もっとモンスターを倒せ」
「はいはい、分かってますって」
イアンよりも年少の兵士エレンは軽い調子で言った後、鋭い突きでオークの急所をうがった。引き抜いた槍の先端から赤い血が滴り落ちる。
エレンは藍色の髪と細く引き締まった身体が特徴的な青年だ。
イアンと同じく甲冑に身を包み、戦闘用に武装している。
エレンは少年のような微笑みを浮かべながら、そそくさとイアンに近づいた。
「次から次へときりがないですね」
「包囲がなければどうにかなったかもしれないが、今回は壁が仇になったな」
「仰る通りで」
二人が話していると増援のモンスターが迫ってきた。
彼らはすぐさま臨戦態勢に入り、それぞれ手にした武器を構えた。
「ここまでの規模は初めてだ。一体、どこにこれだけの戦力が隠れていたんだ」
「エスラと組んでれば、こんなことにならなかったんじゃないですかね」
「何を今更。すでにモンスターに支配されているのに、彼らに何ができる?」
「はいはい、愚問でしたね」
モンスターが勢力を拡大してから、ダスクでは何度も話し合いが行われた。
エスラと協力するべきという意見は繰り返し上がったものの、過去に交戦状態になった経緯からダスクの重鎮は手を結ぶことに消極的だった。
そうこうするうちにエスラはモンスターの手に落ち、高い防衛力を誇るダスクは難を逃れることができた。
「――お二人とも、市民の避難が完了しました。さあ、一緒に地下通路へ!」
イアンとエレンがモンスターと応戦していると、一人の兵士が駆け寄ってきた。
「分かった、すぐに向かう」
イアンはこの場にいるモンスターだけでも斬り伏せておこうと考えていた。
彼は深く息を吸いこむと、勢いをつけて前方に踏みこんだ。
流れるような動作で剣を振り、周囲にいたゴブリンやオークが倒れていく。
一時的に付近のモンスターを減らすことができたものの、すぐにどこからかモンスターが集まってきた。この状況では彼の優れた剣技でさえ焼け石に水だった。
「ほら、隊長行きましょうよ」
「ああっ、すぐ行く」
エレンの呼びかけでイアンはその場を後にした。
二人に声をかけた兵士が先を進み、地下通路に向けて駆けていた。
「――うわっ」
兵士は短い悲鳴を上げたかと思うと、そのまま勢いよく吹き飛ばされた。
「大丈夫か!?」
「おっと、ヤバめのモンスター登場ですね」
飄々とした様子のエレンが気を引き締めるように背筋を伸ばした。
二人の前に立ちふさがるように通常よりも一回り大きなオークが立っている。
「我々の邪魔をしようというのか」
「いい度胸ですね。暴れたりないので相手してあげましょう」
二人はそれぞれの武器を手にして、オークに立ち向かっていった。
1
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる