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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

イアンたちの帰還

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 シモンや仲間たちと砦に戻ってから、ケラスの犠牲になった者たちについて報告をした。
 突然の出来事で人々に動揺が走ったが、女王が混乱を抑えてくれた。

 場の空気が落ちついたところで、まずはオーウェンにシモンを紹介した。
 続けてメリルや他の仲間たちにも同じように話をした。

 砦の中には仲間の死を悼む人たちもいたので、いたたまれずに外に出た。
 すると、シモンが続いて出てきた。
  
「いい人が多そうですけど、顔見知りはカナタだけなので」
「この状況かつ初対面では話しにくいよね」

 物悲しい空気の漂う部屋の中では、私語を続けるのは抵抗を覚えるような雰囲気だった。

「このまま戦いに身を投じるつもりだけど、シモンはどうする?」
「もちろん、ついていきますよ。必ず連れて帰ると約束したので、カナタが戦いに行くならおれも一緒に向かいます」
「ありがとう、それは心強い」

 ケラスを倒すほどの力があるのだから、彼の存在感は大きい。 
 人当たりもいいので、すぐに皆と打ち解けられるはずだ。

 
 シモンと話したり、外を歩いたりするうちに時間が経った。
 夕方になろうとする頃、予想外の集団が到着した。

「ダスクの守りは薄くなっていた! 焼失した建物も多いが、我らの町を奪還したぞ!」

 イアンたちが戻ってきて、そのうちの一人が高らかに声を上げた。
 砦の中が騒がしくなり始めた。
 
「まだ一日も経ってないぞ!? そんな簡単に……」
「よくやった! 俺たちの誇りだ!」

 ダスクから逃げ延びた人たちの間で、喜びと動揺が入り混じっているように見えた。

「一度報告をしたい。静かにしてほしい」

 その中で落ち着いた様子のイアンがピシャリと言った。
 市民たちは水を打ったように静かになった。

「ダスクの状況だが、想定していたよりもモンスターの数は少なかった。隊列を維持して町を見回ったが、いとも簡単に奪還することができた」

 前向きな情報のはずなのに、イアンから喜びがほとんど感じられない。
 同行した仲間たちも困惑するような表情を浮かべている。

「あれだけ包囲していたモンスターがいないということはどこかへ移動したことになる。いずれ、戻ってくるかもしれないし、他の町を襲っているかもしれない。どちらにせよ油断はできない」

 彼の言う通りだった。
 エスラもモンスターが少なかったが、手放しで喜べなかった。

「イアン、よろしいか? 私からも話がある」  
「オーウェン、何かあるのなら遠慮はいらない」

 今まで口を挟まなかったオーウェンが立ち上がった。
  
「エスラも同じような状況でもぬけの殻だった。おそらく、モンスターたちはどこかの拠点に戻ったのだろう。まとまっているうちに集中攻撃すべきだと思うが、皆はどう考えている?」

 彼は全体をぐるりと見まわして、全員に問いかけるような動きを見せた。

「改めて作戦が必要になる。一度、時間をおいて、それから話し合おう」
「ああっ、そうしよう」

 二人が意気投合して、一度解散になった。


 それからしばらくして、砦の一角に全ての戦闘員が集められた。
 これまで同じようにオーウェンとイアンがまとめ役として前に立っている。

 エスラとダスクの奪還が叶った今、どんな流れになるのか分からなかった。
 他の仲間たちも同じ気持ちのようで、緊張した空気が漂っている気がした。

「皆の協力で二つの町をモンスターから取り返すことができた」
「我々の目的は達成できたわけだが、手放しで喜べるわけではない」

 まとめ役の二人は神妙な面持ちだった。

「現地に行った者は気づいただろうが、町を監視するモンスターが少なすぎた。考えるまでもなく、どこか別の拠点に移動しているだけだ。二人で意見が合致していて、今後はその拠点を攻めようと考えている」

 オーウェンが全員に向け、よく通る声で言った。
 そして、後を引き継ぐようにイアンが口を開いた。

「これまでの戦いとは比べ物にならない。犠牲も多くなるだろう。それでも、モンスターの中枢を討たねば我々の戦いは終わらない」
「イアンの言うように犠牲は少なくないはずだ。始まりの青の戦士にとって最後の戦いになる。生きて帰ることは約束できない。それぞれで決断してくれ」

 二人の重い言葉に辺りは静まり返っていた。

 いよいよ、この世界の戦いが終わりに近づいている。
 そう実感させられる状況だった。
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