199 / 237
こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―
イアンたちの帰還
しおりを挟む
シモンや仲間たちと砦に戻ってから、ケラスの犠牲になった者たちについて報告をした。
突然の出来事で人々に動揺が走ったが、女王が混乱を抑えてくれた。
場の空気が落ちついたところで、まずはオーウェンにシモンを紹介した。
続けてメリルや他の仲間たちにも同じように話をした。
砦の中には仲間の死を悼む人たちもいたので、いたたまれずに外に出た。
すると、シモンが続いて出てきた。
「いい人が多そうですけど、顔見知りはカナタだけなので」
「この状況かつ初対面では話しにくいよね」
物悲しい空気の漂う部屋の中では、私語を続けるのは抵抗を覚えるような雰囲気だった。
「このまま戦いに身を投じるつもりだけど、シモンはどうする?」
「もちろん、ついていきますよ。必ず連れて帰ると約束したので、カナタが戦いに行くならおれも一緒に向かいます」
「ありがとう、それは心強い」
ケラスを倒すほどの力があるのだから、彼の存在感は大きい。
人当たりもいいので、すぐに皆と打ち解けられるはずだ。
シモンと話したり、外を歩いたりするうちに時間が経った。
夕方になろうとする頃、予想外の集団が到着した。
「ダスクの守りは薄くなっていた! 焼失した建物も多いが、我らの町を奪還したぞ!」
イアンたちが戻ってきて、そのうちの一人が高らかに声を上げた。
砦の中が騒がしくなり始めた。
「まだ一日も経ってないぞ!? そんな簡単に……」
「よくやった! 俺たちの誇りだ!」
ダスクから逃げ延びた人たちの間で、喜びと動揺が入り混じっているように見えた。
「一度報告をしたい。静かにしてほしい」
その中で落ち着いた様子のイアンがピシャリと言った。
市民たちは水を打ったように静かになった。
「ダスクの状況だが、想定していたよりもモンスターの数は少なかった。隊列を維持して町を見回ったが、いとも簡単に奪還することができた」
前向きな情報のはずなのに、イアンから喜びがほとんど感じられない。
同行した仲間たちも困惑するような表情を浮かべている。
「あれだけ包囲していたモンスターがいないということはどこかへ移動したことになる。いずれ、戻ってくるかもしれないし、他の町を襲っているかもしれない。どちらにせよ油断はできない」
彼の言う通りだった。
エスラもモンスターが少なかったが、手放しで喜べなかった。
「イアン、よろしいか? 私からも話がある」
「オーウェン、何かあるのなら遠慮はいらない」
今まで口を挟まなかったオーウェンが立ち上がった。
「エスラも同じような状況でもぬけの殻だった。おそらく、モンスターたちはどこかの拠点に戻ったのだろう。まとまっているうちに集中攻撃すべきだと思うが、皆はどう考えている?」
彼は全体をぐるりと見まわして、全員に問いかけるような動きを見せた。
「改めて作戦が必要になる。一度、時間をおいて、それから話し合おう」
「ああっ、そうしよう」
二人が意気投合して、一度解散になった。
それからしばらくして、砦の一角に全ての戦闘員が集められた。
これまで同じようにオーウェンとイアンがまとめ役として前に立っている。
エスラとダスクの奪還が叶った今、どんな流れになるのか分からなかった。
他の仲間たちも同じ気持ちのようで、緊張した空気が漂っている気がした。
「皆の協力で二つの町をモンスターから取り返すことができた」
「我々の目的は達成できたわけだが、手放しで喜べるわけではない」
まとめ役の二人は神妙な面持ちだった。
「現地に行った者は気づいただろうが、町を監視するモンスターが少なすぎた。考えるまでもなく、どこか別の拠点に移動しているだけだ。二人で意見が合致していて、今後はその拠点を攻めようと考えている」
オーウェンが全員に向け、よく通る声で言った。
そして、後を引き継ぐようにイアンが口を開いた。
「これまでの戦いとは比べ物にならない。犠牲も多くなるだろう。それでも、モンスターの中枢を討たねば我々の戦いは終わらない」
「イアンの言うように犠牲は少なくないはずだ。始まりの青の戦士にとって最後の戦いになる。生きて帰ることは約束できない。それぞれで決断してくれ」
二人の重い言葉に辺りは静まり返っていた。
いよいよ、この世界の戦いが終わりに近づいている。
そう実感させられる状況だった。
突然の出来事で人々に動揺が走ったが、女王が混乱を抑えてくれた。
場の空気が落ちついたところで、まずはオーウェンにシモンを紹介した。
続けてメリルや他の仲間たちにも同じように話をした。
砦の中には仲間の死を悼む人たちもいたので、いたたまれずに外に出た。
すると、シモンが続いて出てきた。
「いい人が多そうですけど、顔見知りはカナタだけなので」
「この状況かつ初対面では話しにくいよね」
物悲しい空気の漂う部屋の中では、私語を続けるのは抵抗を覚えるような雰囲気だった。
「このまま戦いに身を投じるつもりだけど、シモンはどうする?」
「もちろん、ついていきますよ。必ず連れて帰ると約束したので、カナタが戦いに行くならおれも一緒に向かいます」
「ありがとう、それは心強い」
ケラスを倒すほどの力があるのだから、彼の存在感は大きい。
人当たりもいいので、すぐに皆と打ち解けられるはずだ。
シモンと話したり、外を歩いたりするうちに時間が経った。
夕方になろうとする頃、予想外の集団が到着した。
「ダスクの守りは薄くなっていた! 焼失した建物も多いが、我らの町を奪還したぞ!」
イアンたちが戻ってきて、そのうちの一人が高らかに声を上げた。
砦の中が騒がしくなり始めた。
「まだ一日も経ってないぞ!? そんな簡単に……」
「よくやった! 俺たちの誇りだ!」
ダスクから逃げ延びた人たちの間で、喜びと動揺が入り混じっているように見えた。
「一度報告をしたい。静かにしてほしい」
その中で落ち着いた様子のイアンがピシャリと言った。
市民たちは水を打ったように静かになった。
「ダスクの状況だが、想定していたよりもモンスターの数は少なかった。隊列を維持して町を見回ったが、いとも簡単に奪還することができた」
前向きな情報のはずなのに、イアンから喜びがほとんど感じられない。
同行した仲間たちも困惑するような表情を浮かべている。
「あれだけ包囲していたモンスターがいないということはどこかへ移動したことになる。いずれ、戻ってくるかもしれないし、他の町を襲っているかもしれない。どちらにせよ油断はできない」
彼の言う通りだった。
エスラもモンスターが少なかったが、手放しで喜べなかった。
「イアン、よろしいか? 私からも話がある」
「オーウェン、何かあるのなら遠慮はいらない」
今まで口を挟まなかったオーウェンが立ち上がった。
「エスラも同じような状況でもぬけの殻だった。おそらく、モンスターたちはどこかの拠点に戻ったのだろう。まとまっているうちに集中攻撃すべきだと思うが、皆はどう考えている?」
彼は全体をぐるりと見まわして、全員に問いかけるような動きを見せた。
「改めて作戦が必要になる。一度、時間をおいて、それから話し合おう」
「ああっ、そうしよう」
二人が意気投合して、一度解散になった。
それからしばらくして、砦の一角に全ての戦闘員が集められた。
これまで同じようにオーウェンとイアンがまとめ役として前に立っている。
エスラとダスクの奪還が叶った今、どんな流れになるのか分からなかった。
他の仲間たちも同じ気持ちのようで、緊張した空気が漂っている気がした。
「皆の協力で二つの町をモンスターから取り返すことができた」
「我々の目的は達成できたわけだが、手放しで喜べるわけではない」
まとめ役の二人は神妙な面持ちだった。
「現地に行った者は気づいただろうが、町を監視するモンスターが少なすぎた。考えるまでもなく、どこか別の拠点に移動しているだけだ。二人で意見が合致していて、今後はその拠点を攻めようと考えている」
オーウェンが全員に向け、よく通る声で言った。
そして、後を引き継ぐようにイアンが口を開いた。
「これまでの戦いとは比べ物にならない。犠牲も多くなるだろう。それでも、モンスターの中枢を討たねば我々の戦いは終わらない」
「イアンの言うように犠牲は少なくないはずだ。始まりの青の戦士にとって最後の戦いになる。生きて帰ることは約束できない。それぞれで決断してくれ」
二人の重い言葉に辺りは静まり返っていた。
いよいよ、この世界の戦いが終わりに近づいている。
そう実感させられる状況だった。
1
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる