【完結】ルームメイト〜僕と彼の関係〜

天白

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腐男子坂本くんの○○なお話

END

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 ーーーー…




「これって運命なのかな? 君がここの生徒だって知った時は天にも昇る気分だったよ」

「それを一日で調べ上げた貴方を本当に尊敬します……ある意味で」

「ん~。興味あるものには、とことんやり抜くのが僕の信条だからね。まぁ、そのおかげで副会長なんてやらせてもらえてるんだけど」

 のんびりとそう言うのは、僕の隣で昼食用の購買パンをかじるイケメン男子。名前は七海昂也こうや。僕たち以外は誰もいない屋上でランチタイムです。

 初めてこの七海君と出会ってから数日後。寮生活をしている僕のルームメイトが変わりました。いきなりどうしたんだろうと不思議でしたが、新しく入ってきた相手の姿を見て、心臓が飛び出そうになったのは初めての事でした。

 現れたのは、女装をしていた僕に告白をしたイケメン男子。そして、その正体はこの学校の生徒会副会長というオチ。

 不覚でした。この人が生徒会副会長だと気付けなかったのは、髪型が違っていたのと、眼鏡なんてアイテムをしていたからだなんて。そんな言い訳が通用するはずがありません。王道学園生徒会モノスキーの腐男子としては、一生の不覚なのです。

 親衛隊が作られてしまうほどの人気生徒会です。本当にどうして気づけなかったのでしょう。そしてどうして……

 どうして、そんな人が僕なんかに告白なんてしてくるのでしょう。僕はただ、ホモォに囲まれた高校生活を楽しみたかっただけなのに。

 僕の男の子バージョンを目の前にしても、七海君の態度は変わりませんでした。いえ、それどころか。同室になったこともあってでしょうか。僕への愛の告白が進化しました。愛の言葉はもちろん、贈り物まで貰ってしまうようになったのです。試しに、手に入らないだろうブランドのテディベアをおねだりしてみました。それが三日後に届いた時は、七海君のお家柄と財力が心底知りたくなったものです。

 僕は七海君の隣で同じ購買で買ったパンを食べています。ちなみに今日はメロンパンです。甘くてサクサクの、美味しいメロンパンです。百五十円。買ってくれたのは隣の七海君です。

 どうせなら他人にやってくださいです。僕はそれを見てオカズにしますから。

「坂本君さ」

 名前を呼ばれました。顔を向けると、僕の口元についたメロンパンの屑を指で拭ってくれました。

「本屋でホモ、買ってたよね。腐男子ってやつでしょ?」

「だ、だったら、なんですか?」

「ん~。リアルのホモに興味ない?」

 指で拭ったパン屑は当然のように七海君の口元へと運ばれました。乙女ゲームだったら鼻血を吹いているところでしょうが、実際にされるとどうリアクションを取れば良いのか戸惑います。自分の口元を再度、持っていたハンカチで拭いました。

「に、二次元と三次元は別だっていう人もいますけど」

「リアルホモもいけるんでしょ? じゃあ、僕とは?」

 性急過ぎます。僕がそう言われて困ることは、すでに知ってるはずなのに。

「黙っちゃったね。ん~、自分は別ってやつなんだろうね……でもさ」

 ずいっと顔を近づけられ、さらに僕の困る質問をしてくるのです。

「僕と一緒にいて、嫌じゃないでしょ?」

 そう。

 僕はこの七海君と一緒にいて、困らないのです。だって、七海君はイケメンで、とても優しくて、そして決して強引な手段には出ないから。

 困る質問はしてくるけれど、いつだって僕を尊重してくれます。僕の気持ちを考えてくれるのです。告白はしてくるけれど、決して僕に、自分の気持ちを押しつけるだけの一方通行はしないのです。

 こんなに優しい人……正直、僕にはもったいないです。だって僕は、本当は最低だから。人の事を勝手に利用して、カップリングにして、ラブラブさせて……そして自分の萌えのために楽しんでる。人の気持ちなんて考えずに。

 こんな僕の、いったい何に惚れたって言うんでしょう。

「な、七海君は……」

「ん?」

「七海君は……僕といて楽しいですか?」

「楽しいよ」

 即答でした。なぜ、こんなにも早くに答えが返ってくるのでしょう。友人が生徒会長のセフレになる前までは、僕の脳内で会長×副会長を繰り広げたこともあるというのに!

「どうして、楽しいだなんて言えるんですか。僕、基本黙ってるじゃないですか」

「うん。そうだね」

「つまらないじゃないですか」

 そう言うと、七海君は首を横に振って笑いました。それも、とても綺麗な笑顔で。

「全然。むしろ、喋った時はレアだなって普段より楽しんでるくらい。坂本君と一緒にいられることが、すごく楽しいよ」

「そんな……」

「だって惚れた相手と一緒にいるんだよ? 舞い上がらない方が変でしょ」

 僕はゆっくりと俯きました。七海君がまるで太陽みたいに眩しい存在のようで、直視できなくなったからです。

 本当に。どうして僕なんだろう。

 告白されてからこの数日の間。僕は七海君に必要以上の接触を許しませんでした。いいえ。七海君は触れないのです。本当に好きなら、同じ部屋で寝ている自分をどうにかしたいと思うはずです……でぃ、DTの僕が言うのもなんですけど。

 からかわれてるんじゃないかって思ったこともあります。でも、からかうだけで部屋を移り変わるでしょうか?

 生徒会長の性欲と独占欲の強さを知っているからでしょうか。僕の友人はよく腰を押さえています。だから七海君も手の早い部類の人間だと勝手に思いこんでいたのです。ですが、もしかしたら、七海君は奥手も奥手の超奥……

「まぁ、あの若の下にいるからね~。そう思われても仕方ないし。自分で言うのもなんだけど、結構手が早い方だよ。正直、坂本君に手を出したくてたまんない」

 前言撤回です。七海君も会長に負けず劣らずのようです。ほんの少しだけ距離をとりました。

 でも。じゃあ。だったら。

 どうして?

 その渦巻く疑念が、顔に出ていたのでしょうか。

 ポンと、僕の頭に決してなよなよしくはない手の平が乗りました。視線を七海君にやると、彼は僕をあやすように優しく言いました。少しだけ頬を、赤く染め上げながら。

「君、ホモ本抱えて嬉しそうに笑ってたでしょ? あの時の笑顔に、本当にヤられちゃったんだよね。嬉しそうに抱えていた中身がホモ本だって知ってたら、もしかしたら違ってたのかもしれないけれど……でも、君には心の底から惚れちゃったから。だから君が僕を受け入れてくれない限りは、僕からは手を出さない」

 ああ、そうか。

 本当にこの人は、僕を好きでいてくれてるんだと。この時。僕を好きになったという理由を聞けたこの時。ようやくわかったのです。

 この人の気持ちを。

「じゃあ」

「ん?」

「僕達が高校を卒業するまで、我慢……できますか?」

 僕が尋ねると、七海君がきょとんと。彼の周りだけ時が止まったかのように、固まってしまいました。ですが、僕はそのまま尋ねます。

「エッチは十八歳になってからって、決めてるんです。七海君はそれまで、我慢が出来ますか?」

 手が早いという七海君。でも、これだけは譲れません。僕は腐男子ですが、実際の恋愛事に関していえば、貞操概念がとても固いのです。

 もしも、七海君が僕の事をとても想ってくれているのなら。

 それまで。我慢してくれるのでしょうか?

 試すようなことを言っているのはわかっています。でも。でも……!

「あ~エッチの方ね。びっくりした」

 は~っ、と。長い息を吐いた後、七海君はクツクツと可笑しそうに笑い始めました。何か変なことを言ったのだろうかと首を傾げてみせると。

「さすがにキスもハグも十八歳になるまで我慢しろって言われたら自信なかったけど……それなら大丈夫。そういうのは君と両思いじゃないと意味がないって思ってるから」

 安心した、と。七海君は僕に顔を近づけました。そして嬉しそうに笑うのです。

 ビクリと肩を震わせると、七海君が僕を抱きしめました。「良かった」と、小さく呟きながら。

「高校を卒業したら、ね……わかった!」

 そして、チュッと。リップ音を立てながら、僕の耳にキスを落とすと。

「楽しみにしてる」

「ひゃっ」

 耳元で囁いたのです。僕は驚いて、七海君を押しやりながら離れました。

 び、びっくりです。何が、ってわけではないですけど。とてもびっくりしました。

 あ、あれ? 何で? 心臓が……ど、動悸です。心臓がバクバクしています。

 意味もなくですが。心臓がバクバクしているのが、なんだかとても悔しくなったので、胸を抑えながら、嫌みを言ってやりました。

「そ、それまでに、七海君が僕に飽きてたら、意味がないですけどね」

「あ、それはないない。大丈夫。僕、君にぞっこんだから」

 きっぱりと断言をされました。そう言ってられるのも今の内のように思いますが……こんなに好きだと言われて飽きられてしまうのも嫌だと思っている自分がいます。

 矛盾しているんでしょう。でも、本心です。
 だって、僕。七海君のことが、嫌いじゃないんですから。

 も、もちろん。僕は健全な腐男子ですよ? 今の好物だって……

「会長攻めと平凡君受け、でしょ?」

「こ、心の中を読まないでくださいっ!」

「う~ん。若が君の理想の会長攻めかどうかはさておくけど。カップリングだっけ? それをどうやって変えていくかがポイントだな……ま、卒業まで時間あるし。イけるでしょ」

「な、何を?」

「高校を卒業するまでには、副会長攻めと腐男子受け萌えにしてあげるから。覚悟しててね?」



 END.

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