【完結】ルームメイト〜僕と彼の関係〜

天白

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腐男子坂本くんの○○な日

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『逃げるなよ』

『離せっ! 俺はお前のことなんか……あっ』

『憎まれ口を叩いていても、お前のココは上の口と違って素直だぞ?』

『そんなこと……んああっ』

『ほら、こっちも素直になっちまえって……』

『やめっ……あっ、あんっ……』

 はああっ……! やばい……! やばいっ……!

 やば……やばい、やばいよおぉ……!

 そんなに色っぽい低音ボイスをこうも耳元で囁かれちゃったら……あう……も、ほんとに駄目えぇ……!!

「そんなに萌える? そのドラマCD」

「きゃあああっ!?」

 バンッ! と、僕は悲鳴を上げながら、丸テーブルを両手で思い切り叩きつけた。同時に、テーブル上にあるドーナツを乗せたお皿が揺れ、カフェモカの入ったマグカップからふわふわスチームのミルククリームが零れる。

 そんな悲鳴を上げさせた張本人は、ニコニコ笑顔で僕が陣取っていた丸テーブルの向かい側の椅子に腰を下ろしていた。いつの間に座っていたのか。彼の存在に気付かないままBLドラマCDに夢中になっていた僕も僕だったけれど!

「可愛い悲鳴だね。お待たせ、タカちゃん」

「こ、こんにちは……七海君」

 それまで駄弁っていた周りのお姉様方が、今日も今日とてイケメンな七海君に目がちらちらとイっちゃってます。先ほどまでしていた、お互いの彼氏の愚痴り合いはどうしたんでしょう、という突っ込みは野暮というものでしょう。

 わかります、わかりますよ。七海君、あのホモ校内に留まらずカッコいいですもんね。私服姿なんてモデルさんみたいにキまっちゃってますもん。柄シャツをこんなに爽やかに、かつナチュラルに着こなせる人ってなかなかいないですもん。しかも色付きお洒落眼鏡装着で。寝るときだってウニクロの格安スウェットなのに、全然ダサくないんですもん。僕、ルームメイトで良かったあぁ!

 って、そんなこと今はよくて!

 僕が顔を手で覆い、はーっと長い溜息を吐き出す中、七海君は僕の右耳にセットされているワイヤレスイヤホンを取って自分の右耳へと勝手に宛がいました……って、ちょっとちょっと!

「今日のドラマCDは何? えーと……ああ、濡れ場だったんだね。ごめんね、いいところで邪魔しちゃって」

 嫌味でも何でもなく、僕の楽しみを取ってしまって本当に悪かったという顔をされます。いや、いいんです。こっちのことは気にしないでもらって! 濡れ場なんて破廉恥シーンをチェーンのコーヒーショップでカフェモカ片手に堪能しているこちらが悪いんですから!

 僕はアンアンと卑しい水音を響かせているイヤホンのスイッチを切り、七海君に手を差し出しました。

「あれ、切っちゃうの? ちょうど絶頂……」

「き、聞かなくていいんですっ。イヤホン、返してくださいっ」

 捲し立てつつそう言うと、七海君は苦笑しながら僕の差し出す手の上に、嵌めていたイヤホンを置いてくれました。けれど、七海君には気になっていたことがあるらしく……。

「でも僕と同室になってから、なかなか聞けていないでしょ? いいよ。最後まで聞いてて。僕は悶え死ぬタカちゃんで楽しむから」

「悶え死ぬところまで見なくていいですからっ! 僕の腐男子ライフの心配なぞしなくていいんですっ!」

 全く……親切なのか親切でないのかわかりません。BLとは本来、静かにひっそり嗜むものなのです。最近では公共の電波に乗ってBLという単語が出回るような時代になってしまいましたが、否! 否!! 僕は全国の腐男子を代表して言いたい!! ボーイズラブは決して公に広まるものではない! 否! ボーイズラブとは第三者視点であるがゆえにあれやこれやと妄想することが極み!! そして尊ぶもの!!

 結論! ボーイズラブは密やかに愛せ!! 異論は認めない!!

 ……おおっと。僕としたことが、つい熱くなってしまいましたね。つまり、何が言いたいのかと言うとです。

 僕はただ静かに萌えたいだけなんです。完璧なBL妄想ライフを望んでいただけなのに……いつの間にやらどうしてこうなった。
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