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番外編【お正月編】
後編
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「……う。……柳」
「ん……む? かい、さん?」
あれ?
あれあれ?
いつのまにか海さんが僕の上にいた。というか、僕が海さんの下で寝ていたみたいだった。
それどころか、僕はなぜか寝室のベッドの上にいた。枕の上に頭があるから、僕はやっぱり寝ていたみたいだった。
あれ? 確か僕って、リビングで甘酒を待っていたんじゃなかったっけ? あれ? なんでここにいるの?
わけがわからずキョロキョロと辺りを見渡していると、ベッドの下になぜか散乱している僕のジャージがあった。そうそう。初日の出を見ようと思って、入浴後はジャージに着替えていたんだけど……って、あ!!
「日の出!!」
「もう昼ですが」
「え!!?」
ひ、昼!? 何時のお昼!?
というか、え!? 昼なの!? 朝ごはんは!? 朝ごはん食べてないよっ!
ベッドサイドにある目覚まし時計に視線をやると、時刻はきっかりと1時を指していた。
1時!? え、1時なの!? こんなにお寝坊さんしたことないっ……え!? 1時な……
「それよりも柳。お前……」
「うわあぁぁ!? はい!」
「どうしたんですか。そんなに絶望的な顔をして」
「だ、だって僕っ……1時っ……1時なんてっ……こんなお寝坊さんしたことなくてっ……! そ、それにっ……海さんの朝ごはんも作ってないっ、からっ……」
「ああ。そんなことですか。それは気にしないでください。私も起きたのは遅かったので」
「で、でもっ……」
「そんなことよりも」
ぐっ、と。
海さんが僕の頬に手を宛がい、じっと顔を覗き込んだ。真昼のせいか、鮮やかな赤い髪の色がはっきりと視界に入りこんだ。
いつになく、真剣な顔で僕を見つめ、そして同時に心配そうに声をかける。
「具合はどうですか? 吐き気や頭痛は?」
「え? え……?」
吐き気? 頭痛?
僕、風邪でも引いてたっけ? う~ん。いや、考えても、気持ちは悪くないし、頭も痛くはない。
それでも海さんが心配するから、正直に「ないよ」と答えると、今度は気分がどうかと尋ねられた。
「気分……も、悪くない、かな。あ、でも……」
「でも?」
「なんだか体がすっきりした感じがする。なんか……軽い感じ!」
「軽い? ……ああ……クッ」
え? なんか、笑われたんだけど。僕、おかしなこと言ったかな?
何で? と、首を傾げてみても、海さんは口元を抑えて小さく笑っている。理由はわからないけど、僕はとてもおかしなことを言ったらしい。
ますますわけがわからない。
「海さん」
「身体が軽くなったのなら……それは良かったです。夫としてそれなりに妻の役に立てたようなので」
「?」
「さて。お前も大丈夫なようですし、昼食にしましょう。昨夜、魅色が作った甘酒があります。餅も買いこんでいましたね。雑煮を作りましょうか」
「甘酒! うん! 飲む! お雑煮も作る!」
甘酒とお雑煮! お正月といえばやっぱりこれだよね! おせちも作ったんだし、それも食べなくちゃ。正月太りがなんぼのもんじゃい!
「初日の出は残念でしたが、また来年。一緒に見ましょう。今度は邪魔もなく。二人きりで」
「? うん!」
「着替えてからリビングに来なさい。真城氏と魅色はまだ寝ているでしょうが」
「わかった。すぐ行くね」
先に出ていく海さんを見送ると、僕は何も身に纏っていないことに気づく。あれ? なんですっぽんぽんなの?
そういや、なんで僕、ここで寝てたんだろ? 寝る前ってリビングいたはずだよね?
うう~ん。いったい、何が……。
考えても考えても思い出せない昨夜から今までの出来事。
とりあえず、服を着ようか。
箪笥の中にセーターとジーンズがあるからそれを着て……
「え?」
クローゼットのある方へと向かう途中、等身サイズの鏡に僕の全身が映る。まぁ、すっぽんぽんの僕が映るわけだけど、僕は自分の体を見てものすごくびっくりした。
だって僕の体、全身に……
「海さん、大変だよ! 今すぐ布団干さなきゃ! 僕、ダニにいっぱい刺されちゃってるよ!」
END?
次のページからは【お正月編 海side】になります。
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